ミヤマキケマン | Corydalis pallida (Thumb.) Pers. var. tenuis Yatabe |
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里山・林縁の植物 | ケシ科 キケマン属 |
Fig.1 (兵庫県篠山市・溜池畔の礫地 2009.4/27) |
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Fig.2 (兵庫県香美町・用水路脇 2011.5/26) 低山〜山地の林縁などに生育する越年草。西日本に見られるフウロケマンの変種。 基本種のフウロケマンよりも草体はしっかりとしており、大型。 茎は叢生して斜上し、高さ30〜50cm、多汁質。 葉は質薄く、粉白色を帯び、2回羽状に細裂する。 花は多数総状につき、黄色で長さ2〜2.3cm。総状花序は3〜10cm。 苞は披針形〜広披針形でしばしば欠刻がある。花柄は長さ5〜12mm。 刮ハは線形、長さ2〜3cm、湾曲し、いちじるしくジュズ状にくびれる。 種子は黒色、径約1.7mm、円錐状の細突起を密布する。 【メモ】 兵庫県下では基本種のフウロケマンの分布は比較的局所的で、ミヤマキケマンを見る機会が多い。 ミヤマキケマンは中北部では里山周辺で普通に見られるが、西宮市を含む南部では高標高地か冷涼な渓流畔に生育する。 近縁種 : フウロケマン、キケマン ■分布:本州(隠岐島以東) ■生育環境:里山の林縁や河原、山地の林縁など。 ■花期:4〜5月 |
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↑Fig.3 花序。(兵庫県篠山市・果樹園の林床 2010.4/18) 茎は斜上して、先に総状花序をつくる。総状花序は密に多数の花をつける。 画像のものは開花初期であり、まだ花数が少ない時期のもので、この頃は茎が赤味を帯びるものが多い。 |
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↑Fig.4 花序の拡大。(兵庫県篠山市・低山の渓流畔 2008.4/20) 花序に密についた花。苞があって花柄が伸びる。花柄の長さは5〜12mm。萼片は2個で小さく、薄膜質淡色で、縁に小歯牙があり、中肋は突出する。 花は黄色。花弁は4個、上側の1個は下側のものよりも長く、先は褐色を帯び、後方は距となって突き出し、少し下方に曲がる。 側方の2個の花弁は同形で、基部から中部まで上下の花弁に隠され、先端付近だけが露出し、2個は先端で合着する。 |
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↑Fig.5 果実。(兵庫県篠山市・小河川の氾濫原 2008.5/8) 刮ハは線形で湾曲し、いちじるしくジュズ状にくびれる。 刮ハの長さは基本種のフウロケマンが1〜2cmに対し、ミヤマキケマンは2〜3cmとなり長い。 |
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↑Fig.6 ミヤマキケマンの葉。(兵庫県篠山市・果樹園の林床 2010.4/18) 葉は2回羽状に細裂する。葉の質は薄く、粉白色を帯びてやわらかいため、繊細に見える。 |
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↑Fig.7 林床で越冬する個体。(兵庫県篠山市・植林地の林床 2013.2/7) 越年草であるため常緑越冬する。越冬葉(左の大きな葉)の切れ込みは浅くなる。 |
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↑Fig.8 石垣で越冬する個体。(兵庫県篠山市・人家の石垣 2010.12/26) 里山の人家の石垣の間に見られたもので、霜にあたって紅葉していた。 |
生育環境と生態 |
Fig.9 里山の農家の石垣の間に生育するミヤマキケマン。(兵庫県篠山市・農家の石垣 2008.3/26) ミヤマキケマンは石垣の間や河川の護岸の隙間などに生育しているのをよく見掛ける。 キケマン属の植物の種子にはエライオソームが付いているため、それを目当てにアリが巣穴をつくっているこういった隙間に運び込むのだろう。 |
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Fig.10 河川の中州状となった河原に群生するミヤマキケマン。(兵庫県丹波市・河原 2010.5/8) 水量がほぼ一定している渓流の中州で群生していた。ミヤマキケマンはこういった小河川や渓流の河原でもよく見掛ける。 日当たりが良く水分条件の良好なこのような場所に生育するものは、大きな株となって直径1mほどにも広がることがある。 同所的に見られたのはツルヨシ、イタドリの大型の草本のほか、フキ、クサイチゴ、ナワシロイチゴ、オオバタネツケバナ、カキドオシ、ミヤマチドメ、セリ、 シロバナネコノメ、ネコノメソウ、ヤマネコノメソウ、コチャルメルソウ、ムラサキサギゴケ、ヘビイチゴ、ヤハズエンドウ、イボクサ、セイヨウタンポポなど。 この河原では水量の増減が少ないためか、多くの草本がひしめきあうように生育して賑やかだった。 |
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Fig.11 撹乱地に群生するミヤマキケマン。(兵庫県篠山市・クリ園 2015.4/28) 山の小沢から大雨時に土砂が流入して撹乱された場所にミヤマキケマンが群生していた。 撹乱された当年はタケニグサが点在する程度だったが、その翌年にミヤマキケマンをはじめとした草本が生育するようになった。 同所的に生育するものはツユクサ、ヘビイチゴ、ニョイスミレ、ヤマネコノメソウ、コハコベ、ノミノフスマ、ミミナグサ、キンキエンゴサク、タケニグサ、 カキドオシ、ニガクサ、ヨモギ、ハハコグサ、フキ、ノコンギクなどだった。 |