イヌクグ (クグ) | Cyperus cyperoides (L.) Kuntze | ||
海岸・草地の植物 | カヤツリグサ科 カヤツリグサ属 イヌクグ亜属 |
Fig.1 (西宮市・海岸近くの植え込み芝地 2010.7/7) 海岸近くの草地に生育する多年草。 有花茎は直立し高さ20〜70cm。基部の鞘は塊茎状、赤褐色。葉は線形、幅3〜6mm、有花茎よりも短い。 花序は5〜15個の花穂からなり、花穂は柄があり、柄の長さには長短がある。苞葉の葉身は葉状で、4〜5個が花序よりも長い。 花穂は長さ2〜3cm、幅6〜10mmの円柱形をなし、全体緑色、後に熟すと茶褐色となり、小穂を落果する。 小穂は花軸に開出してつき、線形、鋭頭、長さ4〜5mm、幅0.5〜0.7mm、1〜2個の両性小花、苞葉、前葉からなる。 両性小花は1個の鱗片に包まれ、熟すと苞葉と前葉を残して、小穂の基部から脱落する。 鱗片は長さ約mm、長楕円形で内巻きしている。痩果は長さ約2mm、狭楕円形。 花柱の長さは痩果の半分以下。柱頭は3岐し、長さ1〜1.5mm。 近縁種 : アレチクグ、ユメノシマガヤツリ、コガネガヤツリ ■分布:本州(関東以西の太平洋岸)、四国、九州、沖縄 ・ 朝鮮南部、中国、インドネシア、インド、アフリカ ■生育環境:海岸寄りの草地。暖帯〜亜熱帯域。 ■果実期:8〜10月 |
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↑Fig.2 花序。(西宮市・海岸近くの植え込み芝地 2010.7/7) 花序の苞葉は4〜5個が花序よりも長い。花序は5〜15個の柄のある花穂が放射状につく。 小穂が密生する花穂は円柱状で、試験管ブラシのように見える。 |
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↑Fig.3 早い時期の花序。(西宮市・公園の草地 2008.6/27) 早い時期に出てくる花序は画像のように花序枝があまり明瞭ではなく、花穂がやや頭状につまってつく。 |
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↑Fig.4 花穂。(西宮市・海岸近くの植え込み芝地 2010.7/7) 花穂には非常に多数の小穂が放射状に開出してつく。 |
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↑Fig.5 小穂。(西宮市・海岸近くの植え込み芝地 2010.7/7) 小穂は線形、鋭頭、長さ4〜5mm、1〜2個の両性小花がある。画像には2個の両性小花が見える。 |
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↑Fig.6 痩果は3稜状狭楕円形。(西宮市・海岸近くの植え込み芝地 2010.7/7) |
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↑Fig.7 熟して落果しはじめた花序。(明石市・民家の土手 2008.8/31) 小穂の小花が熟すと花穂は茶褐色を帯び、花軸にごく小さな小苞と前葉を残して、小穂の基部から落果する。 |
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↑Fig.8 開花中の花序。(長崎県・沿海棚田の草地 2009.10/25) 正確には開花直後というべきだろうか、柱頭が少し黄褐色を帯びている。 |
生育環境と生態 |
Fig.9 植え込み内の芝地で生育するイヌクグ。(西宮市・海岸近くの植え込み芝地 2010.7/7) 西宮市内の海岸付近は開発しつくされ、自然な草原はないが、植え込みの芝地や公園の草地でイヌクグがしぶとく生き残っている。 年に数度芝の刈り込みが行われるが、かえってそれがイヌクグの生育に適しているようで、大株の周辺には実生でふえた子株が見られる。 芝地内にはオッタチカタバミ、ネズミホソムギ、ナギナタガヤ、ヒメムカシヨモギ、メリケンカルカヤなどの外来雑草がまばらに見られる。 |