ミヤマノコギリシダ | Diplazium mettenianum (Miq.) C. Chr. | ||
山地・林床・斜面のシダ | イワデンダ科 ヘラシダ属 |
Fig.1 (兵庫県丹波市・社寺の石垣 2011.2/8) |
||
Fig.2 (兵庫県小野市・社寺林の林床 2015.4/12) 山地の湿った林床、特に斜面に生育する常緑性シダ。 根茎は横走し、黒褐色で硬い。葉柄は硬く、葉身と同長または短く、裏面は紫褐色、基部に黒褐色で披針形の鱗片がつく。 葉身は広披針形〜卵状3角形、長さ30〜50cm、幅15〜30cm、暗緑色の薄い革質、1回羽状複葉、鋭尖頭。 羽片は狭披針形または長楕円形、羽状に浅〜中裂し、先は尾状となり鋭尖頭、基部は切形、または鈍形、短柄がある。 裂片は卵形、円頭または鈍頭、鋸歯があり、中脈はジグザグに曲がり、側脈はあまり分枝せず縁に達する。 胞子嚢群は線形、中脈とふちの中間に並び、苞膜も線形で全縁。 【メモ】 本種は最近になって複数の種に細分化され、その区別はかなり難しい。 南方系のシダだが兵庫県下では年間降水量の少ない南部からの記録がほとんどなく、中部以北に記録が多い。 ウスバミヤマノコギリシダやホソバノコギリシダの県下での記録も少ない。 変種にウスバミヤマノコギリシダ(var. tenuifolium)があるが、深山に稀で、羽片は中〜深裂し、裂片は鋭頭。 またホソバノコギリシダ(var. fauriei)は葉幅が狭く披針形〜広披針形、羽片は鋸歯縁または浅裂する。 ノコギリシダ(D. wichurae)は、羽片基部に耳状突起が生じ、葉脈の表面は凹み、葉質はミヤマノコギリシダより厚い。 オオバミヤマノコギリシダ(D. hayatamae)は根茎は短く、葉は直立してやや叢生し長さ1m前後と、大型となる。 近縁種 : ウスバミヤマノコギリシダ、ホソバノコギリシダ、ノコギリシダ、オオバミヤマノコギリシダ ■分布:本州(西日本)、四国、九州、沖縄 ・ 台湾、中国(南部)、フィリピン、インドシナ、タイ ■生育環境:山地の湿った林床、特に林下の斜面など。 |
||
↑Fig.3 地上部標本。(兵庫県丹波市・社寺の石垣 2011.2/8) 葉身は広披針形〜卵状3角形、暗緑色の薄い革質、1回羽状複葉、鋭尖頭。 葉柄は葉身と同長または短く、裏面は紫褐色。 |
||
↑Fig.4 羽片。(兵庫県丹波市・社寺の石垣 2011.2/8) 狭披針形または長楕円形、羽状に浅〜中裂し、先は尾状となり鋭尖頭、脈はほとんど凹まない。 基部は切形または鈍形で、短い柄がある。 羽片の基部前方にはノコギリシダのような耳状突起はない。 |
||
↑Fig.5 裂片。(兵庫県丹波市・社寺の石垣 2011.2/8) 裂片は卵形、円頭または鈍頭、鋸歯があり、中脈はジグザグに曲がり、側脈はあまり分枝せず縁に達する。 |
||
↑Fig.6 羽片の裏面。(兵庫県丹波市・社寺の石垣 2011.2/8) 胞子嚢群は線形、中脈とふちの中間に並び、長いものは湾曲する。苞膜も線形で全縁。 |
生育環境と生態 |
Fig.7 湿った林床の斜面上に生育するミヤマノコギリシダ。(兵庫県丹波市・林床斜面 2011.2/8) 腐植土の堆積した湿った林床斜面にキジノオシダ、オニカナワラビなどとともに生育している。 |
||
Fig.8 岩壁下部の斜面に生育するミヤマノコギリシダ。(兵庫県丹波市・岩壁下部 2014.1/28) 岩壁下部の緩斜面となったかなり日当たりよい場所にミヤマノコギリシダが群生していた。 岩壁にはヌリトラノオやトウゴクシダが見られるが、下部斜面ではススキ、ナガバノモミジイチゴ、ビロードイチゴ、ナワシログミなどが生育している。 |