ミヤコグサ | Lotus corniclatus (Thumb.) Blume var. japonicus Regel |
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里山・草地の植物 | マメ科 ミヤコグサ属 |
Fig.1 (西宮市・棚田の土手 2010.6/21) |
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Fig.2 (兵庫県姫路市・原野状の草地 2014.5/23) 丘陵〜山地の草地、畦、道端などに生育する多年草。史前帰化植物とされる。 茎はふつう地表をはうか、斜めに立ち上がり、長さ5〜40cm、葉とともにほとんど無毛。 小葉は狭倒卵形、幅3〜10mmで、長さは幅の3倍以下。 花は黄色〜鮮黄色、長さ(9〜)10〜16mm。花序には1〜4花がつき、花序の総苞は3出し小葉と同形だが小さい。 萼は長さ(4〜)5〜8mm、軟毛があり、萼裂片は萼筒よりも長いか、またはまれに同長。 豆果は線形で、長さ2〜3.5cm、熟すと2片に裂け、20個内外の種子を入れる。 種子はほぼ楕円体、褐色で、長軸約1.5mm、短軸1〜1.2mm、厚さ約0.6mm。 近縁種 : セイヨウミヤコグサ、ネビキミヤコグサ ■分布:北海道、本州、四国、九州、沖縄 ・ 朝鮮半島、中国、台湾 ■生育環境:丘陵〜山地の草地、畦、道端など。 ■花期:4〜10月 |
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↑Fig.3 放射状に広がる茎。(西宮市・低山の空地 2010.5/17) 茎はふつう地表をはい、裸地状の場所ではそれが顕著になる。 草ヤブでは他種と競合するため、茎は斜上し、より高く伸びようとする。 |
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↑Fig.4 茎と葉。(西宮市・里山の空地 2010.5/17) 茎は稜があり、葉とともにほとんど無毛、粉白色を帯びる。葉は茎に互生し、葉腋から分枝する。 |
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↑Fig.5 葉。(西宮市・里山の空地 2010.5/17) 葉は奇数羽状複葉で無柄、基部に微小な托葉がある。小葉は狭倒卵形、ふつう5個、最下の2小葉は中軸基部につく。 |
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↑Fig.6 開花中のミヤコグサ。(西宮市・溜池土堤 2010.5/2) 茎頂のごく短い総状花序に1〜4花が螺旋状につき、見た目には輪生しているように見える。 |
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↑Fig.7 ミヤコグサの花。(西宮市・里山の草地土手 2010.7/9) 花は黄色〜鮮黄色の蝶形花。舟弁(竜骨弁)は前方に張り出した2個の側弁に囲まれて見えず、直立する円形の大きな旗弁が目立つ。 花柄に苞や小苞は無い。花序基部につく葉は3小葉となる。 |
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↑Fig.8 豆果。(西宮市・里山の草地土手 2010.7/9) 豆果は円柱状線形、長さ2〜3.5cm、熟すと褐色となる。萼には微軟毛があるが、この程度の倍率ではほとんど判らない。 |
生育環境と生態 |
Fig.9 刈り込まれた溜池土堤に生育するミヤコグサ。(西宮市・溜池土堤 2010.5/2) 草刈りする頻度の高い溜池土堤には、よくミヤコグサが生育しているのが見られる。 ここでは年に数度の刈り込みのほか、野焼きも行われ、地表に広がる性質を持つミヤコグサにとっては良い生育環境となっているようである。 溜池からの滲出水もあるためか、同所的にツルヨシ、ススキ、ネザサ、トダシバ、チガヤ、ミツバツチグリ、ヘビイチゴ、キンミズヒキ、ワレモコウ、 ツボクサ、メドハギ、コマツナギ、ヌマトラノオ、ツリガネニンジン、ヤマハッカ、アキノタムラソウ、アキノキリンソウ、セイタカアワダチソウ、 ノコンギク、ヒメヤブラン、スズメノヤリ、アオスゲ、シバスゲ、クロカワズスゲ、ショウジョウスゲ、ヒカゲスゲ、ゼンマイ、ワラビ、ゲジゲジシダ、 トラノオシダ、シシガシラ、カニクサ、ホラシノブ、ヤワラシダ、スギナ、フユノハナワラビなどの草原性、湿生植物、刈り込まれたハンノキ、 ノイバラ、イヌツゲ、ヤマナラシ、ナツハゼ、ケアクシバなど、里山にふつうに生育する草本が一通り見られた。 |
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Fig.10 棚田の畦に生育するミヤコグサ。(西宮市・里山の棚田 2010.7/5) ミヤコグサは里山の棚田では管理の行き届いた土手に生育していることが多いが、草刈りの頻度の高い畦では湿生植物や畦畔植物と混生する。 ここでは湿生草原や畦に多いウツボグサ、踏み付け草地に多いオオバコ、匍匐茎で地表に広がるチゴザサとともに生育している。 ミヤコグサはこれらの種の中間的な生育特性が見られるため、この場所に定着したと考えられる。 周辺にはニョイスミレ、ヌメリグサ、アゼトウガラシ、ミズギボウシ、トウバナ、ブタナ、ヌマトラノオが見られた。 |
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Fig.11 低山の草地に生育するミヤコグサ。(西宮市・低山の空地 2010.5/17) 低山の切り開かれた場所の裸地状草地に点々と生育している。 ミヤコグサは土壌の栄養状態に関わらず、比較的撹乱の多い半裸地状の場所を好むと考えられる。 道端の空地でも近くに自生地があれば、ニワゼキショウやヒメジョオンといった裸地に多い外来種に引けをとらずによく繁茂する。 |