コシオガマ Phtheirospermum japonicum  (Thunb.) Kanitz
  里山・草地の植物 ゴマノハグサ科 コシオガマ属
Fig.1 (兵庫県姫路市・溜池土堤 2014.10/1)

Fig.2 (神戸市・棚田の土手 2015.9/29)

丘陵〜低山、里山の日当たりよい草地に生育する1年草。
茎は直立し、分枝して高さ20〜70cmになり、短毛が密に生える。
葉は3角状卵形で、羽状に深裂し、長さ2〜3.5cm、幅1〜2cm、下方の裂片は小羽片をつくり、裂片の縁には鋭鋸歯がある。
葉身の基部は切形で4〜10mmの葉柄がある。
花は上部の葉腋ごとに1花ずつつく。萼はやや密に腺毛が生え、花期に長さ1〜6mm、裂片は葉状で尖った鋸歯がある。
花冠は淡紅紫色で長さ2cm、外面には軟毛と腺毛が生える。刮ハは長さ10mm、幅5mm。
種子は多数あり、倒卵形〜楕円形で、数本の縦に走る翼がある。

近縁種 : 

■分布:北海道、本州、四国、九州 ・ 朝鮮半島、中国、アムール
■生育環境:丘陵〜低山、里山の日当たりよい草地など。
■花期:9〜10月

Fig.3 茎。(兵庫県姫路市・溜池土堤 2014.9/23)
  茎は直立し、赤味を帯びることが多く、分枝して、短毛が密に生える。

Fig.4 茎の毛。(長崎県北松浦郡・水田の土手 2009.10/4)
  茎の毛はやや下方に曲がってから開出する。

Fig.5 茎の毛の変異。(神戸市・棚田の土手 2015.9/29)
  曲がった短毛が密に生え、開出する長い腺毛が混じって生えていた。

Fig.6 葉。(長崎県北松浦郡・水田の土手 2009.10/4)
  葉は対生し、3角状卵形、羽状に深裂し、下方の裂片は小羽片をつくり、裂片の縁には鋭鋸歯がある。
  両面ともに短毛と腺毛が混じって生える。

Fig.7 茎上部につく花。(神戸市・棚田の土手 2015.8/29)
  花は上部の互生する葉の葉腋に1個ずつつき、少数の花が比較的長期にわたって順に開花する。

Fig.8 萼。(神戸市・棚田の土手 2015.8/29)
  萼はやや密に腺毛が生え、花期に長さ1〜6mm、裂片は葉状で尖った鋸歯がある。

Fig.9 花冠。(神戸市・棚田の土手 2015.8/29)
  花冠は淡紅紫色で筒状の唇形花で長さ2cm、外面には軟毛と腺毛が生える。
  筒部は太く、先のほうがややふくらみ、上唇は平たいかぶと形で先は2裂して裂片は反り、下唇は上唇より長くて3裂し、
  裂片は開出し、内面に赤斑と2個の隆起した条があり、条の上には短毛が生えている。

Fig.10 横から見た花冠。(長崎県北松浦郡・水田の土手 2009.10/4)

Fig.11 果実期。(兵庫県養父市・林縁草地 2016.10/20)
  果実期の草体は寒気を浴びて赤紫色に色付くことが多い。

Fig.12 熟した刮ハ。(兵庫県養父市・林縁草地 2016.10/20)
  刮ハは萼に半ばなで包まれ、ゆがんだ卵形で先がとがり、腺毛と短毛が生え、熟すと2裂する。

Fig.13 刮ハは長さ1cm内外。(兵庫県養父市・林縁草地 2016.10/20)

Fig.14 種子。(兵庫県養父市・林縁草地 2016.10/20)
  種子は倒卵形〜楕円形、淡黄褐色、長さ0.8〜1mm。

Fig.15 種子の拡大。(兵庫県養父市・林縁草地 2016.10/20)
  種子表面には数本の縦に走る翼があり、その間には網目状の仕切りがある。

Fig.16 種子の翼。(兵庫県養父市・林縁草地 2016.10/20)
  翼には隆条と繊細な網目模様がある。

Fig.17 成長期の草体。(神戸市・休耕田の土手 2013.7/28)
  この頃の草体はヒキヨモギやオオヒキヨモギにやや似る。

生育環境と生態
Fig.12 溜池土堤に生育するコシオガマ。(兵庫県姫路市・溜池土堤 2014.9/23)
コシオガマは近縁のヒキヨモギなどとともに、適度に草刈りされて草原環境が維持されている場所によく見られる。
半寄生植物とされるが、ここでは矮小化したネザサ群落やススキなどが見られ、おそらくそれらのものに半寄生しているのだろう。
この土堤ではヤマサギソウ、カキラン、ヤマトキソウ、ネジバナ、ソクシンラン、ウシクサ、ウンヌケモドキ、トダシバ、メガルカヤ、オガルカヤ、
イトハナビテンツキ、ユウスゲ、イシモチソウ、トウカイコモウセンゴケ、ケフシグロ、ワレモコウ、ミツバツチグリ、ナワシロイチゴ、オトギリソウ、
ヤハズソウ、メドハギ、オミナエシ、ツリガネニンジン、キキョウ、ワラビなどの生育が見られた。

Fig.13 棚田の土手に群生するコシオガマ。(神戸市・棚田の土手 2015.9/29)
適度に草刈りされる棚田最上部の土手にコシオガマの群生が点在していた。
ここでは根際近くに大株となっているが草丈の低いナキリスゲが生育しており、カヤツリグサ科にも半寄生している可能性がある。
同所的にネジバナ、ミヤマナルコユリ、セトウチホトトギス、ススキ、トダシバ、メリケンカルカヤ、ツユクサ、ワレモコウ、キジムシロ、オトギリソウ、オミナエシ、
タチツボスミレ、ツリガネニンジン、オカオグルマ、カセンソウ、ヒロハハナヤスリ、コヒロハハナヤスリ、ワラビ、トラノオシダなどの生育が見られた。

Fig.14 ススキ草原に生育するコシオガマ。(兵庫県養父市・ススキ草原 2016.9/17)
ススキとオオアブラススキ主体のススキ草原の一角で、コシオガマが点在していた。
ここではムカゴソウ、オオバギボウシ、オオナルコユリ、コオニユリ、オトギリソウ、コスミレ、オカスミレ、アケボノスミレ、サクラスミレ、ホコバスミレ、
オオタチツボスミレ、クサボタン、サラシナショウマ、コンロンソウ、フシグロ、ミツモトソウ、ミツバツチグリ、ワレモコウ、ヤマブキショウマ、ウド、シシウド、
ウメバチソウ、ナギナタコウジュ、キセワタ、シオガマギク、オミナエシ、ツリガネニンジン、オハラメアザミ、オカオグルマ、ホクチアザミ、ゴマナ、ゼンマイ、
ワラビ、エゾヒカゲノカズラ、フユノハナワラビなど草原と高原の植物が豊富に見られる。


最終更新日:12th.Dec.2016

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