イナモリソウ | Pseudopyxis depressa Miq. | ||
山地・林縁・林床の植物 | アカネ科 イナモリソウ属 |
Fig.1 (兵庫県但馬地方・林縁斜面 2015.6/13) 山地の林縁斜面や林床に生育する多年草。 根茎は細く伸び、先は地上に直立する短い地上茎となる。茎は高さ3〜5cmで、全体に曲がった短毛が生える。 葉は長さ3〜6cm、幅2〜4cm、卵形または3角状卵形で先はとがり、基部は円形またはやや心形、両面に短軟毛を散生、葉柄は3〜10mm。 托葉は小さな3角形で鋭頭。花は紅紫色〜白色、葉腋に単生するか、枝先に1〜2個つく。 萼は鐘形で、剛毛がやや密に生え、5〜8中裂し、裂片は広披針形で鋭尖頭。花冠は長さ2.5cm、内面に短毛が散生する。 雄蕊は5〜6個で花筒上部につき、花糸は短い。刮ハは丸味のある倒3角形で、長さ3m、幅6mm、広3角形の尖った萼裂片がつく。 品種ホシザキイナモリソウ(f. angustiloba)は花冠が6〜7中裂し、花冠裂片の幅が狭く縁が内側にまくれるもの。 シロバナイナモリソウ(P. heterophylla )は高さ15cmを超え、茎に2条の白色毛列があり、刮ハはやや下に曲がった果柄につく。 近縁種 : ホシザキイナモリソウ、シロバナイナモリソウ ■分布:本州(関東地方以西)、四国、九州 ■生育環境:山地の林縁斜面や林床など。 ■花期:5〜6月 |
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↑Fig.2 茎。(兵庫県但馬地方・林床 2015.6/13) 茎には全体に上向きに曲がった毛が生えている。 |
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↑Fig.3 葉。(兵庫県但馬地方・林縁斜面 2015.4/30) 上部2対の葉は接近してつき、4枚の葉が輪生しているように見える。葉柄は3〜10mm。 葉身は長さ3〜6cm、幅2〜4cm、卵形または3角状卵形で先はとがり、基部は円形またはやや心形。 |
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↑Fig.4 葉は両面ともに短軟毛を散生する。(兵庫県但馬地方・林床 2015.6/13) |
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↑Fig.5 開花したイナモリソウ。(兵庫県但馬地方・林縁斜面 2015.6/13) 花は初夏に開花し、紅紫色〜白色、葉腋に単生するか、枝先に1〜2個つく。 |
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↑Fig.6 花冠と萼。(兵庫県但馬地方・林縁斜面 2015.6/13) 花冠は筒状漏斗形で筒部が長く、先は5〜6裂する。 萼は鐘形で、剛毛がやや密に生え、裂片は広披針形で鋭尖頭、5〜8中裂し、必ずしも花冠裂片の数とは対応しない。 |
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↑Fig.7 花冠筒部内面には短毛が散生する。(兵庫県但馬地方・林縁斜面 2015.6/13) |
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↑Fig.8 花の中心部。(兵庫県但馬地方・林縁斜面 2015.6/13) 雄蕊は花筒部に5〜6個付着するが、あまり見えない。花柱は5裂するが白色で背景に混じり解りづらい。 |
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↑Fig.9 花冠は6裂するものもふつうに見られる。(兵庫県但馬地方・林縁斜面 2015.6/13) 画像のように向陽地に生育するものは花冠色が濃くなり、花冠裂片の縁は内側に曲がる傾向が強いようである・ |
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↑Fig.10 刮ハ。(兵庫県但馬地方・林縁斜面 2015.8/2) 刮ハは横から見ると丸味のある倒3角形で、縁に星状に開いた萼裂片が宿存し、蓋状に上部が裂けて少数の種子を出す。 右側が熟して蓋状に裂けた刮ハで、中に数個の種子が見える。 |
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↑Fig.11 種子。(兵庫県但馬地方・林縁斜面 2015.8/2) 種子は淡褐色〜汚褐色、広倒卵形で長さ1.6〜2mm、縦じわが顕著である。 |
生育環境と生態 |
Fig.12 林縁斜面に生育するイナモリソウ。(兵庫県但馬地方・林縁斜面 2015.6/13) 谷沿いのメランジェ中に含まれる頁岩質の堆積岩が細かく破砕された林縁の斜面にイナモリソウが点在していた。 同所的にサンインスミレサイシン、ナガバノタチツボスミレ、ヤマミズ、ミヤマイラクサ、ミスミソウ、ジュウニヒトエ、ニシキゴロモ、 オウギカズラ、キランソウ、ヤマトウバナ、ホクリクイヌワラビ、ナンゴクナライシダ、トウゴクシダなどが生育していた。 |
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Fig.13 オウギカズラと混生するイナモリソウ。(兵庫県但馬地方・林縁斜面 2015.6/13) イナモリソウは日向から日陰まで様々な光条件の場所で生育するが、日陰ではオウギカズラと混生する場所も多かった。 ここでは向陽地では濃い色の花をつける個体が多く見られ、日陰では色の薄い花をつけるものが多かった。 |