カワラナデシコ Dianthus superbus  L.
 var. longicalycinus  (Maxim.) Williams
  里山・草地の植物 ナデシコ科 ナデシコ属
Fig.1 (兵庫県加西市・溜池土堤 2012.10/14)

Fig.2 (兵庫県新温泉町・海崖草地 2011.7/27)

丘陵〜山地の里山の草地や河原などに生育する多年草。常緑越冬する。
有花茎は直立し、上部は枝を分け、高さ30〜80cmになる。
葉は線形〜披針形で、粉白色を帯び、長さ3〜9cm、基部は茎を抱く。
花は茎頂のまばらな集散花序につき、分枝した枝先に単生する。苞は3〜4対あり、先は芒状にとがる。
萼は円筒形で、長さ3〜4cm。花弁の舷部は深裂し、淡紅色、下部に深紅褐色のひげ状の毛がある。
雄蕊は10個。花柱は2個。種子は円形で扁平、黒色で光沢があり、径約2mm。

【メモ】 本種はよく管理された溜池土堤や棚田の草地の常在種であり、本種が生育する場所は人為的に管理された2次的自然度の高い場所と判断できる。
近縁種 : エゾカワラナデシコ、タカネナデシコ、ハマナデシコ

■分布:本州、四国、九州 ・ 朝鮮半島、中国、台湾
■生育環境:里山の草地、河原など。
■花期:7〜10月

Fig.3 有花茎と無花茎。(兵庫県篠山市・用水路脇 2010.8/2)
  越冬した無花茎が生育し、すぐ脇の根茎から有花茎が伸びる。無花茎は節間が短く、葉が詰まってつく。

Fig.4 無花茎。(兵庫県篠山市・用水路脇 2010.8/2)
  無花茎の葉はやや葉幅が広く披針形で、長さも有花茎につく葉よりも短い。

Fig.5 有花茎と茎葉。(兵庫県篠山市・水田の畦 2010.8/2)
  花茎はふつう直立するが、長く伸びると倒伏する。節は少し肥厚する。
  葉は対生し、線形〜披針形、鋭頭、粉白色を帯び、基部は茎を抱く。


Fig.6,7 花序。(兵庫県篠山市・用水路脇 2010.7/31)
  花序は集散花序で、分枝して枝先に1花づつつく。

Fig.8 花序の節の葉は小型で広披針形〜長卵形。(兵庫県篠山市・用水路脇 2010.7/31)

Fig.9 カワラナデシコの花。(兵庫県篠山市・用水路脇 2010.7/31)
  花弁5個で、縁は深く糸状に分裂し、基部はひげ状の毛がある。花柱2個は反曲して長く飛び出す。

Fig.10 花弁の拡大。(兵庫県篠山市・用水路脇 2010.7/31)
  基部近くにはひげ状の毛が見える。

Fig.11 果実。(兵庫県小野市・溜池土堤 2010.11/25)
  果実は刮ハで長い宿存する萼筒の中にあって外からは見えない。熟すと先端の萼裂片は開く。

Fig.12 種子。(兵庫県小野市・溜池土堤 2010.11/25)
  種子は扁平な円形で黒色、縁は翼状となり、表面に微細な横しわがある。

Fig.13 越冬態。(兵庫県加東市・溜池土堤 2010.12/12)
  節間の詰まった無花茎は、常緑で越冬する。

生育環境と生態
Fig.14 用水路脇の草地斜面に生育するカワラナデシコ。(兵庫県篠山市・用水路脇 2010.7/31)
谷津の水田の用水路脇斜面の草地にコマツナギ、クララ、エビヅル、オニユリ、ツリガネニンジン、ウツボグサなどの草原性植物とともに生育している。

Fig.15 休耕田の草深い斜面に生育するカワラナデシコ。(兵庫県篠山市・休耕田の斜面 2010.8/2)
草刈りの行われていない休耕田の草深い斜面にクサマオ、ヨモギ、ノアザミ、ヒネジョオン、イタドリなどとともに生育している。
遷移が進みつつある高茎草本の繁る草地では草丈が1.5m以上となるものも見られる。

Fig.16 海岸の岩場に生育するカワラナデシコ。(兵庫県新温泉町・海岸の岩場 2011.7/72)
兵庫県下では太平洋岸にハマナデシコが生育するが、日本海側には分布せず、代わってカワラナデシコが同様な環境に進出している。
同所的にハマボッス、タイトゴメ、テリハノイバラ、ハマベノギク、アサツキ、キジカクシなどが生育している。


最終更新日:16th.Feb.2014

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