イシカグマ Microlepia strigosa  (Thunb.) C.Presl
  低山・原野・林縁のシダ 兵庫県RDB Cランク種 コバノイシカグマ科 フモトシダ属
Fig.1 (三重県紀北町・林縁 2014.10/26)

低山や原野、海岸近くの林縁などに生育する暖地にふつうの常緑性シダ。
根茎は長く匍匐し、径約5mm、黄褐色、長さ2mmの硬い毛に密に覆われる。
葉柄は長さ30〜60cm、わら色〜淡褐色、向軸側に溝があり、その周辺に密に毛をつける。
葉身は卵状長楕円形〜広披針形、鋭尖頭、2回羽状複葉、長さ20〜80cm、幅20〜35cm、硬めの草質で黄緑色。
羽片は20対を越えることがあり、大きいものは有柄、三角状狭披針形で、尾状に伸びる先端に向けてしだいに狭くなり、
基部はくさび形、長さ20cm、幅4cmに達する。羽軸の向軸側は無毛、背軸側には毛がある。
小羽片は長楕円形〜狭三角状長楕円形、鈍頭まれにやや鋭頭、基部はくさび形で無柄、長さ約2cm、幅約1cmに達し、羽状に中〜深裂する。
裂片は波状縁、表面は無毛、裏面は葉脈が明瞭に隆起し、その上に粗毛がつく。
葉脈の先端は鋸歯の先端に達する。胞子嚢群は辺縁近くにつき、苞膜の前縁は裂片の縁に届く。
包膜は径1mm以下、無毛またはごくまばらに毛がある。染色体数はn=43,2n=84,86の2倍体。

【メモ】 兵庫県内では少ないシダで、淡路島では普通だが、他には芦屋市と西宮市の記録が1例ずつあるのみ。
ウスバイシカグマM. substrigosa)は薄い草質。葉は3回羽状複葉で、葉脈の先端は鋸歯の先に届かない。高知、宮崎、鹿児島、沖縄。
オドリコカグマM. sinostrigosa)はやや硬めの草質。葉脈の先端は鋸歯の先に届かず、包膜の前縁は葉縁からやや離れている。静岡、徳島、九州。
フモトカグマM. pseudostrigosa)は羽軸の向軸側に毛があり、小羽片には短い柄がある。包膜の前縁は葉縁から離れている。関東南部、静岡、愛知。
クジャクフモトシダM.bipinnata)はフモトシダとの推定種間雑種とされる。葉は2回羽状複葉。小羽片基部は広く羽軸につき、翼をつくる。
関東南部以西の太平洋側、四国、九州。
近縁種 : ウスバイシカグマ、オドリコカグマ、フモトカグマ、クジャクフモトシダ

■分布:本州(千葉県南部以西の太平洋側)、四国、九州、沖縄、小笠原 ・ ヒマラヤ、スリランカからポリネシアにかけての旧世界の熱帯、亜熱帯
■生育環境:低山や原野、海岸近くの林縁など。

Fig.2 全草標本。(三重県紀北町・林縁 2014.10/26)
  葉柄は長さ30〜60cm、わら色〜淡褐色。葉身は卵状長楕円形〜広披針形、鋭尖頭、2回羽状複葉、硬めの草質で黄緑色。

Fig.3 葉柄基部には毛が見られた。(三重県紀北町・林縁 2014.10/26)

Fig.4 中軸や羽軸には溝があるが、連結していない。(三重県紀北町・林縁 2014.10/26)

Fig.5 中軸や羽軸の背軸面には毛が生える。(三重県紀北町・林縁 2014.10/26)

Fig.6 羽片。(三重県紀北町・林縁 2014.10/26)
  羽片は大きいものは有柄、三角状狭披針形で、尾状に伸びる先端に向けてしだいに狭くなり、基部はくさび形。

Fig.7 羽軸。(三重県紀北町・林縁 2014.10/26)
  羽軸の背軸側(裏側)には毛が生えるが、向軸側(表側)には毛は生えない。

Fig.8 小羽片。(三重県紀北町・林縁 2014.10/26)
  小羽片は長楕円形〜狭三角状長楕円形、鈍頭まれにやや鋭頭、基部はくさび形で無柄、羽状に中〜深裂する。裂片は波状縁、表面は無毛。

Fig.9 羽片裏面。(三重県紀北町・林縁 2014.10/26)
  裏面は葉脈が明瞭に隆起し、裂片の脈上に粗毛がつく。葉脈の先端は鋸歯の先端に達する。
  胞子嚢群は辺縁近くにつき、苞膜の前縁は裂片の縁に届く。

Fig.9 苞膜。(三重県紀北町・林縁 2014.10/26)
  苞膜はコップ状で径1mm以下、無毛またはごくまばらに毛がある。

生育環境と生態
Fig.10 造成地の林縁に生育するイシカグマ。(三重県紀北町・林縁 2014.10/26)
海岸近くの原野状の放置された造成地の林縁にイシカグマがかたまって生育していた。
周辺にはイワヒメワラビ、ワラビ、ススキ、コスミレ、ニガイチゴ、ハスノハカズラなどが生育していた。


最終更新日:5th.Nov.2014

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