ミツデウラボシ Crypsinus hastatus  (Thunb.) Copel.
  里山・着生植物 ウラボシ科 ミツデウラボシ属
Fig.1 (西宮市・崖地 2010.6/11)
低地〜低山地の露岩、石垣などに着生する常緑性シダ。
根茎はやや太く、短く横にはい、赤褐色〜茶褐色の線状披針形の鱗片を密生する。
葉はやや混みあってつき、長さ5〜25cm、針金状の硬い光沢のある葉柄をもつ。
葉身は発達の良いものは3裂し、中央の裂片が最も大きく、長さ5〜15cm、幅1.5〜3cm、披針形または長披針形、鋭尖頭。
側裂片は中央裂片よりも短い。葉身表面は緑色、裏面は多少白色を帯び、支脈は明瞭で、縁はやや厚くなり暗色となる。
胞子嚢群はやや中脈よりに並び、黄色。胞子表面にはまばらにトゲを持つ。

【メモ】 光田先生によると、渓流に生育しミツデウラボシの単葉のものに似たものがあるという。
葉形はヒメタカノハウラボシに似るが、より大型で、ソーラスがつく部分の表側にあまり突出せず、ケイリュウウラボシ(仮称)とされている。
未発表ながら、先生のご好意により画像をお借りできたのでFig.7に掲載しました。
近縁種 : タカノハウラボシ

■分布:北海道、本州、四国、九州、沖縄 ・ 朝鮮南部、台湾、中国、フィリピン
■生育環境:低地から低山の露岩、石垣など。

Fig.2 全草標本。(西宮市・崖地 2010.6/24)
  葉はふつう3裂するが、生育のよくないものは単葉となる。葉柄は細く、長い。ソーラスのつく部分の表側は突出する。

Fig.3 根茎と葉柄。(西宮市・崖地 2010.6/24)
  根茎はやや太く、短く横にはい、赤褐色〜茶褐色の鱗片を密生する。
  葉柄は針金状で、細くて硬く、暗褐色〜褐色で、光沢がある。

Fig.4 葉裏。(西宮市・崖地 2010.6/24)
  葉裏は白味を帯び、支脈は明瞭。葉縁は画像のように波打つことがある。
  胞子嚢群は黄色で、円形、苞膜はなく、やや中脈寄りにつき、中脈の両側に1列に並ぶ。

Fig.5 単葉の個体。(兵庫県三田市・社寺の石垣 2011.1/20)
  あまり大きく発達していない株では3裂葉が見られず、単葉となるが、胞子嚢群は葉裏にできる。
  日当たりのよくない場所では単葉で群生していることもある。

Fig.6 若い個体。(神戸市・林道の土崖 2013.1/20)
  広卵形または広倒卵形の葉を持っている。

Fig.7 渓流型のケイリュウウラボシ(光田仮称)/撮影:光田重幸先生。禁転載(京都府・渓流畔)
  葉形はヒメタカノハウラボシに似るが、より大型で、ソーラスがつく部分の表側にあまり突出しない。
  同所的にミツデウラボシも生育し、姿は明らかに異なっているとのことである。
  未発表種ながら、掲載にご快諾頂いた発見者でもある光田重幸先生には感謝申し上げます。

生育環境と生態
Fig.8 農道脇の有馬層群の露頭に着生するミツデウラボシ。(西宮市・崖地 2010.6/24)
流紋岩質凝灰岩の風化後に残った、日当たり良い硬い露頭に着生している。
ほとんど割れ目や表土がなく、乾いた環境であり、他のシダ類の着生は見られない。
充分な光量があるためか、厳しい条件下でも2裂葉、3裂葉する葉が見られた。

Fig.9 広葉樹林中斜面の露岩に生育するミツデウラボシ。(西宮市・露岩 2010.11/15)
山地の樹林斜面中にある花崗岩の大きな露岩に着生している。
岩上はコケむしており、水分条件は充分であり、同じ岩にはコモチシダ(画像下)も着生しているが、日当たりは悪い。
そのためか、単葉のものが多く、3裂するものは少ない。


最終更新日:10th.Nov.2014

<<<戻る TOPページ