ヒメトサカゴケ Lophocolea minor  Nees
  低山・岩上のコケ ウロコゴケ科 トサカゴケ属
Fig.1 (西宮市・湧水地の石垣 2015.2/17)

低地のやや乾いた樹皮や石垣などに生育する苔類。緑色〜黄緑色。茎は長さ約1cm。雌雄異株。
葉は相接して、またはやや離れてつき、方形、1/3まで2裂し、裂片は3角形、細胞は20〜30μ。
油体は1細胞に4〜10個、円形〜紡錘形、3〜7μ、小粒の集合。
腹葉は互いに離れてつき、幅は茎とほぼ同じ、1/2まで2裂し、裂片は狭3角形で、ときに側面に1歯がある。
無性芽は緑色、葉形がくずれるほど大量に葉先につく。
花披は3角柱状、口部は広く、3裂し、裂片の縁に歯がある。
雄株は小さく、ほとんど分枝しない。雄花は茎の途中につき、苞葉は5〜10対。
*トリゴン 苔の葉の細胞膜の隅にある肥厚。

トサカゴケLophocolea heterophylla)は無性芽をつくらず、油体は1細胞中に4〜5個。
ヤマトソコマメゴケGeocalyx lancistipulus)は腹葉裂片に歯はなく、油体は1細胞中に16〜25個。
近縁種 : トサカゴケ、ヤマトソコマメゴケ

■分布:北海道、本州、四国、九州、沖縄 ・ 北半球の温帯
■生育環境:低地のやや乾いた樹皮や石垣など。

Fig.2 腹面からの透過光画像。1目盛=26μ。(西宮市・湧水地の石垣 2015.2/17)
  茎は長さ0.8〜2cm、幅は葉を含めて1〜1.3mm。仮根は無色で茎の腹面の節から出る。
  葉の重なり、互生〜対生し、方形、長さ約0.5mm、1/3まで2裂し、裂片は3角形、背面基部はやや茎に流れる。

Fig.3 葉細胞。1目盛=1.6μ。(西宮市・湧水地の石垣 2015.2/17)
  葉細胞は20〜30μ、薄膜で、トリゴン(*)がある(葉細胞は35μのものも見られた)。
  *トリゴン 苔の葉の細胞膜の隅にある肥厚。

Fig.4 油体。(西宮市・湧水地の石垣 2015.2/17)
  油体は1細胞に4〜10個、円形〜紡錘形、3〜7μ、小粒の集合。

Fig.5 腹葉。(西宮市・湧水地の石垣 2015.2/17)
  左:裂片に小歯がないもの。 右:裂片に長い小歯を持つもの。
  腹葉は互いに離れてつき、幅は茎とほぼ同じ、1/2まで2裂し、裂片は狭3角形で、ときに側面に1歯がある。

Fig.6 葉先についた無性芽。(西宮市・湧水地の石垣 2015.2/17)
  無性芽は緑色、葉形がくずれるほど大量に葉先につく。

生育環境と生態

Fig.7,8 クビレケビラゴケ群落中に混生するヒメトサカゴケ。拡大と遠景。(西宮市・湧水地の石垣 2015.2/17)
湧水池の排出口周辺の多湿な石垣にクビレケビラゴケとヤマトコミミゴケがマットを形成し、その中に点々と混生している。
周辺にはツボゴケ、クモノスゴケ、ミヤマサナダゴケ、ケゼニゴケ、ハリガネゴケsp.などが見られ、石垣にはノキシノブ、オクマワラビ、イノモトソウ、
ヤブソテツ、イワニガナが生育している。


最終更新日:20th.Mar.2015

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