ムラサキケマン
 (シロヤブケマン含む)
Corydalis incisa  (Thumb.) Pers.
  草地・林縁の植物 ケシ科 キケマン属
Fig.1 (兵庫県篠山市・草地 2010.4/18)

Fig.2 (兵庫県篠山市・クリ園 2013.4/9)

草地や林縁などに普通に見られる越年草。
全体やわらかく、無毛。茎は高さ20〜50cm、いくらか角ばり、ときに分枝する。
葉は葉柄があり、やや3角状卵円形、2回3出複葉で、長さ3〜8cm。小葉は3出状または羽状に細裂し、ややくさび形で欠刻がある。
花序は総状で直立し、長さ4〜12cm。苞はくさび形で欠刻があり、やや密に花がつく。
花は紅紫色、長さ12〜18mmで、萼片は小さく、糸状に分裂する。
刮ハは線状長楕円形でやや幅が広く、長さ約15mm、幅3〜3.5mm、傾いてぶら下がる。種子は黒色平滑で光沢がある。

【メモ】 花が小ぶりで白色のものをシロヤブケマン(f. pallescens)とすることがある(Fig.4,5参照)。

■分布:北海道、本州、四国、九州、沖縄 ・ 台湾、中国
■生育環境:草地、林縁など。とくに農耕地周辺に多い。
■花期:4〜6月

Fig.3 花序。(西宮市・農耕地の草地 2008.4/5)
  花序は総状でやや密に花をつけ、長さ4〜12cm。

Fig.4 ムラサキケマンの花。(兵庫県篠山市・草地 2010.4/18)
  花は紅紫色でよく目立つ。花弁は4個。上弁は下弁よりも大きく、後方に張り出しその先は距となる。
  側弁2個はやや小さく、先端で合着する。

Fig.5 品種のシロヤブケマン。(兵庫県神戸市・林縁 2010.5/21)
  花はムラサキケマンよりやや小さく、花弁の先端部分にのみ紫色の斑紋が残り、あとの部分は白化したもの。

Fig.6 シロヤブケマンの花の拡大。(兵庫県神戸市・林縁 2010.5/21)

Fig.7 刮ハ。(西宮市・林縁 2010.5/13)
  刮ハは線状長楕円形でやや幅が広く、長さ約15mm、幅3〜3.5mm、傾いてぶら下がる。

Fig.8 刮ハの内部。(兵庫県丹波市・落葉広葉樹林下 2011.4/29)
  不稔の種子は少なく、結実率は高い。

Fig.9 種子。(兵庫県丹波市・落葉広葉樹林下 2011.4/29)
  種子は扁平な円形、平滑で光沢があり、長径約1.8mm。

Fig.10 ムラサキケマンの葉。(兵庫県神戸市・林縁 2010.5/21)
  2回3出複葉で、長さ3〜8cm。小葉は3出状または羽状に細裂し、ややくさび形で欠刻がある。

Fig.11 ムラサキケマンの越冬態。(神戸市北区・林道脇 2008.12/14)
  ムラサキケマンは秋に発芽し、冬期は数枚の根生葉を出して常緑越冬する。
  冬期は画像のように葉身に斑の入ったものをよく見掛けるが、春には新葉を出して、斑の入った古い葉は退色する。

生育環境と生態
Fig.12 林縁の半裸地斜面に生育するムラサキケマン。(西宮市・林縁 2010.5/13)
林縁半日陰の適湿な緩斜面に生育している。同所的にコアカソ、ミズヒキ、ヤブジラミ、ヤエムグラ、カキドオシ、ダイコンソウなどが見られた。

Fig.13 多湿の林縁に生育する大きな個体。(西宮市・林縁 2010.5/13)
林縁の斜面下の多湿な場所に大株が点在していた。キクムグラ、ヤマネコノメソウ、タネツケバナ、ギシギシなどが生育していた。

Fig.14 クリ園の草地に生育するムラサキケマン。(兵庫県篠山市・クリ園 2013.4/9)
幼樹が植えられた明るく湿ったクリ園の草地に多数のムラサキケマンが生育していた。
同所的にカテンソウ、ギシギシ、ヤブジラミ、セントウソウ、ヤマネコノメソウ、ヨツバムグラ、ヤエムグラ、カキドオシ、フキなどが生育。


最終更新日:7th.Mar.2014

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