ケスハマソウ Hepatica nobilis  L. var. pubescens  M.Hiroe
  低山〜山地の植物 兵庫県RDB Bランク種 キンポウゲ科 ミスミソウ属
Fig.1 (兵庫県阪神地方・林縁 2013.3/21)

低山〜山地の主に落葉広葉樹林の林床や林縁に生える多年草。
地下に細長く匍匐する根茎がある。根生葉は根茎の先に束生し、長い葉柄がある。
葉身はやや三角状で、基部は心状、3浅〜中裂し、裂片は全縁、鈍頭、有毛。
総苞葉は3枚で輪生し、無柄、ときに浅裂、全縁、鈍頭〜円頭、有毛で、花の直下にあって萼のように見える。
花茎は根生葉の葉腋から生じ、開出毛が顕著、高さ10〜15cm。花は1個が花茎に頂生し、径1〜1.5cm。
花には花弁は無く、萼片が6〜10枚、白色〜紅色の花弁状となる。雄蕊、雌蕊ともに多数。
果実は1個の種子がある痩果で、無柄、数個が集合し、緑色の総苞葉に半ば被われる。
スハマソウ(var. japonica f. variegata)は葉や花茎がほとんど無毛のもの。
ミスミソウ(var. japonica)は根生葉の裂片が鋭頭のものをいう。
場所によってはケスハマソウ〜スハマソウ〜ミスミソウの変異は連続的なこともあるようだ。

■分布:本州、四国 ・ ヨーロッパ、東アジア
■生育環境:低山〜山地の主に落葉広葉樹林の林床や林縁など。
■花期:3〜4月

Fig.2 根生葉。(兵庫県阪神地方・林縁 2013.3/21)
  根生葉は常緑。葉身はやや三角状で、基部は心状、3浅〜中裂し、裂片は全縁、鈍頭。

Fig.3 葉面。(兵庫県阪神地方・林縁 2013.3/21)
  葉面には毛が生え、越年しても残っている。

Fig.4 葉裏。(兵庫県阪神地方・林縁 2013.3/21)
  越年した葉では、葉裏の毛はほとんど脱落し、紫色を帯びる。

Fig.5 若い根生葉。(兵庫県阪神地方・林縁 2013.3/21)
  花茎を上げると同時に、若い根生葉も展出する。
  若い葉では葉柄、葉裏の開出した長毛がよく目立ち、葉裏は強く紫色を帯びている。

Fig.6 つぼみ。(兵庫県阪神地方・林縁 2013.3/21)
  つぼみは総苞葉に半ば包まれて出てくる。総苞葉はまるで萼片のようにも見える。
  総苞葉は3枚で輪生し、無柄、全縁、鈍頭〜円頭、有毛。

Fig.7 総苞葉はときに浅裂する。(兵庫県阪神地方・林縁 2013.3/21)

Fig.8 花。(兵庫県阪神地方・林縁 2013.3/21)
  花は径1〜1.5cm、花弁は無く、萼片6〜10枚が花弁状となる。

Fig.9 花の拡大。(兵庫県阪神地方・落葉広葉樹林 2013.3/21)
  雄蕊、雌蕊ともに多数。柱頭は鉤状に外曲する。

Fig.10 花と花茎。(兵庫県阪神地方・落葉広葉樹林 2013.3/21)
  花茎は開出毛が生え、高さ10〜15cm。花は1個が花茎に頂生する。

Fig.11 白い花の個体。(兵庫県阪神地方・林縁 2013.3/21)
  花の色には変異が多く、日本海側の集団に変異が顕著だといわれている。葯の色にも変異がある。

生育環境と生態
Fig.12 植林地と落葉樹林の境界付近で群生するケスハマソウ。(兵庫県阪神地方・林床 2013.3/21)
北側の山腹斜面の、少し湿った土壌の落葉広葉樹林下や植林地の林縁に、点々と群生している。
同所的にジャノヒゲ、ナキリスゲ、キヅタ、ナガバノタチツボスミレ、ツルアリドオシ、ツルリンドウ、フユイチゴ、トウゲシバ、シシガシラなどが見られた。

Fig.13 イチリンソウと混生するケスハマソウ。(兵庫県阪神地方・林床 2013.3/21)
木漏れ日の当たる植林地の林床にイチリンソウと混生する箇所があった。
イチリンソウの開花期はケスハマソウよりもかなり遅いが、両種の花が同時に見れることはあるのだろうか。
この山域は基岩が古生代に形成されたメランジェ(緑色岩系堆積岩)からなり、阪神の他の地区と比べると変わった種が生育している。
ケスハマソウやイチリンソウ、アオイスミレ、カノツメソウ、トキワイカリソウ、イヌショウマ、コショウノキなどはそのような種である。
近年、土砂の搬入に伴ってコンテリクラマゴケなどとともに移入されたと見られるカタヒバ、ミヤマカタバミ、ラショウモンカズラが生育するようになっており、
これらの種は緑色岩系の基岩地域によく出現する種であり、大変紛らわしい。



最終更新日:2nd.Apr.2013

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