ハマボウフウ Glehnia littoralis  Fr. Schm. ex Miq.
  海浜・砂浜の植物 セリ科 ハマボウフウ属
Fig.1 (西宮市・砂浜 2009.5/28)
海岸の砂地に生育する多年草。
根はゴボウ状で長い。茎は多毛で、多少枝を分け、高さ5〜40cm、まれに1mにもなる。
葉は1〜2回3出羽状複葉で、小葉や裂片は光沢と厚味があり、幅広く、先は円く、鋸歯があり、長さ2〜5cm、幅1〜3cm。
花は両性花で、密な複散形花序をなす。萼歯片があり、卵形、花弁は白色。
果実は広楕円形で、分果は多肉で隆条は太く、背面に毛があり、油管は細くて数多く、種子をつつむ。

【メモ】 西宮市内では2ヶ所の海岸で見られる。
■分布:北海道、本州、四国、九州、沖縄 ・ 千島、樺太、ウスリー、アムール、朝鮮半島、中国
■生育環境:海浜の砂地など。
■花期:5〜7月

Fig.2 花序。(西宮市・砂浜 2010.5/30)
  花序は複散形花序で大型、小散形花序の数も多く、小散形花序には花が密につく。

Fig.3 小散形花序。(西宮市・砂浜 2010.5/30)
  画像は夕方に撮影したため、小散形花序の中心近くのものは閉じており、外縁付近のものが少数開花している。
  雄蕊5個は花弁と互生してつき、花糸は長く花冠から出る。葯は赤紫色。雌蕊は2個で、柱頭は少し内曲する。

Fig.4 花茎の毛。(西宮市・砂浜 2010.5/30)
  花茎や花序の枝には白色の開出毛が密生する。

Fig.5 ハマボウフウの葉。(西宮市・砂浜 2010.5/30)
  葉は1〜2回3出複葉。画像のものは1回3出複葉。小葉は厚味と光沢があって無毛、幅広く、円頭、鋸歯がある。
  葉軸は無毛、基部に向かうにつれて赤紫色を帯びる。

Fig.6 葉縁。(西宮市・砂浜 2010.5/30)
  葉縁には透明細胞が並ぶ。

Fig.7 根。(兵庫県明石市・砂浜 2015.10/7)
  根はゴボウ状で長く、砂中深く伸びる。画像のものは途中で折れてしまったもの。

Fig.8 果実形成期。(西宮市・砂浜 2008.5/28)
  花弁や雄蕊は脱落し、宿存する花柱が目立つ。子房のふくらんだ小散形花序は、1つの集合果のように見える。
  画像の個体は盗掘に遭いもう見られない。
  追記:2009年度には確認できなかったが、2010年に再確認できた。地上部だけが持ち去られていたようだ。

Fig.9 結実期の花序。(西宮市・砂浜 2010.7/2)
  夏になると結実期を迎え、花序は赤紫色を帯びる。

Fig.10 地表にこぼれ落ちた分果。(西宮市・砂浜 2010.7/2)
  分果が熟すと花序は枯れて、分果がこぼれ落ちる。

Fig.11 分果の横断面。(西宮市・砂浜 2010.7/2)
  種子本体の周囲には細い油管が多数取り巻いている。果皮はコルク状に肥厚し、側隆条は張り出し、表面には縮れた軟毛が密生する。
  これらの特徴は海浜の自然現象を利用し、繁殖に有利な方向へと適応して獲得したものだろう。
  コルク状の果皮は水に浮かび、張り出した隆条は海風を受けて飛び、縮れた軟毛は砂を巻き込んで定着する仕様となっている。

Fig.12 本葉第1葉を出した実生苗。(西宮市・砂浜 2010.7/2)
  第1葉は円形で粗い鋸歯がある。長さ幅ともに5〜8mm。

Fig.13 開花期も終り、葉が黄葉しつつある。(兵庫県姫路市・砂浜 2011.6/15)

生育環境と生態
Fig.14 砂浜の高潮域に生育するハマボウフウ。(西宮市・砂浜 2010.5/30)
  西宮市内ではコウボウムギとともに海浜植物保護域に保護されて生育する。
  保護域内にはコマツヨイグサ、アレチマツヨイグサ、アメリカネナシカズラ、ネズミホソムギなどの外来種が優勢であり、
  訪れる度にこれらの外来種を引き抜くが、なかなかその勢いをくい止めることは難しい。

Fig.15 砂浜の高潮域に生育するハマボウフウ。(兵庫県姫路市・砂浜 2011.6/15)
  比較的自然度の高い砂浜では、他の草本の被植の少ない場所で葉を地表に広げて点在していることが多い。
  ここでもコマツヨイグサやボウムギの侵入はあるが、被植密度は薄く、ハマヒルガオ、オカヒジキ、コウボウムギ、コウボウシバなどとともに見られる。


最終更新日:18th.Aug.2016

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