クサノオウ Chelidonium majus  L.
 var. asiaticum  (Hara) Ohwi
  里山・林縁・草地の植物 ケシ科 クサノオウ属
Fig.1 (西宮市・畑地の斜面 2010.5/13)
低地〜低山の里山の草地、林縁、道端などに生育する越年草。
草体はやわらかく、粉白色を帯び、橙黄色の汁液がある。
茎は中空、基部から分枝し、高さ30〜40cm、葉とともに多細胞のやや縮れた毛がある。
葉は互生し、卵形で長さ7〜15cm、幅5〜10cm、先は鈍く、1〜2回羽状に分裂し、鈍頭または円頭の裂片にわかれ、下方の葉には柄がある。
花序は散形状で、葉腋から出た花柄に数花をつけ、花には小花柄がある。萼片は2個、楕円形で、長さ約9mm、外面にまばらにやわらかい毛がある。
花弁はふつう4個、黄色、長さ10〜12mm。刮ハは直立し、長さ3〜4cm、線形で、ややよじれ、柱頭は少し太くなって2浅裂する。

【メモ】 クサノオウは「瘡の王」であり、皮膚疾患や外傷に対して古くから薬草として使用されてきた。
     全草には約21種のアルカロイド成分を含むといわれ、茎などを切ると出てくる黄色い乳液は有毒であり、皮膚の弱い人は
     この汁がつくことによって炎症を起こす。
     本種は比較的肥沃な土壌があって撹乱を受ける道端や農地の脇などに見られることが多く、肥沃な土壌という限定された環境下の
     先駆草本植物といえるのかもしれない。
     西宮市内では記録がなかったが、沖積台地が開鑿されたと思われる畑地の斜面に群生しているのを発見した。
近縁種 : ヤマブキソウ

■分布:北海道、本州、四国、九州 ・ 東アジア
■生育環境:里山の林縁、草地、道端など。
■花期:5〜7月

Fig.2 茎はよく分枝する。(西宮市・農耕地の河川の石垣 2010.5/13)
  茎は葉腋からよく分枝して、枝を斜上しながら広げる。

Fig.3 毛深い草体。(西宮市・農耕地の河川の石垣 2010.5/13)
  茎にはやや縮れた毛が多く、とくに茎上部でそれが目立ち、萼片の外側にも生える。草体は粉白色を帯びる。

Fig.4 茎の中部以下につく葉。(西宮市・畑地の斜面 2010.5/13)
  葉は全体の形状は楕円形で、1〜2回羽状裂葉。裂片の先は鈍頭または円頭。側小片の基部は中脈に沿って上向きに流れる。

Fig.5 花序。(西宮市・農耕地の河川の石垣 2010.5/13)
  花序には散形状に数花がつき、花には小花柄がある。小花柄の基部に苞葉はない。

Fig.6 クサノオウの花。(西宮市・農耕地の河川の石垣 2010.5/13)
  花弁はふつう4個、広倒卵形、黄色、縁には不整な浅い切れ込みがあるものと、全縁のものとがあり、その分布は地域によって異なる。

Fig.7 花の拡大。(西宮市・農耕地の河川の石垣 2010.5/13)
  雌蕊は1個で、子房上位。周囲には多数の雄蕊がつく。

Fig.8 刮ハ。(兵庫県篠山市・里山の道端 2008.5/16)
  刮ハは円柱状線形で直立し、ややよじれ、表面にはまばらに短毛が生える。

Fig.9 春先の偽ロゼット葉。(兵庫県篠山市・里山の道端 2011.3/31)
  明瞭な柄がある羽状裂葉で、頂小片は最も大きく、側小片は下方に向かうにつれて小型となる。

Fig.10 花茎を上げる直前の草体。(兵庫県篠山市・社寺境内の草地 2013.3/26)

Fig.11 茎を切ると橙黄色の汁液が出る。(西宮市・用水路脇 2012.4/24)
  判りやすい特徴だが、汁液には毒があり、皮膚の弱い人はかぶれてしまうので、注意が必要である。

生育環境と生態
Fig.12 畑地の斜面に群生するクサノオウ。(西宮市・畑地の斜面 2010.5/13)
  畑地の北西向きのやや湿った斜面に群生する。
  斜面にはアケビ、ウツギ、ヤブカンゾウ、ムラサキケマン、スイバ、ノゲシ、ウド、イタドリ、ベニシダ、イヌワラビ、オオバノイノモトソウが生育する。
  耕作地は花崗岩の山脈中に開けた洪積台地上にあり、土壌は周辺山域よりも肥沃だと考えられ、水分条件も良い。
  クサノオウは西宮市内ではこの地域だけに局所的に見られ、周辺の花崗岩や流紋岩質角礫凝灰岩の山域には生育が見られない。
  この地域ではナガバノヤノネグサ、ノジスミレなど、市内ではここでしか見られない種も多い。

Fig.13 高原の農地の土手に群生するクサノオウ。(兵庫県香美町・畑地の土手 2011.5/26)
  クサノオウは農地周辺の撹乱を受けて間もない半裸地状の場所に群生を見ることが多い。
  ここもそのような場所と考えられ、ススキやヨメナのほか、オニウシノケグサなどの外来種、イワヨモギなどの国内移入種が生育していた。
  古くからよく管理された土手草地にはあまりクサノオウは出現せず、群生することはない。

Fig.14 用水路脇に生育するクサノオウ。(西宮市・用水路脇 2012.4/24)
  ヤブカンゾウが群生する用水路脇に数個体のクサノオウが生育していた。
  クサノオウは西宮市内ではこの地域だけに局所的に見られ、周辺の花崗岩や流紋岩質角礫凝灰岩の山域には生育が見られない。
  この地域ではナガバノヤノネグサ、ノジスミレなど、市内ではここでしか見られない種も多い。


最終更新日:5th.Apr.2013

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