イワナシ | Epigaea asiatica (Thumb.) Blume | ||
山地・岩上・斜面の植物 | ツツジ科 イワナシ属 |
Fig.1 (兵庫県篠山市・林縁斜面 2013.3/30) |
||
Fig.2 (兵庫県篠山市・林縁斜面 2013.3/30) 低山〜亜高山の乾いた岩上、林縁の急な斜面に生育する常緑小低木。 茎は木質で多少分枝して地に伏して伸び、長さ10〜25cm、褐色の毛がある。 葉は有柄で互生し、長楕円形で先はとがり、長さ4〜10cm、幅2〜4cm、両面にまばらに長い毛が生え、 葉質は硬く、縁に褐色の毛がある。 早春、枝の先に苞葉のある総状花序を出し、淡紅色の花を数個開く。 萼は5裂し、裂片は狭卵形でとがり、紅紫色。花冠は筒状で長さ約10mm、先は5裂し、裂片は卵状3角形。 雄蕊は10個、雌蕊は1個。果実は扁球形の液果で、果皮は膜質で腺毛が生える。 果実の胎座は白色多肉で甘く食べられる。種子は細かく、多数が胎座につく。 【メモ】 イワナシは深山の岩上や亜高山帯によく見られる種であるが、兵庫県下ではチャートを基岩とする低山に多い。 近縁種 : ■分布:北海道西南部、本州 ■生育環境:低山〜亜高山の乾いた岩上、林縁の急な斜面など。 ■花期:3〜6月 |
||
↑Fig.3 茎と葉。(兵庫県丹波市・岩上 2010.5/14) 茎は地に伏して分枝して広がる。葉は互生し、硬く、濃緑色。 |
||
↑Fig.4 当年枝と前年枝。(兵庫県丹波市・岩上 2010.5/14) 当年枝(新枝)は白色の長い腺毛と短い腺毛が混じって密生する。 これらの腺毛は、古くなると先端の腺体が枯れ落ち、褐色の毛となる。 |
||
↑Fig.5 新葉。(兵庫県丹波市・岩上 2010.5/14) 両面や縁に白色の腺毛が生える。古くなると腺体は枯れて、毛が褐色となるのは、枝と同様である。 |
||
↑Fig.6 イワナシの花。(兵庫県丹波市・岩上 2010.3/27) 花は総状花序に数個つく。花柄の基部には2個の小苞があり、それを包む1個の苞がある。 萼は5深裂し、裂片は狭卵形でとがり、花時は紅紫色。花冠は筒状、淡紅色、先は浅5裂し、裂片は卵状3角形で開く。 |
||
↑Fig.7 受粉後の花冠は触れると脱落しやすい。(兵庫県丹波市・岩上 2010.3/27) |
||
↑Fig.8 花冠内部。(兵庫県篠山市・林縁斜面 2013.3/30) 雄蕊10個、雌蕊1個。花糸の下半と、花筒奥の内側には白色の毛が生えている。 |
||
↑Fig.9 果実期。(兵庫県丹波市・岩上 2010.5/14) |
||
↑Fig.10 果実。(兵庫県丹波市・岩上 2010.5/14) 果実は扁球形の液果で、果皮は膜質、果柄と果実上部には腺毛が生える。 柱頭や萼は宿存し、萼は果実が熟すとともに淡緑色となる。 |
生育環境と生態 |
Fig.11 林道脇の露頭斜面に生育するイワナシ(中央)。(兵庫県丹波市・岩上 2010.5/14) 県下の丹波地方ではチャートを基岩とする山域の、日当たりよく乾いて、多少は表土がある岩上や、被植の少ない斜面で見かける。 ここではそのような場所で、ケアクシバ、ヤマツツジ、モチツツジ、ミツバアケビ、ショウジョウバカマ、コシダ、ウラジロ、ホラシノブ、 シシガシラ、ヒカゲノカズラ、ヤブコウジ、イタドリなどとともに生育している。 |
||
Fig.12 農道脇の林縁斜面に生育するイワナシ。(兵庫県篠山市・林縁斜面 2013.3/30) 日当たりよい比較的被植の少ない急な斜面に点在している。 ここではケアクシバ、モチツツジ、ショウジョウバカマ、シシガシラ、ヒカゲノカズラ、ツルアリドオシなどとともに生育している。 |
||
Fig.13 岩壁に生育するイワナシ。(兵庫県篠山市・岩壁 2013.6/7) 小さな渓流に面した、日当たり良い岩壁にイワナシが着生していた。 岩壁の表面をフトリュウビゴケやオオトラノオゴケなどの蘚類が覆う場所ではシノブが群生し、岩の割れ目にイワナシが生育している。 |