ウチワゴケ Crepidomanes minutum  (Blume) K.Iwats.
  山地・着生シダ コケシノブ科 アオホラゴケ属
Fig.1 (兵庫県篠山市・林道脇の石垣 2013.1/10)

Fig.2 (西宮市・社寺の石垣 2011.2/18)

平地〜山地の樹幹、岩上、地上に着生する常緑の小型のシダ植物。
根茎は糸状で長く這い、黒褐色の毛が密生し、同じような毛が生えたひげ根を生じる。
葉は根茎からまばらに出て、葉柄はごく細く硬い糸状。葉身は小型で、1〜2cm、うちわ形で膜質、不規則に裂けることが多い。
葉身基部は広いくさび形〜心形。小裂片は線状、全縁で鈍頭、それぞれに1本の脈がある。
胞子嚢群は裂片の先端につき、特に葉身の内側の裂片につく傾向が強い。苞膜はチャルメラ状に先は広がる。
胞子嚢群の中軸は棒状に長くのびて苞膜の縁から突出する。
近縁種 : アオホラゴケ、ハイホラゴケ

■分布:北海道、本州、四国、九州、沖縄 ・ 東アジア、オーストラリア、インド、スリランカ、ミクロネシア、ポリネシア
■生育環境:山地の樹林内の湿った樹幹、岩上、地表。

Fig.3 ウチワゴケの葉。(兵庫県丹波市・林道脇の岩上 2009.3/16)
  葉はその名の通りうちわ形で、不規則に深裂する。裂片はさらに浅く裂け、小裂片の先は鈍頭。

Fig.4 裂片の拡大。(兵庫県丹波市・林道脇の岩上 2009.3/16)
  葉は薄膜質で、1細胞層からなり、裂片の中央には1脈がある。

Fig.5 苞膜を生じた葉身。(兵庫県丹波市・林道脇の岩上 2009.3/16)
  苞膜は葉の内側の裂片先端につく傾向が強い。苞膜はチャルメラ(ラッパ)状。

Fig.6 成熟直前の苞膜(画像中央)と成熟した苞膜(画像右下)。(兵庫県丹波市・林道脇の岩上 2009.3/16)
  成熟直前の苞膜はまだ緑色で、薄膜が閉じている。

Fig.7 苞膜から突出した中軸。(兵庫県丹波市・林道脇の岩上 2009.3/16)
  苞膜の中軸(胞子嚢床)は苞膜の縁から突出し、中軸の周りに胞子嚢が付く。

Fig.8 苞膜上部の拡大。(兵庫県丹波市・林道脇の岩上 2009.3/16)
  多くの胞子嚢を排出した苞膜は中軸も脱落する。開いた苞膜の縁に胞子嚢が付いていた。


Fig.9,10 苞膜から得られた胞子嚢(上)と環体の拡大(下)。(兵庫県丹波市・林道脇の岩上 2009.3/16)
  胞子嚢は扁平な球状で、上〜中部の周縁に環体がつく。

Fig.11 根茎の先端付近。(兵庫県丹波市・林道脇の岩上 2009.3/16)
  根茎は長く地表を這い、糸状で黒褐色の細毛を密生する。根茎の各所には新芽が見られ、新葉が展開中である。

生育環境と生態
Fig.12 岩上に密生するウチワゴケ。(兵庫県丹波市・林道脇の岩上 2009.3/16)
渓流沿いに付いた林道の脇に岩壁や巨岩があり、その岩上に群生している。
この渓流は湿度が高いようでコウヤコケシノブ、ホソバコケシノブ、シシラン、カミガモシダなど、着生するシダ類が多い。
ウチワゴケが着生する巨岩の下にはシロバナネコノメ、ヤマネコノメ、サンインクワガタ、ミヤマハコベ、オオバタネツケバナが見られた。

Fig.13 岩上に着生するウチワゴケ。(西宮市・渓流畔の岩上 2011.3/3)
渓流を遡った、照葉樹林の脇にある岩上にマメヅタや蘚苔類とともに生育していた。

最終更新日:4th.Oct.2014

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