オケラ | Atractylodes japonica Koidz. | ||
里山・草地・林縁の植物 兵庫県RDB Cランク種 |
キク科 オケラ属 |
Fig.1 (神戸市・林縁草地 2011.10/16) 丘陵〜山地の草地や林縁に生育する多年草。雌雄異株。 地下茎は長さ5〜8cm、径1.5〜3cmで、多数の丈夫な根があり、大きな褐色の芽がつく。 茎は高さ30〜100cmになり、堅くて上部で分枝し、枝の先に頭花をつける。 葉は長い柄があり、葉身は3〜5深裂し、やや堅く、辺縁は鋸歯が並ぶ。 頭花の径は2〜2.5cm、総苞直下に2裂の魚骨状の苞がある。 総苞は鐘形で長さ17mm、総苞片は7〜8列、鈍頭または円頭で外のものほど短い。 小花は雄花では長さ10〜12mm、雌花では長さ9〜11mm。花は白色または淡紅色。冠毛は長さ8〜9mm。 【メモ】 かつては里山の林縁や草地でよく見かけた種であるが、谷津や雑木林の管理放棄で急激に減少し、兵庫県版RDBではCランクとなっている。 乾燥した根茎は「白朮(びゃくじゅつ)」と称し、芳香性健胃剤として用いられる。また、屠蘇散にも使用されている。 白朮の独特の芳香は鎮静作用もあり、入浴剤として使用してもよい。春の若芽は食用となるが、昨今では食用とするだけの収量が望めない。 ■分布:本州、四国、九州 ・ 朝鮮半島、中国東北部 ■生育環境:丘陵〜山地の草地など。 ■花期:9〜10月 |
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↑Fig.2 オケラの葉。(兵庫県小野市・溜池土堤 2011.12/1) 葉身は3〜5深裂し、やや堅く、辺縁は鋸歯が並ぶ。 |
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↑Fig.3 葉柄。(神戸市・林縁草地 2011.10/16) 葉柄は長く、基部の辺縁には刺状の突起が数個並ぶ。 |
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↑Fig.4 葉縁の鋸歯。(神戸市・林縁草地 2011.10/16) 葉縁には鋸歯が整列し、先は短い刺状となり、やや内側に曲がる。 |
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↑Fig.5 葉表の拡大。(神戸市・林縁草地 2011.10/16) 葉裏にはくも毛が生え、特に若い葉には顕著である。 |
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↑Fig.6 茎上部と葉。(兵庫県小野市・溜池土堤 2011.7/12) 茎は堅く、節で多少とも屈曲する。茎上部の葉は切れ込まないものが多い。 |
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↑Fig.7 つぼみ。(兵庫県小野市・溜池土堤 2011.7/12) 頭花を2列の魚骨状の苞葉が包んでいる。 |
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↑Fig.8 オケラの花。(神戸市・林縁草地 2011.10/16) オケラは雌雄異株で、画像のものは雄株の花。頭花の径は2〜2.5cm。花は白色または淡紅色。 |
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↑Fig.9 雌頭花。(神戸市・林縁草地 2011.10/16) 頭花には筒状花が並ぶ。筒状花の先はふつう5裂する。花柱の周りは集約雄蕊が取り巻くが、葯には花粉がない。 花柱の先は少しふくらみ、柱頭は2裂する。 |
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↑Fig.10 結実期。(兵庫県小野市・溜池土堤 2011.12/1) 結実が進むと草体は上部から枯れ始めるが、ドライフラワーのように枯れた葉をつけているものを見る。 |
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↑Fig.11 苞葉を取り除いた結実期の頭花。(兵庫県小野市・溜池土堤 2011.12/1) 総苞は鐘形。総苞片は7〜8列並び、鈍頭または円頭で、縁毛があり、外のものほど短い。 |
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↑Fig.12 総苞片を取り除いた頭花。(兵庫県小野市・溜池土堤 2011.12/1) 花床には剛毛が生え、その間に痩果が並んでおり、剛毛は痩果を支えているように見える。 画像の頭花には40個の痩果があり、うち外周部の11個が結実し、残りの内部の29個は不稔であった。 |
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↑Fig.13 冠毛と痩果。(兵庫県小野市・溜池土堤 2011.12/1) 冠毛は羽毛状で、基部は合着する。痩果は長楕円形、上向きの伏毛が多く、長さ約6mm。 |
生育環境と生態 |
Fig.14 林縁草地に生育するオケラ。(神戸市・林縁草地 2011.10/16) 公共施設内の疎林の林縁草地が刈り込み管理され、選択的に刈り残されたオケラが100個体以上開花していた。 施設内は適度な草刈りにより良好な草原環境が保たれており、稀少種であるアワボスゲ、ノグサ、周辺では稀なカワラボウフウのほか、 ツリガネニンジン、ワレモコウ、リンドウ、オトギリソウ、ササユリなどの疎林〜草原性の植物が多く、センボンヤリの群落、タガネソウの群落 なども見られ、非常に2次的自然度が高い。 |
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Fig.15 溜池土堤に生育するオケラ。(兵庫県小野市・溜池土堤 2011.7/12) 頻繁には草刈のなされていない溜池土堤の管理用の小道の脇に点在するオケラ。 堤体はネザサが優占し、ワラビ、ヨモギ、ススキが多いが、稀少種のウンヌケ、ユウスゲの個体数が多く、キキョウ、メガルカヤ、オガルカヤ、 堤体下部の湿った場所ではイヌノハナヒゲ、ヌマガヤ、ホソバリンドウ、ヤマラッキョウなどが生育する。 |