ナメラダイモンジソウ Saxifraga fortunei  Hook. fil.
  var.suwoensis  Nakai
  山地・岩壁の植物 ユキノシタ科 ユキノシタ属
Fig.1 (西宮市・渓谷の岩壁 2012.10/30)
Fig.2 (西宮市・渓谷の岩壁 2012.10/30)
ダイモンジソウの変種で、渓流などの湿った岩上に生育する多年草。
根茎は短く、葉を束生する。葉身は腎円形、基部は心形で、掌状に5〜7個に中〜深裂し、裂片は卵形、まばらに毛が生える。
花茎は高さ5〜40cm、苞は披針形。萼裂片は斜開し、卵形〜卵状楕円形。
花弁は平開し、ふつう白色。上側の3弁は楕円形で長さ3〜4mm、基部に短い爪がある。
下側の2弁は線状楕円形、長さ4〜15mm。上向きに咲く場合、花弁は5個ともほぼ同長となる。
雄蕊は10個で、裂開直前の葯は橙赤色または暗紅色。子房上位。花柱は開花時には長さ約1mm。
刮ハは卵形で、長さ4〜6mm。種子は楕円状で長さ約0.8mmで、平滑。
近縁種 : ダイモンジソウ、ジンジソウ

■分布:本州(中部以西)、九州
■生育環境:山地の渓流畔などの湿った岩上など。
■花期:7〜11月

Fig.3 根生葉。(西宮市・渓谷の岩壁 2010.11/23)
  葉は根茎から束生する。葉身は腎円形、基部は心形で、掌状に5〜7裂する。
  母種のダイモンジソウの葉は5〜17浅裂することにより区別される。

Fig.4 葉面の拡大。(西宮市・渓谷の岩壁 2010.11/23)
  葉面にはまばらに軟毛が生える。裂片は卵形で、縁にはまばらに鋸歯がある。

Fig.5 葉裏は平滑。(西宮市・渓谷の岩壁 2010.11/23)

Fig.6 ナメラダイモンジソウの花。(西宮市・渓谷の岩壁 2010.11/23)
  花の形態は母種のダイモンジソウと変わらない。
  萼裂片は斜開し、花弁は平開する。雄蕊は10個、裂開直前の葯は橙赤色または暗紅色。

Fig.7 成熟途上の子房(刮ハ)。(西宮市・渓谷の岩壁 2010.11/23)
  花弁は花後枯れても、しばらくの間残存する。花柱は宿存し、刮ハは卵形。

Fig.8 初夏の成長期の集団。(西宮市・渓谷の岩壁 2003.6/5)

生育環境と生態
Fig.9 渓谷の岩壁に生育するナメラダイモンジソウ。(西宮市・渓谷の岩壁 2012.10/30)
渓谷のあまり風化の進んでいない花崗岩質の岩壁の割れ目に生育している。
岩壁には所々から湧水が滲み出しており、ジャゴケの仲間が多く付着している。
ナメラダイモンジソウが生育するあたりでは、ホラシノブ、ヒカゲスゲ、ナキリスゲ、ノガリヤスなどが生育している。

Fig.10 岩壁の高所に生育するナメラダイモンジソウ。(西宮市・渓谷の岩壁 2011.11/9)
西宮市内の六甲山系の渓谷には、人を寄せ付けない岩壁の高所にナメラダイモンジソウの群落が見られる。
ここでも岩壁の湧水の湧出部に群生しており、同所的にはゼンマイ、ヤマイタチシダ、コチョウショウジョウバカマ、ハナニガナ、
ササユリ、ススキ、ノガリヤス、ヒカゲスゲなどが生育している。


最終更新日:3rd.Mar.2014

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