ナガミヒメスゲ Carex oxyandra  (Franch. et Sav.) Kudo
 var. lanceata  (Kuk.) Ohwi
  山地・林縁・草地の植物 

  兵庫県RDB Aランク種
カヤツリグサ科 スゲ属 ヒメスゲ節
Fig.1 (兵庫県但馬地方・低木林の林縁 2014.6/25)
林縁や山頂の草地に生育する多年草。
根茎は斜上する。有花茎は高さ10〜50cm。葉は幅2〜3mmで、有花茎よりも短い。
基部の鞘は濃赤紫色、繊維状に細裂する。苞の葉身は刺状で、上部のものは葉身を欠く。
小穂は有花茎頂部にかたまってつき、頂小穂は雄性、線形、長さ0.5〜1cm、無柄。雄鱗片は濃赤色、鈍頭。
側小穂はふつう雌性で楕円形、長さ0.5〜1cm、無柄。雌鱗片は暗赤紫色、鋭頭。
果胞は卵形、長さ5〜5.5mm、脈はなく、まばらに短毛があり、くちばしは大変長く2〜2.5mm、口部は2歯。
痩果は楕円形、長さ1.5〜2mm。柱頭は3岐する。

ヒメスゲ(C. oxyandra)は果胞の長さ2.5〜3.5mmでくちばしは短い。北海道、本州(西日本は隔離分布)。
サワヒメスゲ(C. mira)は葉幅1〜2mm、雌鱗片は黒紫色で鋭尖頭〜短芒、果胞は楕円形で長さ3〜3.5mm。本州(静岡以西)、四国、九州北部。河岸の岩上。
クロヒナスゲ(C. gifuensis)は葉に短毛があってざらつき、苞は葉耳が長く、雌鱗片は黒褐色で上縁部が歯牙状、果胞は楕円形で長さ3.5〜4mmで有脈。本州、四国、九州。
【メモ】 これまでは兵庫県産のヒメスゲとされてきたものの中には、ナガミヒメスゲが含まれている。
近縁種 : ヒメスゲ、サワヒメスゲ、クロヒナスゲ

■分布:本州(東北地方〜近畿地方)
■生育環境:林縁や山頂の草地など。
■果期:5〜7月

Fig.2 全草標本。(兵庫県但馬地方・風衡地の林縁 2014.6/15)
  根茎は斜上する。有花茎は高さ10〜50cm。葉は有花茎よりも短い。

Fig.3 基部。(兵庫県但馬地方・風衡地の林縁 2014.6/15)
  基部の鞘は濃赤紫色、繊維状に細裂する。

Fig.4 有花茎。(兵庫県但馬地方・低木林の林縁 2014.6/25)
  小穂は有花茎頂部にかたまってつき、頂小穂は雄性、側小穂はふつう雌性。

Fig.5 有花茎の拡大。(兵庫県但馬地方・風衡地の林縁 2014.6/15)
  有花茎には上向きの刺状突起が並び、ざらつく。

Fig.6 苞(矢印)。(兵庫県但馬地方・風衡地の林縁 2014.6/15)
  苞の葉身は刺状で、上部のものは葉身を欠く。

Fig.7 小穂。(兵庫県但馬地方・風衡地の林縁 2014.6/15)
  頂小穂は雄性、線形、長さ0.5〜1cm、無柄。雄鱗片は濃赤色、鈍頭。
  側小穂はふつう雌性で楕円形、長さ0.5〜1cm、無柄。雌鱗片は暗赤紫色、鋭頭。

Fig.8 果胞。(兵庫県但馬地方・低木林の林縁 2014.6/25)
  果胞は卵形、長さ5〜5.5mm、脈はなく、まばらに短毛があり、くちばしは大変長く2〜2.5mm、口部は2歯。

Fig.9 痩果。(兵庫県但馬地方・低木林の林縁 2014.6/25)
  痩果は楕円形、3稜あり、長さ1.5〜2mm。柱頭は3岐する。

Fig.10 開花中の個体。(兵庫県但馬地方・風衡地の林縁 2014.5/30)
  開花中の有花茎は斜上するが、結実するとFig.1のように下垂または倒伏する。

生育環境と生態
Fig.11 風衡地の低木林の林縁で生育するナガミヒメスゲ。(兵庫県但馬地方・風衡地の林縁 2014.5/30)
稜線上の風衡地に成立した低木林下の半日陰地に、ナガミヒメスゲが点々とマット状の小群落を形成している。
ナガミヒメスゲは低木林下の比較的乾いた場所に見られ、それに接してキイトスゲが群生し、より湿った場所ではコハリスゲ、シノブカグマ、
コバノイシカグマ、ミゾシダなどが生育していた。

Fig.12 岩場の隙間を埋めるように生育するナガミヒメスゲ。(兵庫県但馬地方・岩場 2014.6/25)
岩稜上の大きな岩の割れ目に沿って草丈の低いナガミヒメスゲが生育していた。
同じ岩場の岩棚や壁面にはカンサイイワスゲやイワキンバイが生育し、ナガミヒメスゲは平坦な場所でコケモモやオトギリソウなどとともに見られた。

Fig.13 登山道脇の半裸地に生育するナガミヒメスゲ。(兵庫県但馬地方・登山道脇 2014.6/25)
チシマザサ群落と登山道の間の多少伐採の手が入っていると思われる半裸地にナガミヒメスゲが点在していた。
同所的に画像に見えるミヤマニガイチゴの子株のほか、ヌカボ、オトギリソウ、クジュウスゲなどの草本が点在する。


最終更新日:11th.July.2014

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