ナルコスゲ | Carex curvicollis Franch. et Sav. | ||
渓流畔の植物 | カヤツリグサ科 スゲ属 クロボスゲ節 |
Fig.1 (兵庫県丹波市・小河川の河畔 2011.4/29) 渓流畔に生育する多年草。 根茎は短く、密に叢生し、匐枝をだす。基部の鞘は葉身がなく、淡褐色〜淡色、ときに光沢がある。 葉は幅2.5〜3.5mm。有花茎は高さ20〜40cm、平滑。苞は鞘がなく、葉身は短い。 頂小穂は雄性、線形で長さ1〜2cm。側小穂は雌性で、2〜6個がやや接近してつき、長さ1.5〜4cm、幅5〜8mm、先が垂れる。 雌鱗片は紫褐色を帯び、果胞の1/2〜1/3長。果胞はやや扁平な3稜形、長さ4〜5mm。 痩果は果胞にゆるく包まれ、卵形で3稜あり、長さ約1.5mm。柱頭は3岐する。 【メモ】 ナルコスゲは兵庫県下では日本海側に分布の中心域があるが、西宮市内北部の渓流畔にも隔離分布している。 近縁種 : ■分布:北海道、本州、四国、九州 ■生育環境:渓流畔など。 ■果期:4〜6月 |
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↑Fig.2 全草標本。(兵庫県丹波市・小河川の河畔 2011.4/29) 根茎は頑強で短く、密に叢生する。草体は軟らかく、葉の縁が少しざらつく。 |
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↑Fig.3 匐枝。(兵庫県丹波市・小河川の河畔 2011.4/29) よく発達した株では、長い地中性の匐枝を伸ばす。 |
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↑Fig.4 基部。(兵庫県丹波市・小河川の河畔 2011.4/29) 基部の鞘は葉身がなく、淡褐色〜淡色、ときに光沢がある。基部には枯れた昨年の葉が残っていることが多い(右の枯れた葉)。 |
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↑Fig.5 有花茎上部の小穂群。(兵庫県丹波市・小河川の河畔 2011.4/29) 頂小穂は雄性、線形、紫褐色。側小穂は雌性、円柱形、2〜6個がやや接近してつく。苞葉は短く、その基部に鞘はない。 画像の曲がった小穂は流水中に浸かって、流れにもまれたためだろうか。 |
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↑Fig.6 雌小穂の拡大。(兵庫県丹波市・小河川の河畔 2011.4/29) 先の長い果胞が密につき、先は少し外曲する。雌鱗片は紫褐色を帯び、果胞の1/2〜1/3長。 |
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↑Fig.7 果胞と鱗片。(兵庫県丹波市・小河川の河畔 2011.4/29) 果胞はやや扁平な3稜形、長さ4〜5mm。雌鱗片は3角状卵形、鋭頭、中肋は緑色。 |
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↑Fig.8 痩果。(兵庫県丹波市・小河川の河畔 2011.4/29) 痩果は果胞にゆるく包まれ、卵形で3稜あり、長さ約1.5mm。 画像は花柱が残存しているが、熟すと上側の約2/3は脱落する。 |
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↑Fig.9 小穂の変異。(兵庫県丹波市・小河川の河畔 2011.4/29) 側小穂(雌小穂)の1つが花茎の中部に長い柄を持って着いている。 側小穂の変異と連動するものか不明だが、雄小穂はきわめて短く、長さ3mm程度であった。 |
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↑Fig.10 開花中の個体。(兵庫県宍粟市・渓流畔岩上 2013.5/8) |
生育環境と生態 |
Fig.11 河畔にタニガワスゲとともに生育するナルコスゲ。(兵庫県丹波市・小河川の河畔 2011.4/29) 山間の集落の間を流れる清流の水際に、タニガワスゲ(後方)とナルコスゲ(手前)が交互に並んで生育していた。 キシュウスズメノヒエやオオカワヂシャなどの外来種の侵入もあるが、河原にはハダカコンロンソウやオドリコソウが咲き乱れていた。 |
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Fig.12 河畔の巨岩の間に生育するナルコスゲ。(兵庫県丹波市・小河川の河畔 2011.5/25) 山間棚田の間を流れる清流の水際の大きな岩の間にナルコスゲが生育していた。 ナルコスゲの株の手前にあった岩は脱落し、その跡にはナルコスゲの根茎から出た細根が堅く絡み合っている。 小河川の河川敷にはオオスズメノカタビラ、ツルヨシ、キンキカサスゲ、クサソテツ、ヨモギ、フキ、ヤブジラミ、ハナウドなどが生育している。 |