ハマボッス Lysimachia mauritiana  Lam.
  海浜・礫浜・岩場の植物 サクラソウ科 オカトラノオ属
Fig.1 (兵庫県新温泉町・海岸の岩場 2011.5/26)
海浜の礫浜や岩場などに生育する越年草。
全草無毛。茎は基部で枝分かれして直立し、高さ10〜40cm、稜があり、しばしば赤味を帯びる。
葉は互生し、厚く肉質でつやがあり、倒卵形または倒披針形で、鈍頭、長さ2〜5cm、幅1〜2cm、
基部は細くなって短い柄状となるか無柄、葉肉内には黒色の腺点がある。
初夏に茎の先の葉状の苞の腋ごとに1花をつけ、総状花序をつくる。
花柄は長さ1〜2cm、葉状の苞と同長かやや短い。萼は5深裂し、裂片は披針形で、鈍頭、多数の黒色の腺点がある。
花冠は白色で5裂し、径1〜1.2cm、裂片は長楕円形で円頭または鈍頭。花糸は短く、葯とほぼ同長。
刮ハは球形で、径4〜6mm、果皮は硬く、先に小孔がある。種子は楕円形で稜があり、6角状の網目模様のある種皮で包まれる。

【メモ】 70年代には西宮市内の海岸に記録があったが、現在では絶滅して見られない。
     兵庫県下の開発の手の及ばない自然度の高い海岸では普通に見られる。

■分布:北海道、本州、四国、九州、沖縄 ・ 中国、東南アジア、インド、太平洋諸島
■生育環境:海浜の礫浜や岩場など。
■花期:5〜6月

Fig.2 茎は基部で枝分かれして直立し、上部に総状花序を形成する。(兵庫県新温泉町・海岸の岩場 2011.5/26)

Fig.3 茎と葉。(兵庫県新温泉町・海岸の岩場 2011.5/26)
  茎は無毛で、稜があり、太いがやわらかく、しばしば赤味を帯びる。
  葉はふつう互生し、厚く肉質でつやがあり、倒卵形または倒披針形で、鈍頭、基部は細くなって短い柄状となるか無柄。

Fig.4 花序。(兵庫県新温泉町・海岸の岩場 2011.5/26)
  茎の先の葉状の苞の腋ごとに1花をつけ、総状花序をつくる。

Fig.5 ハマボッスの花。(兵庫県新温泉町・海岸の岩場 2011.5/26)
  花には花柄があり、萼は5深裂する。花冠はおおむね白色で5裂し、径1〜1.2cm、裂片は長楕円形で円頭または鈍頭。
  雄蕊5個で、花糸は短く、葯とほぼ同長。雌蕊は雄蕊よりも少し短く、柱頭は扁球形。

Fig.6 果実形成期。(兵庫県姫路市・海岸の岩場 2011.6/15)
  刮ハは球状にふくらみ、熟すまでは嘴状となった花柱が宿存する。葉などの草体とともに、果実も赤味を帯びる。

Fig.7 刮ハは熟すと先端が5裂する。(兵庫県姫路市・海岸の岩場 2012.12/6)
  すでに刮ハは空になっていた。種子観察適期は夏から秋頃だろうか。
  枯れた花序は翌年の開花時期まで立ち枯れて残っていることが多い。

Fig.8 若い個体。(兵庫県姫路市・海岸の岩場 2011.6/5)

生育環境と生態
Fig.9 海岸の岩場に生育するハマボッス。(兵庫県姫路市・海岸の岩場 2011.6/5)
石英粗面岩の海崖の岩棚にテリハノイバラとともに生育していた。
周辺にはススキ、ノジギク、ハマナデシコ、ハマアオスゲ、オニユリなどが生育していた。

Fig.10 礫浜の湧水滲出部に生育するハマボッス。(兵庫県播磨・海岸の岩場 2011.6/5)
礫浜と海崖境界付近の岩溝に湧水がにじみ出し、そこにドロイとともに生育していた。
このような水分条件の良い場所に生えるものは分枝が多く、草丈も高くなり、多数の花をつける。

Fig.11 海崖の風衡地に生育するハマボッス。(兵庫県新温泉町・海岸の岩場 2011.5/26)
花崗岩質の海崖の風衡地にタイトゴメとともに多くのハマボッスが生育していた。
このような場所に生育する集団は草丈が低くなり、節間がつまる。


最終更新日:4th.Mar.2014

<<<戻る TOPページ