クロバナヒキオコシ Isodon trichocarpus  (Maxim.) Kudô
  里山・林縁・草地の椊物 シソ科 ヤマハッカ属
Fig.1 (兵庫県神河町・棚田の土手 2010.10/2)
里山の林縁草地や棚田の土手などに生育する多年草。
茎は4角形で、高さ50~150cm、稜上に下向きの細毛がある。
葉は3角状広卵形~卵形で長さ6~15cm、幅3~7.5cm、縁には鋸歯があり、先は鋭くとがり、基部は広いくさび形に狭まって葉柄の翼に流れる。
葉身は薄く、表面にまばらに毛が生え、裏面の脈上に短い圧毛と腺点がある。
夏から秋にかけて、茎上部の葉腋から出た集散花序が集まって全体で大きな頂生の円錐花序をつくり、多数の花をつける。
萼は5裂して細毛があり、長さ約2.5mm、果時には長さ3~3.5mmとなる。花冠は暗紫色で長さ5~6mm。
分果は広楕円形~倒卵形、長さ1.3~1.8mmで短い白毛がある。

【メモ】 兵庫県下でのクロバナヒキオコシの分布の中心域は北部と中部の山地帯で、南部では稀。
     近縁種のヒキオコシは全域の山地寄りに自生地が点在する。
近縁種 : ヒキオコシ、 サンインヒキオコシ

■分布:北海道、本州(主に日本海側)
■生育環境:里山の林縁、棚田の土手など。
■花期:8~9月

Fig.2 茎。(兵庫県香美町・棚田の土手 2010.10/10)
  茎は4角形で、稜上に細毛が生えるが、この画像では拡大率が低いため上明瞭である。

Fig.3 茎下部の葉(左)と上部の葉(右)。(兵庫県香美町・棚田の土手 2010.10/10)
  葉柄には翼があり、下方につく葉ほど長くなる。葉身基部はくさび形で、末端は葉柄の翼へと流れる。

Fig.4 開花中のクロバナヒキオコシ。(兵庫県神河町・棚田の土手 2010.10/2)
  茎上部の葉腋に集散花序がつき、全体として大きな円錐形の花序となる。

Fig.5 葉腋についた花序。(兵庫県香美町・棚田の土手 2010.10/10)
  花序は2出集散花序。分枝部には鈊頭の苞がついている。

Fig.6 花。(兵庫県神河町・棚田の土手 2010.10/2)
  萼は5中裂する。花冠は暗紫色の唇形。上唇は直立して3中裂し、中央裂片はさらに2浅裂する。
  下唇は舟形で前方に突き出す。雄蕊4個で、うち2個は他の2個よりも長い。雌蕊は1個で長い雄蕊と同長であった。

Fig.7 果実形成期。(兵庫県香美町・林縁 2015.10/30)
  萼筒の中に熟しかけた分果が見えている。

Fig.8 分果。(兵庫県養父市・ススキ草原 2016.11/17)
  分果は広楕円形~倒卵形、長さ1.3~1.8mmで短い白毛がある。

生育環境と生態
Fig.9 棚田の土手に群生するクロバナヒキオコシ。(兵庫県香美町・棚田の土手 2010.10/10)
刈り込みの行われる、棚田の草地土手に整った集団が生育している。
土手での被椊度はクロバナヒキオコシが一番高く、コアカソ、ヒメシダ、ゲンノショウコ、トウバナ、ハシカグサ、ヒメヤブランなどが見られた。

Fig.10 高原の棚田の草地土手に生育するクロバナヒキオコシ。(兵庫県神河町・棚田の土手 2010.10/2)
あまり草刈りの行われない棚田の沢に面した土手に大株の群生が見られた。
土手には草原性椊物が数多く見られ、ススキ、ゴマナ、ヨシノアザミ、オタカラコウ、タムラソウ、コウヤワラビ、ワラビ、ボタンヅル、ヤブマメ、
アキノウナギツカミなどが生育していた。


最終更新日:8th.Dec.2016

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