オガルカヤ Cymbopogon tortilis  (Presl) Hitchc.
 var. goeringii  (Steud.) Hand.-Mazz.
  里山・草地の植物 イネ科 オガルカヤ属
Fig.1 (長崎県・農道脇 2010.10/3)

Fig.2 (西宮市・棚田の土手 2011.9/6)

丘陵〜低山の里山の草地、ハゲ山などに生育する多年草。
根茎は短く、叢生、茎は直立し、高さ100cm前後となる。
葉は線形で、幅3〜5mm。茎はやや硬く平滑で、短く分枝し、多数の分花序をつけて、長さ20〜40cmの円柱形の花序をつくる。
分花序に2個ずつつく総は、長さ1.5〜2cmで、粉白味のある緑色または赤紫色を帯び、総や小穂のつくりには変異が多い。
総の最下には、ふつう1対の同形の雄性小穂がつくか、あるいはこれを欠き、その上に有柄と無柄の小穂が対をなしてつく。
無柄小穂は両性で、第1頴は広披針形で、長さ5〜6mm、第4頴の芒は完全で、長さ約1cm。
有柄小穂はやや小さい雄性で、芒はない。

【メモ】 兵庫県下ではメガルカヤよりも見かける機会は少なく、自生地も減少傾向にあるようである。
     西宮市内でも棚田の耕作放棄によって自生地が減少している種であり、近い将来、保護すべき種となる可能性が高いと思われる。
     ちなみに、西宮市内では兵庫県RDB B種となっているシズイよりも自生地は少なく、自生地は棚田の耕作放棄によって荒れはじめており、
     なんらかの保全措置をとらないと絶滅する状況にある。
■分布:本州、四国、九州、沖縄、小笠原
■生育環境:里山の草地、ハゲ山など。
■花期:8〜11月

Fig.3 全草標本。(西宮市・棚田の土手 2010.11/20)
  茎は直立し、花序は円柱状。葉は先端近くで反転したりねじれたりする。

Fig.4 開花中の花序。(兵庫県小野市・棚田の土手 2013.9/24)

Fig.5 花序の一部。(長崎県・農道脇 2010.10/3)
  葉鞘の中から枝が出て、枝はときにさらに分枝して、その先の苞鞘から180度前後に開いた1対の総が出る。
  このような開いた総は他に例がなく、非常に判りやすい特徴である。

Fig.6 総の拡大。(西宮市・棚田の土手 2010.11/20)
  ふつう総の最下には1対の雄性の無柄小穂が見られるが、この総にはそれがなく、すぐに無柄小穂と有柄小穂が1対となる組が見られた。
  この個体では半数程度の総に同様の組み合わせが見られた。時期的にやや遅いため、このような総が生じている可能性も考えられる。

Fig.7 対になった有柄小穂(上)と無柄小穂(下)。(西宮市・棚田の土手 2010.11/20)
  有柄小穂は雄性花、無柄小穂は両性花。有柄小穂には芒がなく、無柄小穂にはねじれた黒褐色の長さ15〜18mmの芒がつく。

Fig.8 有柄小穂と無柄小穂・その2。(西宮市・棚田の土手 2010.11/20)
  有柄小穂の柄には斜上する白色軟毛がある。無柄小穂の第1苞頴の縁は内折れして、翼状となる。

Fig.9 展開した有柄小穂。(西宮市・棚田の土手 2010.11/20)
  画像のものは護頴があるが、完全に退化して護頴のないものもある。内頴はいずれの有柄小穂でも見られなかった。

Fig.10 展開した無柄小穂。(西宮市・棚田の土手 2010.11/20)
  無柄小穂は護頴、内頴ともに見られた。芒は小穂内部の基部に苞状の薄膜質鱗片とともについていた。

生育環境と生態
Fig.11 溜池土堤に生育するオガルカヤ。(兵庫県加東市・溜池土堤 2011.11/14)
兵庫県下では草刈りの行き届いた草地でよく見られ、溜池土堤や棚田の土手で見かける機会が多い。
自生地ではキキョウ、ツリガネニンジン、リンドウ、メガルカヤ、オミナエシ、コガンピ、ワレモコウなどの草原性植物とともに出現することが多い。
画像のものは溜池水際の護岸ブロックの隙間にメリケンカルカヤやセイタカアワダチソウなどと生育しているもの。
土堤上では群生するメガルカヤに対して、オガルカヤは少数がまばらに生育していた。

Fig.12 ハゲ山に生育するオガルカヤ。(兵庫県姫路市・ハゲ山 2011.11/28)
流紋岩質の表土の少ないハゲ山の砂礫地に大きな個体が生育していた。
県南部ではハゲ山や岩山の隙間などの表土の少ない場所で生育しているオガルカヤをよく見かける。
このような場所ではメガルカヤは稀で、オガルカヤが圧倒的に多く、リュウノウギク、ノジギク、ヤマジノギクなどのキクの仲間、ヤマラッキョウ、
ウンヌケやウンヌケモドキなどが出現する。


最終更新日:26th.July.2014

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