カタクリ Erythronium japonicum  Decne.
  里山〜山地の植物 兵庫県RDB C種 ユリ科 カタクリ属
Fig.1 (兵庫県篠山市・クリ園跡 2012.4/10)
里山から山地にかけての雑木林の林床に群生する多年草。
西日本では隔離分布し、自生地は比較的局限される。
地下には20〜30cmの深さに数個連なって合着した鱗茎があり、筒状長楕円形で長さ5〜6cm。
葉はふつう2個、花茎の下部につき、長い柄があるが地下に埋まるため、地上には葉身だけが現われる。
葉身は長楕円形または狭卵形で長さ6〜12cm、黄緑色〜青緑色ときに緑白色を帯び、暗紫色の斑紋がある。
花は高さ10〜20cmの花茎の先に1個つき、下向きに開く。
花被片は紅紫色、披針形で長さ4〜5cm、基部近くに密腺があり、その上部にW字形の斑紋がある。
雄蕊は花被片の約半長、葯は濃紫色で線形。
刮ハは丸く、溝の深い3稜形となる。

■分布:北海道、本州、四国、九州 ・ 朝鮮半島、中国、樺太、南千島
■生育環境:里山から山地にかけての雑木林の林床など。
■花期:4〜5月



Fig.2 カタクリの花被。(兵庫県丹波市・雑木林 2008.4/3)
  花被片は内外あわせて6個つき、紅紫色でよく目立ち、花被片の下部にはW字形の斑紋があり、アクセントとなって美しい。
  花は陽が当たって充分に地温が上がらないと、完全に開花しない。
  花柱は雄蕊よりも長く、3岐した柱頭の先端は浅く2裂する。

Fig.3 群生するカタクリ。(兵庫県丹波市・雑木林 2008.4/3)
  自生地の条件が良好であれば、群生をつくることが多い。

Fig.4 根生葉。(兵庫県丹波市・雑木林 2008.4/3)
  根生葉は成株ではふつう2個つく。画像のものは根生葉1個の未熟な株で、まだ開花にはいたらない。
  葉には長い葉柄があるが、地上に出ているのは葉身の部分だけで、暗紫色や緑白色の斑紋がある。

Fig.5 果実形成期。(兵庫県養父市・雑木林 2008.4/27)
  果実は3稜ある広楕円形で、熟すと白色となる。

Fig.6 出芽したばかりの当年苗。(兵庫県丹波市・雑木林 2008.4/3)
  出芽したばかりの葉は線形でよじれ、カタクリのものであるとは思えない。

Fig.7 若年期の草体。(兵庫県丹波市・雑木林 2008.4/3)
  画像には3様の生育期別の草体が見られる。
  左上のものは前年発芽したと思われる個体、右側には大きな1個の根生葉を持つ若年株、
  中央には先端に種皮をつけたままの当年苗が2個体見える。
  カタクリは長い年月をかけてゆっくりと生長し、開花するまでに7年かかると言われている。

Fig.8 出芽。(兵庫県篠山市・クリ園跡 2011.3/31)
  花茎を上げる個体は、2枚の葉が花茎を包みながら出てくる。

Fig.9 カタクリ盗掘の跡。(兵庫県篠山市・クリ園跡 2013.4/9)
  カタクリは花が美しいため人気があり、保護されていない自生地では盗掘が後を絶たない。
  自生のものを堀り盗るよりも、市販されている球根を購入するようにしたい。

生育環境と生態
Fig.10 雑木林の急な斜面に生育するカタクリ。(兵庫県丹波市・雑木林 2008.4/3)
北西向きの木漏れ日の入る、やや湿潤な斜面にややまばらな群落が形成されていた。
林床にはカタクリのほかに、キクザキイチゲ、セリバオウレン、ネコノメソウが見られる。

Fig.11 雑木林の林床に群生するカタクリ。(兵庫県丹波市・雑木林 2008.4/3)
コナラ-クヌギの雑木林の林床がほぼカタクリの純群落となっている。
4月上旬、まだ落葉広葉樹は芽吹いておらず、林床には充分な陽光があたっていた。



最終更新日:7th.Mar.2014

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