ナツノハナワラビ Botrychium virginianum  (L.) Sw.
  山地・林床のシダ ハナヤスリ科 ハナワラビ属
Fig.1 (兵庫県播磨地方・社寺林の林床 2015.5/21)

低山〜山地の疎林の林床などに生育する夏緑性シダ。根茎は短く、直立、肉質、円柱形、多肉質の根を多数出す。
葉は年に1枚出て、高さ25〜70cm、担葉体の長さ15〜35cm、ふつう葉の高さの半分をこえ、ほとんど無毛。
栄養葉は無柄、3出葉的に3〜4回羽状に細裂、広5角形状、鈍頭〜鋭頭、基部はほぼ切形からやや心形、長さ5〜28cm、幅7〜30cm、
薄い草質でやわらかく、淡い鮮緑色、裏面の中肋上に白毛がある。
羽片は広卵形で基部の小羽片は小さく、大きい小羽片は長楕円形から卵状披針形。
裂片は楕円状形または長楕円形、鋭尖頭、縁は深裂または明確な鋸歯縁。
胞子葉は葉身の基部から分出し、柄は長さ10〜30cm、穂は3〜4回羽状に分岐し、卵状3角形、羽片は有柄で円錐花序的。
胞子の表面には大きいイボ状突起がある。染色体数はn=92の4倍体。

ナガホノナツノハナワラビB. strictum)は栄養葉の小羽片は無柄、裂片は小羽軸に流れる。胞子葉は2回羽状に分岐。胞子の突起は目立たない。
近縁種 : ナガホノナツノハナワラビ
■分布:本州、四国、九州 ・ 北半球の温帯〜暖帯、中南米
■生育環境:低山〜山地の疎林の林床など。

Fig.2 栄養葉。(兵庫県播磨地方・社寺林の林床 2015.5/21)
  葉は年に1枚出る。栄養葉は無柄、3出葉的に3〜4回羽状に細裂、広5角形状、鈍頭〜鋭頭、基部はほぼ切形からやや心形。
  繊細で美しく、薄い草質でやわらかく、淡い鮮緑色。

Fig.3 担葉体。(兵庫県播磨地方・社寺林の林床 2015.5/21)
  栄養葉の下には長く太い担葉体(共通柄)がある。

Fig.4 羽片。(兵庫県播磨地方・社寺林の林床 2015.5/21)
  羽片は広卵形で基部の小羽片は小さく、大きい小羽片は長楕円形から卵状披針形、下方のものには明瞭な柄がある。

Fig.5 小羽片とその裂片。(兵庫県播磨地方・社寺林の林床 2015.5/21)
  小羽片の裂片は楕円状形または長楕円形、鋭尖頭、縁は深裂または明確な鋸歯縁。

Fig.6 胞子葉の柄。(兵庫県播磨地方・社寺林の林床 2015.5/21)
  胞子葉の柄は葉身の基部から分かれ出て、柄は長さ10〜30cm、担葉体よりも細くなる。

Fig.7 胞子葉。(兵庫県播磨地方・社寺林の林床 2015.5/21)
  胞子葉の穂は3〜4回羽状に分岐し、卵状3角形、羽片は有柄で円錐花序的。中軸には翼状となる稜が見られた。

Fig.8 胞子葉の一部拡大。(兵庫県播磨地方・社寺林の林床 2015.5/21)
  栄養葉で言うところの小羽片の裂片の部分が胞子嚢となっている。胞子嚢には短柄があり、熟すと先のほうから2裂して、胞子を出す。

Fig.9 胞子(1目盛=1.6μ)。(兵庫県播磨地方・社寺林の林床 2015.5/21)
  胞子は大きさ25〜30μで、表面には大きいイボ状突起がある。

Fig.10 若い栄養葉のみの個体。(岡山県真庭市・林縁 2010.6/1)

生育環境と生態
Fig.11 社寺林内に生育するナツノハナワラビ。(兵庫県播磨地方・社寺林の林床 2015.5/21)
一部が植林地となっている広い社寺林のネザサの被植の少ない場所に、1個体のみが生育していた。
同所的にチャノキ、アオキ、コクサギなどの幼木、ミヤマフユイチゴ、ヤブコウジ、ジャノヒゲ、ホウチャクソウ、チゴユリ、ウバユリ、サイハイラン、ツルアリドオシ、
ウワバミソウ、コモチイラクサ、アオミズ、カテンソウ、テイカカズラ、セリバオウレン、トチバニンジン、ヤブニンジン、ミヤマカタバミ、アオイスミレ、
ナガバノタチツボスミレ、オオタチツボスミレ、シハイスミレ、エイザンスミレ、アキチョウジ、ニガナ、ミヤマヨメナ、ミヤマカンスゲ、ツルミヤマカンスゲ、ナキリスゲ、
ムサシアブミ、ムロウテンナンショウ、オオハナワラビ、ベニシダ、トウゴクシダ、シケチシダ、シケシダ、ナンゴクナライシダ、イノデ、クマワラビなどが生育する。


最終更新日:11th.July.2015

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