オオカサゴケ Rhodobryum giganteum  (Schwaegr.) Par.
  里山・林縁・林床の植物 カサゴケ科 カサゴケ属
Fig.1 (兵庫県篠山市・植林地林縁 2011.2/10)

Fig.2 (兵庫県篠山市・溜池直下の畦 2013.2/12)

湿った腐植土上などにまばらな群落をつくる大型の美しい蘚類。
地下に長い匍匐茎があり、直立茎は長いもので6〜8cm、中部以下には鱗片状の赤紫色の小さな葉をつける。
茎の頂端には大きな、濃緑色の葉が集まってつき、その長さ15〜20mm、湿ると横に展開して傘を広げたようになる。
葉身は長い倒卵形、基部は狭く、先は狭く鋭頭、上半の縁に対になった鋭鋸歯が双生し、舷はあまり明瞭ではない。
葉身細胞は6角形、長さ65〜120μ、厚膜で、ところどころにくびれがある。
雌雄異株で、朔をつけることは稀で、朔柄は1〜3本、頂生、下部は赤紫色、上部は黄褐色、長さ6〜8cm。
朔は長い円筒形でほぼ相称、長さ約8mm、水平または下垂する。蓋は円錐形。朔歯は2列で完全。

カサゴケモドキR. ontariense)は頂生する葉は20〜50枚あり、葉の長さ10mm前後で、鋸歯は単生する。
カサゴケR. roseum)はカサゴケモドキに酷似するが、葉数は少なく、葉先が狭くとがり、中肋は葉頂に達しない。
近縁種 : カサゴケモドキ、カサゴケ

■分布:本州、四国、九州 ・ 熱帯アジア、ハワイ、マダガスカル
■生育環境:里山の棚田の土手、林縁、林床の湿った腐植土上など。

Fig.3 頂生する葉。(兵庫県篠山市・用水路脇の土手 2009.2/11)
  大きな葉が茎頂にあつまってつき、濃緑色、長さ15〜20mm。

Fig.4 茎の中〜下部につく葉。(兵庫県篠山市・湧水地 2015.2/27)
  鱗片状で茎に接してつき、広披針形、長さ3〜3.5mm、赤紫色、中部から上に鋸歯があり、鋭尖頭。

Fig.5 頂生する葉の葉先。(兵庫県篠山市・湧水地 2015.2/27)
  葉先は鋭頭で、中肋は先端まで達する。

Fig.6 葉縁の鋸歯。(兵庫県篠山市・湧水地 2015.2/27)
  上半の縁に対になった鋭鋸歯が双生し、舷はあまり明瞭ではない。

Fig.7 葉身細胞。1目盛=1.6μ。(兵庫県篠山市・湧水地 2015.2/27)
  葉身細胞は6角形、長さ65〜120μ、厚膜で、ところどころにくびれがある。

Fig.8 2段になったもの。(兵庫県三田市・林縁湿地 2009.3/13)
  前年の体の上に、当年に新たに株を生じたもの。空中湿度の高い場所で見られる。

生育環境と生態
Fig.9 用水路脇の畦に生育するオオカサゴケ。(西宮市・用水路脇の畦 2010.12/29)
用水路の対岸の土手のネザサ群落中にもオオカサゴケが見られ、そこから胞子が飛散して畦に定着したものであろう。
地表を覆うジャゴケsp.の間から点々と胞子体を立ち上げていた。周辺にはショウジョウバカマ、ヒメヤブラン、スズメノヤリ、ウマノアシガタ、
ゲンノショウコ、ギシギシ、ダイコンソウ、ヘビイチゴ、カキドオシ、ヤマネコノメソウ、ノアザミなどが生育している。

Fig.10 用水路脇の土手に生育するオオカサゴケ。(兵庫県篠山市・用水路脇の土手 2011.2/10)
植栽のまばらな果樹園の脇に用水路が流れ、その脇の湿った土手にオオカサゴケの群生が見られた。
オオカサゴケはヒメシノブゴケとともに、ヒメヤブラン、ヒカゲスゲ、ヤマスズメノヒエ、カキドウシ、スイバ、コモチマンネングサ、
コハコベ、セントウソウ、ニリンソウなどが生育する土手の地表を覆っている。

Fig.11 植林地の林床に生育するオオカサゴケ。(兵庫県篠山市・林床 2011.2/10)
ヒノキの植栽された比較的多湿の植林地の林床に広い範囲にわたってまばらな群落を形成していた。
ここでは画像中に見られるトウゲシバのほか、ニシノホンモンジスゲ、ジュウモンジシダ、ヤマイタチシダ、オニカナワラビ、リョウメンシダ、
イヌショウマ、イヌツゲ、コガクウツギが見られた。

Fig.12 渓流畔に生育するオオカサゴケ。(兵庫県篠山市・渓流畔 2010.3/30)
渓流畔の高みのミヤマカンスゲ群落の株元周りにオオカサゴケの群落が見られた。
渓流畔ではオオカサゴケは出水時に水没しない安定した場所に生育する。水際部ではトヤマシノブゴケが生育していた。


最終更新日:10th.Mar.2015

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