キバナノアマナ Gagea lutea  (L.) Ker-Gawl.
  山地・野原の植物 兵庫県RDB B種 ユリ科 キバナノアマナ属
Fig.1 (兵庫県篠山市・林縁 2009.3/16)

Fig.2 (兵庫県丹波市・落葉広葉樹林 2011.3/29)

山野に生える多年草。西日本では点々と隔離分布し、局所的に見られる。
鱗茎は卵形で、長さ10〜15mm、径約10mm。
根生葉はふつう1個で、長さ15〜35cm、幅5〜10mm、はじめ軟毛があるが後に脱落、平滑で下部は茎の基部をつつみ、粉白色を帯びる。
花茎は高さ15〜22cm、苞は2個、互いに接近してつき、披針形、長さ3〜6cm、時にややづれて多数つき、その場合、上部のものは線状披針形で小さい。
花柄はやや散形に4〜10個つき、長さ2〜5cm。花被片は6個、線状長楕円形、内面は黄色、外面は淡緑色、長さ約14mm、鈍頭。
果実はやや円形で3稜あり、長さ約7mm。

似たものにヒメアマナG. japonica)がある。河畔などの湿った原野に生え、根生葉の幅2mm、花被片の長さ7〜9mm。
北海道、本州、九州に稀に産する
近縁種 : ヒマアマナ

■分布:北海道、本州、四国 ・ 千島、樺太、朝鮮半島、中国、シベリア東部、ヨーロッパ
■生育環境:草原などの原野的な環境。
■花期:3〜5月

Fig.3 花茎をあげはじめた個体。(兵庫県篠山市・林縁 2009.2/19)
  花茎や葉の基部は多少とも赤紫色を帯びる。
  花序はまだ2個の苞に包まれている。苞の内側には軟毛が見られるが、花序と苞が直接当たらないよう保護の役目をしているようだ。
  苞が開いて開花がはじまると、軟毛はほぼ脱落している。

Fig.4 倒れこんだ花茎。(兵庫県篠山市・林縁 2009.3/16)
  花茎は軟弱で多数の花をつけるものはたいてい倒れ込んでいるものが多い。
  2個の苞のうち外側(下部)のもののほうが大きい。花柄の長さは不揃いで長短がある。
  花被片の外側は淡緑色。

Fig.5 開花したキバナノアマナ。(兵庫県篠山市・林縁 2009.3/16)


Fig.6,7 キバナノアマナの花被。(兵庫県篠山市・林縁 2009.3/16)
  花被片は6個で内側は黄色、光沢はなく、鈍頭。花被片に相対して雄蕊が6個き、花被片よりも短い。
  葯は展開する前は長楕円形。花糸は基部にむかってやや広がる。子房は上位、子房と花柱はともに3稜ある。
  柱頭には花粉を受け取りやすくするための短い軟毛が生えている。
  fig.5 では、葯が上端から開いていく様子が解る。

Fig.8 葉身。(兵庫県篠山市・林縁 2009.2/19)
  葉身は線形で、画像からはよく見えないが3本の平行脈が明瞭、粉白色を帯びる。
  先は葉縁が合着する傾向が見られ、鈍頭。

Fig.9 発芽1年目の幼苗。(兵庫県篠山市・寺社林内 2009.2/19)
  糸状線形で、高さ約3cm。おそらく1個の刮ハが倒伏して地表に落ち、その中にあった種子が発芽しているのだろう。
  苗の先端は内側に少し折れ曲がる傾向が見られる。

生育環境と生態
Fig.10 寺社内の草地に生育するキバナノアマナ。(兵庫県篠山市・林縁 2009.3/16)
原野的環境に生育し、花茎が倒れ込むことによって少しづつ生育領域を広げているように思われるため、西日本では人為的な保全が不可欠だろう。
ここでは、地元の方々によって充分な保全活動が行われている。

Fig.11 明るい落葉広葉樹林下に生育するキバナノアマナ。(兵庫県丹波市・落葉広葉樹林下 2011.3/29)
アマナは日当たり良い場所を好むが、キバナノアマナはどちらかというと春先に陽光が当たり、夏場は日陰となって湿度が保たれる環境を好むようである。
ここでは植樹されたとみられるカエデ林の林床にシャガ、ニリンソウ、ヤマエンゴサク、セントウソウ、フキ、コタニワタリなどとともに生育していた。

Fig.12 棚田の畦に生育するキバナノアマナ。(兵庫県丹波市・棚田の畦 2011.4/6)
谷津最奥にある棚田の畦斜面にキバナノアマナが生育していた。斜面は北向きで、やや湿潤で多くの蘚苔類によって覆われていた。
同所的にセツブンソウ、キクザキイチゲ、イチリンソウ、ニリンソウ、ラショウモンカズラ、カテンソウ、カキドオシ、フキなどが見られ、
このような棚田の畦という環境にこれほど多くの春植物が生育する例は丹波地方では珍しい。
画像に見られる小さな葉はカテンソウとカキドオシのもの。



最終更新日:11th.Jan.2012

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