ナチシダ Pteris wallichiana  Ag.
  山地・林床・林縁のシダ 
  兵庫県RDB Bランク種
イノモトソウ科 イノモトソウ属
Fig.1 (兵庫県淡路島・林縁 2011.8/8)
湿潤な林床や林縁などに生育する常緑性シダ。
根茎は短く斜上し、葉柄基部とともに鱗片がある。
鱗片は広披針形〜3角状長楕円形、膜質で茶褐色、葉柄は長さ1mに達し、黄褐色〜暗紫色で光沢があり、親指大の太さがある。
葉身は長さ幅ともに1mを超え、基部で3岐し、側枝は後ろ側に短い枝をだすため、全形は5角形状となる。各枝とも2回羽状深裂、草質。
裂片は線状披針形でやや鎌状、長さ1.2〜2cm、幅2〜4mm、鋭頭〜鈍頭、胞子嚢群をつけない辺縁には微鋸歯がある。
裂片は線形、鋭尖頭、鋭鋸歯があり、下部の羽片はさらに少数の裂片に分れる。
胞子嚢群は葉縁に連続して並び、葉縁は裏側に反り返って苞膜となる。

【メモ】 本種は兵庫県では西播磨と淡路島のごく限られた場所に生育するが、シカの忌避植物で近年では増加傾向にある。 

■分布:本州、四国、九州、沖縄 ・ アジアの亜熱帯〜熱帯
■生育環境:湿潤な林床や林縁など。

Fig.2 葉身基部。(兵庫県淡路島・林縁 2011.8/8)
  葉身は基部で3岐し、側枝はさらに後方に短い枝を出す。

Fig.3 羽片と裂片。(兵庫県淡路島・林縁 2011.8/8)
  羽片は2回羽状深裂。裂片は線状披針形でやや鎌状、長さ1.2〜2cm、幅2〜4mm、鋭頭〜鈍頭。

Fig.4 羽片裏面。(兵庫県淡路島・林縁 2011.8/8)
  胞子嚢群は葉縁に連続して並び、葉縁は裏側に反り返って苞膜となる。胞子嚢群のつかない辺縁には微鋸歯が並ぶ。

Fig.5 フィドルヘッド。(兵庫県姫路市・林縁斜面 2014.5/8)
  フィドルヘッドは微白毛が生え緑白色を帯び、小さな三角状卵形〜卵状披針形の茶褐色の鱗片が散在する。
  ナチシダはシカの忌避植物であるが、フィドルヘッドは人間には食用となる。

Fig.6 新葉を展開したナチシダ。(兵庫県姫路市・林縁斜面 2014.5/8)

生育環境と生態
Fig.7 林道脇と枯れ沢の交差する林縁部に生育するナチシダ。(兵庫県淡路島・林縁 2011.8/8)
兵庫県下では南部に局所的に分布するが、シカの忌避植物であるため、食害からまぬがれて分布域を広げつつある。
ここではヒサカキの低木とナチシダ、ナルトサワギクが見られるのみで、ほとんどの場所はシカの食害により裸地となっている。

Fig.8 林縁でオモトとともに生育するナチシダ。(兵庫県淡路島・林縁 2011.8/8)
オモトもシカの忌避植物であり、ナチシダ自生地周辺では必ずシカの忌避植物とともに見られる。


最終更新日:25th.Feb.2017

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