クサボタン | Clematis stans Siebold et Zucc. | ||
山地・林縁・草地の植物 |
キンポウゲ科 センニンソウ属 |
Fig.1 (兵庫県養父市・ススキ草原 2016.8/16) 山地の林縁や草原に生え、茎は直立してつるにならず、高さ1mくらいになる。 茎の下部は木化しており、冬になって大部分は枯れても木化した下部は残る。 葉は長い柄があり、1回3出複葉。小葉は長さ4〜13cm、ほぼ卵形で3浅裂し、先は鋭頭、基部は広いくさび形〜切形、不整な粗い鋸歯がある。 花序は集散状で、茎の先端や葉腋につき、しばしば集まって大きな円錐状となる。 花序には多数の花が下向きにつき、花は狭い鐘状で長さ1.2〜2cm、4枚の萼片は基部が筒状になり、先は反り返る。 外面は短い白毛を密生し、内面は淡紫色。花には全て雄蕊と雌蕊があるが、両方ともに機能があるとは限らず、多くは雄花と雌花に分化している。 雄花の雄蕊は長さ10〜12mm、そのうち葯は4〜5mmで花糸と同長かやや短い。花糸は細くて短い毛がある。 雌花の雄蕊は花糸が広がって葯より幅広く、長く、毛が少ない。痩果は広楕円形〜倒卵形、長さ3〜3.5mm、花柱は15〜20mm、斜上する長毛がある。 ツクシクサボタン(var. austrojaponensis)は葯の長さ3〜3.5mm、花糸は葯のほぼ2倍。四国、九州の石灰岩地。 オオクサボタン(C. speciosa)は小葉の基部は切形〜やや心形。花の長さ2〜2.5cm。四国、九州の石灰岩地。 近縁種 : ツクシクサボタン、オオクサボタン ■分布:本州 ■生育環境:山地の林縁、草地など。 ■花期:8〜9月 |
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↑Fig.2 茎下部は木化する。(兵庫県香美町・林縁 2017.11/17) 木化した茎下部は冬期になっても残る。 |
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↑Fig.3 茎上部。(兵庫県養父市・ススキ草原 2016.8/16) 木化していない茎上部には斜上する短毛が生えている。 |
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↑Fig.4 葉。(兵庫県養父市・ススキ草原 2016.8/16) 葉は対生し、長い柄があり、1回3出複葉。小葉はほぼ卵形で3浅裂し、先は鋭頭、基部は広いくさび形〜切形、不整な粗い鋸歯がある。 |
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↑Fig.5 葉表と鋸歯。(兵庫県養父市・ススキ草原 2016.8/16) 葉表はほとんど無毛。葉質はやや硬くごわつき、脈は凹む。鋸歯の先は急鋭尖頭。 |
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↑Fig.6 葉裏の拡大。(兵庫県養父市・ススキ草原 2016.8/16) 葉裏は淡緑色で、脈は膨出し、脈上には斜上する短毛が生えている。 |
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↑Fig.7 花序。(兵庫県養父市・ススキ草原 2016.8/16) 花序は集散状で、茎の先端や葉腋につき、しばしば集まって大きな円錐状となり、多数の花が下向きにつく。 |
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↑Fig.8 花。(兵庫県養父市・ススキ草原 2016.8/16) 花は狭い鐘状で長さ1.2〜2cm、4枚の萼片は基部が筒状になり、先は反り返る。花には蜜腺がない。 |
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↑Fig.9 花と花柄。(兵庫県養父市・ススキ草原 2016.8/16) 萼片の外面は短い白毛を密生し、内面は淡紫色。花には全て雄蕊と雌蕊があるが、両方ともに機能があるとは限らず、多くは雄花と雌花に分化している。 画像の花からは多数の扁平な雄蕊が出ているが、葯と花糸の境界が不明瞭で、雄花なのか雌花なのか両性花なのか区別できない。 葯が花粉を放出してから萼が反り返る可能性もあり、さらに観察が必要だと感じる。 花柄は斜上する毛が密生して白味を帯びて見え、その基部には苞がある。 |
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↑Fig.10 果実形成途上の花序。(兵庫県養父市・ススキ草原 2016.8/16) 一つの花序に充実した集合果のあるもの、花床だけが残っているもの、1〜数個の痩果をつけたものが混じっている。 上記のことから、雌雄異花という段階までは分化していないようだ。 |
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↑Fig.11 痩果と種髪。1目盛=1mm。(兵庫県香美町・林道脇林縁 2016.10/20) 花柱は痩果が熟す過程で伸張して種髪となり、結実期に草体が枯れかかって乾燥すると、種髪の長毛が斜上気味に開き風に飛ばされる。 |
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↑Fig.12 痩果。1目盛=0.1mm。(兵庫県香美町・林道脇林縁 2016.10/20) 痩果は広楕円形〜倒卵形、長さ長さ3〜3.5mm、褐色、表面には斜上気味の伏毛が生えている。 |
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↑Fig.13 春先に新葉を展開しはじめたクサボタン。(兵庫県養父市・ススキ草原 2017.5/13) この草原では木化した低い茎から3小葉の葉を出すものはクサボタン以外にはなく、この時期でも区別は容易である。 |
生育環境と生態 |
Fig.14 ススキ草原の登山道脇に生育するクサボタン。(兵庫県養父市・ススキ草原 2016.8/16) クサボタンはススキ草原中でも、草刈りが年数度行われる歩道脇や日当たりよい林縁、ススキ草原中の小崩壊地状のススキの分布密度の薄い場所に見られる。 ここでは年に数度草刈りが行われる登山道脇で、茎が半ば刈られながら、低い草丈で花序を上げて開花していた。 ここではススキとオオアブラススキが優占し、優占種が密生する場所ではシシウド、ハナウド、ウド、オハラメアザミ、モリアザミがススキ類よりも大型となって混生するが、 草刈りされる登山道周辺では地表が裸出する場所もあり、ムカゴソウ、ヤマジノホトトギス、ツユクサ、ネバリタデ、オトギリソウ、アケボノスミレ、オカスミレ、タチツボスミレ、 オオタチツボスミレ、ナガバノモミジイチゴ、ゲンノショウコ、ヤマハギ、シオガマギク、アキノタムラソウ、ウツボグサ、クロバナヒキオコシ、コウゾリナ、ヨメナsp.、ヨモギ、 キクバヤマボクチ、オトコヨモギ、ワラビなどが生育している。 ススキ草原中ではススキ類の生育なまばらで草丈の低い乾燥気味の崩壊気味の場所に多く見られ、周辺ではまばらなススキ草原に生育するイタドリ、カワラナデシコ、 ホコバスミレやフモトスミレのどのスミレ類、ウド、ツリガネニンジン、リンドウ、オカオグルマ、シラヤマギク、ホクチアザミなどが見られる。 |