ヒメカンスゲ Carex conica  Thunb.
  林縁・林床の植物 カヤツリグサ科 スゲ属 ヌカスゲ節
Fig.1 (神戸市・山地の林縁 2010.5/21)

Fig.2 (兵庫県篠山市・林縁斜面 2014.3/28)

丘陵〜山地のやや乾いた林縁や林床に生育する多年草。
叢生し、匐枝を伸ばし栄養繁殖する。基部の鞘は紫褐色、しばしば基部の鞘を覆うように古い葉や鞘が繊維状となって残る。
葉は常緑で硬く、幅2〜6mm、前年の葉は濃緑色で、新葉は緑色、上半部の縁は上向きに、下半部の縁は下向きにざらつく。
有花茎は高さ10〜40cm。頂小穂は雄性で、棍棒状、紫褐色、長さ1〜2.5cm。
側小穂は雌性、たがいに離れてつき、3〜4個、長さ1〜2.5cm、幅2.5〜3.5mm。
苞には明瞭は鞘があり、鞘部は紫褐色を帯び、葉身は小穂よりも短い。
雄花および雌花の鱗片は凹頭で芒がある。果胞は長さ2.5〜3mm、有毛で、嘴はやや外曲し、口部は凹形。柱頭は3岐する。

【メモ】 ヒメカンスゲの染色体数は通常2n=36だが、瀬戸内地方では全体柔らかく、小穂も小型の2n=32のタイプが分布する。
     雌鱗片、果胞の脈が強く赤紫色を帯びるものをベニカンスゲ(var. rubens)とすることがある。

■分布:北海道、本州、四国、九州、対馬 ・ 朝鮮半島南部
■生育環境:丘陵〜山地の林縁や林床など。
■果実期:5〜6月

Fig.3 全草標本。(西宮市・山地の林床 2010.5/16)
  叢生する。長い濃緑色の葉は前年の葉で、常緑越冬したもの。

Fig.4 基部。(西宮市・山地の林床 2010.5/16)
  基部の鞘は紫褐色、葉身を持つ。鞘は新葉の基部で明瞭。新葉は緑色。
  前年以前の葉は新鞘のまわりに繊維状になって残っていることが多い。

Fig.5 花序。(西宮市・山地の林床 2010.5/16)
  頂小穂は雄性、側小穂は雌性でたがいに離れてつく。苞は小穂よりも短く、ふつう紫褐色の鞘が明瞭。
  画像のものは小穂の発達がやや悪く、例としてはあまり良いものではない。

Fig.6 雄小穂。(西宮市・山地の林床 2010.5/16)
  雄小穂は棍棒状で、紫褐色。ルーペなどで拡大すると雄鱗片の芒が目立つ。

Fig.7 雌小穂。(西宮市・低山の林縁 2007.6/13)
  雌鱗片は凹頭で芒がある。果胞の嘴は外曲する。

Fig.8 果胞。(西宮市・山地の林床 2010.5/16)
  果胞は倒長卵形で嘴があり、有脈、毛がはえる。口部は凹形。

Fig.9 痩果。(西宮市・山地の林床 2010.5/16)
  痩果は卵形、3稜あり、長さ1.6〜1.8mm、頂部には環状の付属体があり、その先は嘴状となって終わる。

Fig.10 瀬戸内タイプのヒメカンスゲ。(岡山県真庭市・山地の林床 2010.6/1)
  染色体数が2n=32でヒメカンスゲよりやや小型で草体が軟らかい。

Fig.11 瀬戸内タイプの花序。(岡山県真庭市・山地の林床 2010.6/1)
  小穂が多少細く、鞘の色はあまり紫褐色を帯びない。

生育環境と生態
Fig.12 木漏れ日の当たる半日陰の林床に生育するヒメカンスゲ。(西宮市・山地の林床 2010.5/16)
乾いたコナラ-アカマツ群落の半日陰林床の、降雨時には水が流れるであろう枯れ沢の周辺に生育している。
生育場所は地中も乾いており、降雨時に水分を補給すれば充分な体制を持っているのだろう。
周辺の腐植土のある多少湿った場所ではアリマイトスゲやコチョウショウジョウバカマ(シロバナショウジョウバカマ)が生育している。

Fig.13 登山道脇の林縁斜面に生育するヒメカンスゲ。(神戸市・山地の林縁 2010.5/21)
登山道脇のミヤコザサが切れて裸地状となった渇き気味の斜面にタチツボスミレとともに点在していた。



最終更新日:11th.Aug.2014

<<<戻る TOPページ