コモチシダ | Woodwardia orientalis Sw. | ||
里山・崖地のシダ | シシガシラ科 コモチシダ属 |
Fig.1 (西宮市・渓流に面した岩壁 2009.6/17) 湿った岩壁や斜面などから垂れ下がって生育する大型の常緑性シダ。 根茎は粗大で短く、横にはい、斜面の上から下に伸び、肉質、披針形で褐色の光沢のある鱗片を密生する。 年を経た根茎は40cmにもなり、先端に長い柄のある葉を束生する。 葉は大きなものでは2mにも達し、長三角状楕円形、厚い革質、浅緑色、若葉の時には紅色を帯びる。 葉柄は粗大で、太さは鉛筆ぐらい、淡緑色、表面に縦に溝がある。 葉柄基部には卵状披針形の茶褐色の鱗片をつける。 葉身は2回羽状複葉、羽片は広披針形、鋭尖頭、短柄があり、さらに羽状に深裂し、裂片は披針形〜線形、鋭頭、上部にのみ鋸歯がある。 葉脈は中脈に接して1〜3列の荒い網目をつくり、その外側には遊離脈がある。 胞子嚢群(ソーラス)は中脈に近い網状脈上に生じ、狭長楕円形、胞子嚢群のつく網目は深くくぼむ。 苞膜は永続性の硬い殻状で、胞子嚢群を深く抱き込む。 葉表脈上に多数の子株を生じて、それによっても殖える。 近縁種 : ハチジョウカグマ ■分布:本州、四国、九州、沖縄 ・ 中国、台湾、ヒマラヤ、フィリピン ■生育環境:平地から山地の湿った崖地など。 |
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↑Fig.2 地上部標本。(西宮市・渓流に面した岩壁 2009.6/17) 大型のシダで、標本に手頃な大きさの葉を捜すのにやや苦労する。葉は厚い革質で、光沢があり、浅緑色。 |
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↑Fig.3 羽片。(西宮市・渓流に面した岩壁 2009.6/17) 羽片は広披針形、鋭尖頭、短柄があり、さらに羽状に深裂する。 |
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↑Fig.4 羽片の拡大。(西宮市・渓流に面した岩壁 2009.6/17) 羽片は羽状に切れ込む。裂片は鋭頭で、上部には先のとがった鋸歯がある。 裏面のソーラスがつく部分は凸出する。 |
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↑Fig.5 裂片裏面。(西宮市・渓流に面した岩壁 2009.6/17) 裂片の縁は下向きに巻き、裏面には光沢がなく、白味を帯び、緑色の脈が目立つ。 胞子嚢群(ソーラス)は中脈に近い網状脈上に生じ、狭長楕円形、長さ2〜5mmで、苞膜は硬い。 |
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↑Fig.6 葉柄基部についた鱗片。(西宮市・渓流に面した岩壁 2009.6/17) 鱗片は大きく、卵状披針形で茶褐色。 |
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↑Fig.7 葉面に無性芽を付けた個体。(西宮市・谷筋の林道脇 2012.11/14) 葉表脈上に多数の子株を生じて、それによっても殖える。 |
生育環境と生態 |
Fig.8 露岩に着生して垂れ下がるコモチシダ。(西宮市・斜面の露岩 2010.11/15) 山地の樹林斜面中にある大きな露岩に着生している。 やや湿った場所で、露岩にはミツデウラボシが着生し、周辺にはヤマイタチシダ、ベニシダなどが見られる。 |
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Fig.9 渓流の岩壁に群生するコモチシダ。(西宮市・渓流岩壁 2009.4/5) 摂理に沿って形成された渓流の岩壁にコモチシダが群生していた。 岩壁にはコケが着生し、コウヤコケシノブ、ヤブソテツ、ナガバヤブソテツ、ホラシノブ、シケシダ、シシガシラ、オオバノイノモトソウ、 クサアジサイ、ヨツバムグラ、ナキリスゲなどが生育し、谷全体にシダ類の多い場所である。 |