エンレイソウ | Trillium smallii Maximowicz | ||
山地の植物 | ユリ科 エンレイソウ属 |
Fig.1 (兵庫県篠山市・林縁 2008.3/25) |
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Fig.2 (兵庫県篠山市・林縁 2013.4/9) 山地林内の林床のやや湿った場所に生える多年草。 茎は高さ20〜40cmで、頂端に葉を3輪生してつけ、花柄のある花被を単生する。 葉は卵状ひし形で長さ、幅ともに6〜17cm、先は急に短くとがり、基部は広いくさび形。 花はやや横向きにつき、花柄は長さ2〜4cmで茎よりも細い。 外花被片は緑色、または紫褐色、卵状長楕円形で長さ12〜20mm、花後も残る。内花被片は欠くが、稀に生じるものもある。 雄蕊は6個、葯は長楕円形で花糸よりもやや短い。柱等は3岐し、ごく短い。 液果は3稜ある球形で、径1〜2cm、緑色〜黒紫色。種子は湾曲した長楕円形。 ■分布:北海道、本州、四国、九州 ・ 樺太、南千島 ■生育環境:西日本では山地の林縁や林床で見られる。 ■花期:4〜5月 |
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↑Fig.3 葉身。(兵庫県篠山市・林縁 2008.4/13) 葉は卵状ひし形、先は急に短くとがり、基部は広いくさび形。 表面には光沢があり、網状脈が目立つ。 |
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↑Fig.4 出芽と同時に開花が始まる。(兵庫県篠山市・林縁 2011.3/29) 早春、出芽当初は3個の葉は閉じて上がってくる(左の2個体)。 やがて展葉し始めると、早くも花被が開き始め、開花が始まる(右個体)。 |
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↑Fig.5 花被。(兵庫県篠山市・林縁 2008.3/29) 春、地上に茎と葉が現われると同時に蕾も上がり、すぐに開花し、葉が伸びきるころには花期は終わっていることが多い。 ふつう内花被片はなく、外花被片が3個離生してつく。外花被片の大きさや色などは変化が多い。 雄蕊は6個。葯は長楕円形で紫色を帯び、花軸側に向かって裂け、花粉を放出する。 雌蕊柱等は3岐して外曲する。 |
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↑Fig.6 果実を形成中のエンレイソウ。(兵庫県篠山市・林縁 2008.5/16) 花後、花茎はしっかりとし、子房は球状に膨らみ、内部に種子を持った液果となる。 結実までには開花後3ヶ月程度かかる。外花被片は果実が形成されても宿存する。 |
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↑Fig.7 エンレイソウの若い株。(兵庫県篠山市・林縁 2008.5/16) 最初の1〜2年は単葉で、3輪生する葉を出すまで3〜4年かかる。 |
生育環境と生態 |
Fig.8 スギ植林地の縁の斜面で群生するエンレイソウ。(兵庫県篠山市・林縁 2008.4/13) 北向きの斜面で土壌は湿っており、周辺にはセツブンソウ、キクザキイチゲ、イカリソウ、ヤブカンゾウ、ハナウドなどが混生する。 付近は塩基性基岩からなり、斜面は破砕された堆積岩の砂礫を多く含む。 そのため、スギの植林から免れており、エンレイソウは近辺ではここだけに見られる。 成株の周りには沢山の子株が見られ、生育状況は良いようである。 |
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Fig.9 社寺裏手の急斜面で群生するエンレイソウ。(兵庫県篠山市・林縁斜面 2011.5/6) シカの食害の多い地区であるが、社寺本堂裏の見通しの良い急斜面であるため、シカが立ち入れず食害のない本来の植生が見られた。 斜面は多湿で、チャルメルソウが優占し、セリバオウレン、ミヤマカタバミ、ニシノホンモンジスゲ、ミヤマカンスゲ、ヌカボシソウ、 ショウジョウバカマが多く、エンレイソウもかなりの個体数が見られた。 他にもトキワイカリソウ、イヌシダ、イヌワラビ、タニギキョウ、ネコノメソウ、オオバタネツケバナなど多様な植生が見られた。 |
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Fig.10 植林地の林床で生育するエンレイソウ。(兵庫県香美町・植林地の林床 2011.5/26) 兵庫県北部の高原地帯の林床ではエイレンソウはふつうに見られる。 林床はかなり湿っており、オシダ、ユキザサ、ニリンソウ、ミヤマカタバミ、ヒカゲミツバ、サンカヨウ、モミジガサなどとともに生育している。 |