ウスヒメワラビ | Acystopteris japonica (Luerss.) Nakai | ||
山地・林床のシダ | イワデンダ科 ウスヒメワラビ属 |
Fig.1 (兵庫県養父市・多湿な林床 2015.8/2) 山地の湿度の高い林床に生育する夏緑性シダ。 根茎は横走し、径3〜4mm、葉をやや相接してつけ、鱗片がある。 鱗片は広披針形、鋭頭で、基部は円く、長さ1〜3.5mm、淡褐色、薄い膜質。 葉柄は長さ20〜30cm、暗褐色〜紫褐色、光沢があり、全面に披針形から狭披針形で膜質の鱗片があり、基部に根茎と同じ鱗片がある。 葉身は3角状卵形、3回羽状複生し、鋭尖頭、長さ20〜50cm、幅15〜40cm。羽片は中軸と50〜60度の角度でつき、ほとんど無柄。 小羽片は長楕円形、鋭頭〜鈍頭、無柄、羽状に深裂〜全裂する。裂片は長楕円形、鈍鋸歯縁、脈は裂片の辺縁に達する。 葉質は鮮緑色の薄い草質、葉の軸には細い鱗片があり、葉の両面に白色の軟毛をまばらにつける。 ソーラスは裂片の辺縁寄りにつき、包膜は小さく、卵円形〜卵形、成熟した葉では胞子嚢群に覆われ、外からは見えない。 胞子は黄褐色、表面は粒状突起で覆われる。染色体数はn=42で2倍体。 ホウライウスヒメワラビ(A. tenuisecta)は葉柄が緑色を帯びたわら色、羽軸は中軸にほぼ直角につく。屋久島に稀。 近似種 : ホウライウスヒメワラビ ■分布:本州(東北南部以南)、四国、九州、屋久島 ・ 中国南部、台湾 ■生育環境:山地の湿度の高い林床など。 |
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↑Fig.2 全草標本。(兵庫県養父市・多湿な林床 2015.8/2) 葉柄は長さ20〜30cm、暗褐色〜紫褐色、光沢がある。 葉身は3角状卵形、3回羽状複生し、鋭尖頭。羽片は中軸と50〜60度の角度でつき、ほとんど無柄。 葉質は鮮緑色の薄い草質で繊細。持ち帰る最中に傷みやすい。 |
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↑Fig.3 葉柄。(兵庫県養父市・多湿な林床 2015.8/2) 葉柄には全面に披針形から狭披針形で膜質の鱗片がある。若い葉の葉柄の鱗片には透明感がある。 |
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↑Fig.4 鱗片。(兵庫県養父市・多湿な林床 2015.8/2) 鱗片は広披針形、鋭頭で、基部は円く、長さ1〜3.5mm、淡褐色、薄い膜質。 |
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↑Fig.5 最下羽片基部。(兵庫県養父市・多湿な林床 2015.8/2) 最下羽片の第1小羽片は上下とも小さい。 |
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↑Fig.6 中軸裏面の鱗片は細くなり、毛状のものも混じる。(兵庫県養父市・多湿な林床 2015.8/2) |
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↑Fig.7 羽片の拡大。(兵庫県養父市・多湿な林床 2015.8/2) 小羽片は長楕円形、鋭頭〜鈍頭、無柄、羽状に深裂〜全裂する。 |
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↑Fig.8 裂片。(兵庫県養父市・多湿な林床 2015.8/2) 裂片は長楕円形、鈍鋸歯縁、脈は裂片の辺縁に達する。表面には軟毛を散生する。 |
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↑Fig.9 ソーラスは裂片の辺縁寄りにつく。(兵庫県養父市・多湿な林床 2015.8/2) |
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↑Fig.10 包膜は小さく、ソーラスに覆われて見えない。(兵庫県養父市・多湿な林床 2015.8/2) |
生育環境と生態 |
Fig.11 多湿の林床に生育するウスヒメワラビ。(兵庫県養父市・多湿な林床 2015.8/2) 渓流に面した岩壁直下の多湿な林床斜面に、数個体のウスヒメワラビが点在していた。 岩壁下部にはオオフジシダ、イワハリガネワラビ、イワイタチシダ、コケシノブが、斜面にはオオキジノオ、ヤマソテツ、シケチシダ、オオヒメワラビ、 ナンゴクナライシダ、ヤマイヌワラビ、コバノイシカグマなどが生育していた。 近年はシカの食害が激しく、成熟した葉が見られる場所は、入りにくいような峻険な場所に限られるようになってしまっている。 |