ウツギ Deutzia crenata  Sieb. et Zucc.
  里山・林縁・崖地の植物 アジサイ科 ウツギ属
Fig.1 (西宮市・林縁 2010.6/11)

Fig.1 (西宮市・林道脇 2010.6/14)

丘陵〜山地の林縁、疎林内、道端、崖地、棚田の土手などに生育する落葉低木。
高さは2m、ときに4mにもなり、よく分枝する。樹皮は灰褐色で、古くなるとはがれる。
今年枝は赤褐色を帯び、星状毛が密生またはまばらに生え、ときに開出毛もあり、皮目はない。
冬芽は卵形で、先がとがった卵形の鱗片葉に包まれる。葉は今年枝につく。
葉柄は長さ2〜5mmで、星状毛がやや蜜に生える。葉身には変化があり、多くは卵形、楕円形または卵状披針形、
先は鋭尖形で微凸頭に終り、基部は円形またはくさび形で、縁には微細な鋸歯がある。
葉の長さは、花序の枝につくものでは長さ4〜9cm、幅2.5〜3.5cmになり、やや厚く、両面ともに星状毛があってざらつく。
花は枝先についた幅の狭い円錐花序にやや密につく。花序には星状毛が密生し、ときに開出毛も生える。
萼筒は短い鐘状で、長さ約2.5mm、萼裂片とともに10〜14個の枝を出す星状毛を密生し、灰白色を帯び、ときに開出毛がある。
萼裂片は5個、卵状3角形で、長さ2〜2.5mm、鈍頭。
花は白色で鐘形、径約1cm。花弁は5個、倒披針形〜線状倒披針形、鈍頭、長さ10〜12mm、外面に星状毛を散生する。
雄蕊は10個、花弁よりわずかに短く、無毛、葯の0.7mmほど下に1対の歯牙があり、その下部から基部まで翼状となる。
花柱は3〜4個あり、花弁と同長で無毛、離生する。刮ハは木質、椀状、径4〜6mm、花柱が宿存し、3〜4裂する。
種子は狭長楕円形、褐色、長さ約2.5mm、一端には膜状の翼がある。

マルバウツギD. scabra)は花序の下の葉に葉柄はなく、多少とも茎を抱き、花糸に歯牙はない。
ヒメウツギD. gracilis)は葉の裏面が脈上を除いて星状毛がないかあってもまばらで、若枝や花序に星状毛はない。
ウラジロウツギD. maximowicziana)は葉が薄く、裏面には枝も含めて微小な星状毛を密生し、白色となる。
近縁種 : マルバウツギ、ヒメウツギ、ウラジロウツギ

■分布:北海道(南部)、本州、四国、九州
■生育環境:丘陵〜山地の林縁、疎林内、道端、崖地、棚田の土手など。
■花期:5〜7月

Fig.3 樹幹。(西宮市・雑木林の林縁 2011.2/25)
  樹皮は灰褐色で、古くなるとはがれる。画像のものは径4cm程度のもので、樹皮はほとんどはがれ落ちている。

Fig.4 若い枝。(西宮市・林道脇 2011.6/14)
  今年枝は赤褐色を帯び、星状毛が密生またはまばらに生え、ときに開出毛もあり、皮目はない。
  画像のものでは星状毛がまばらに見られ、開出毛はない。

Fig.5 葉。(西宮市・林道脇 2011.6/14)
  葉には短柄があり、葉身には変化があり、多くは卵形、楕円形または卵状披針形。
  先は鋭尖形で微凸頭に終り、基部は円形またはくさび形で、縁には微細な鋸歯がある。
  両面ともに星状毛が生えるが、表面に生える様子はFig.4 の若い葉のほうが解りやすい。

Fig.6 花序。(西宮市・林道脇 2011.6/11)
  花序は幅の狭い円錐花序で、花がやや密につく。

Fig.7 花序の拡大。(西宮市・林道脇 2011.6/11)
  花序には星状毛が密生し、ときに開出毛も生え、画像のものも開出毛がやや密生して生えている。
  萼筒は短い鐘状で、萼裂片とともに星状毛を密生し、灰白色を帯び、ときに開出毛がある。萼裂片は5個、卵状3角形で、鈍頭。

Fig.8 ウツギの花。(西宮市・林道脇 2011.6/11)
  花は白色で鐘形、径約1cm。花弁は5個、倒披針形〜線状倒披針形、鈍頭、長さ10〜12mm、外面に星状毛を散生する。
  雄蕊は10個、花弁よりわずかに短く、無毛、葯の0.7mmほど下に1対の歯牙があり、その下部から基部まで翼状となる。

Fig.9 訪花したウツギノヒメハナバチ。(西宮市・林道脇 2008.6/17)
  花粉を集めるのはメスのみで、すでに後脚に花粉を沢山蓄えている。
  ウツギノヒメハナバチはウツギの開花中はウツギのみから花粉を集め、土中の巣に持ち帰り、花粉団子をつくる。
  兵庫県朝来市の楽音寺の集団営巣地は県の天然記念物となっている。

Fig.10 訪花したアオバセセリ。(兵庫県篠山市・渓流畔 2008.5/23)
  山間谷間の入り口の渓流畔のウツギに多くの昆虫が訪花していて賑やかであった。
  アオバセセリは非常に飛翔速度が速く、採集の難しい蝶であるが、撮影できたのはラッキーだった。
  食樹はアワブキ、ミヤマハハソ、ヤマビワであり、食樹の分布に生息地が左右され、これまで山地の渓流畔で見かけることが多かった。

Fig.11 花後の花序。(西宮市・林道脇 2008.6/17)
  花後の萼筒部と子房は次第に木質化し、刮ハは椀状、径4〜6mm、花柱が宿存し、熟すと3〜4裂する。

生育環境と生態
Fig.12 林道の両側で満開のウツギ。(西宮市・林道脇 2010.6/11)
河川に沿って敷かれた林道脇でウツギが満開を向かえていた。
周辺ではヤマウコギ、タラノキ、ハゼノキ、ウルシ、スイカズラ、エビヅル、アケビ、フジなどが見られた。


最終更新日:8th.Mar.2011

<<<戻る TOPページ