セリバオウレン | Eranthis pinnatifida Maxim. | ||
里山〜山地の植物 | キンポウゲ科 オウレン属 |
Fig.1 (兵庫県篠山市・林縁 2011.3/8) |
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Fig.2 (兵庫県丹波市・植林地の林床 2013.3/12) 低山〜山地の落葉広葉樹や植林地の林床に生える常緑性の多年草。 葉は全て根生し、2回3出複葉で、小葉はやや厚質で光沢があって2〜3裂し、鋭頭、欠刻状の鋸歯がある。 春に高さ7cm程度の花茎を伸ばし、上部に柄のある白色の花を2〜3個つける。花茎に付く葉は退化して苞状となる。 花は横向きに付き、径約10mm。萼片は5〜7個で披針形、白色。花弁は8〜10個でへら形、白色ときに紫色を帯びる。 花には両性花と雄花があり、両性花には数個の心皮がある。袋果は長さ約10mm、柄があって輪状に並び、先端は開いている。 花後、花茎や花柄は著しく伸張して、花茎は根生葉の上から抜き出る。 近縁種 : バイカオウレン ■分布:本州、四国 ■生育環境:低山から山地の林床。半日陰の場所で見ることが多い。 ■花期:2〜3月 |
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↑Fig.3 花茎をあげたセリバオウレン。(兵庫県篠山市・林縁 2009.2/11) セリバオウレンは早春に真っ先に開花する花としてよく知られている。 |
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↑Fig.4 開き始めた両性花(左)と開花中の雄花(右)。(兵庫県篠山市・社寺林林床 2012.3/3) 同一集団内では、ふつう雄花の開花のほうがわずかに早い。 |
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↑Fig.5 両性花。(兵庫県三田市・植林地の林縁 2008.3/22) 両性花には雄蕊と心皮が数個ある。 最外縁に並ぶ白い披針形の花弁状のものは花弁ではなく萼片で、5〜7個つき、ときに薄っすらと紫色を帯びるものがある。 萼片の内側に並ぶのが花弁で、萼片の2/3〜1/2の長さで、8〜10個つく。 花弁の内側には雄蕊が並び、中心部に先端が外曲した柱頭を持った心皮が輪生する。 |
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↑Fig.6 開花初期の雄花。(兵庫県篠山市・林縁 2009.2/11) 雄花には多数の雄蕊が密集してつく。画像は開花がはじまったばかりのもの。 |
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↑Fig.7 花粉放出後の雄花。(兵庫県篠山市・植林地の林床 2008.3/25) 雄蕊は花粉放出後に平開し、花の中央には退化した赤い痕跡的な心皮が並んでいる。 |
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↑Fig.8,9 開いた新葉。(兵庫県篠山市・植林地の林床 2008.4/20) 葉はふつう2回3出複葉。小葉の形は同じ場所に生えるものでも変異に富む。 |
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↑Fig.10 果実形成期。(兵庫県丹波市・雑木林の林床 2008.4/3) 花後、花茎は著しく伸びて、葉よりも上に抜き出る。 |
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↑Fig.11 果実。(兵庫県篠山市・植林地の林縁 2013.4/9) 袋果が輪生する。先端が開口しているがこれは最初から開いており、両側が柱頭となっていた部分。 |
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↑Fig.12 種子。(兵庫県丹波市・栗園の林床 2011.5/25) 種子は楕円形で、淡黄褐色、長さ2mm前後、表面に縦じわがある。 |
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↑Fig.13 若い個体の葉。(兵庫県篠山市・林床 2011.3/8) 若い個体の葉は3小葉で、小葉は中裂する。 |
生育環境と生態 |
Fig.14 植林地と雑木林の境界ギャップに生育するセリバオウレン。(兵庫県篠山市・林床 2011.3/8) 植林地と雑木林の境界部分が木洩れ日のあたる半日陰となり、その林床のニシノホンモンジスゲ群落中に多くの個体が散在していた。 同所的にミヤマフユイチゴ、ニガイチゴ、ビロードイチゴ、ヤマネコノメソウ、ヤブコウジ、マンリョウ、アキノタムラソウ、シュウブンソウ、 ミツバアケビ、キヅタ、タチツボスミレ、ヌカボシソウ、ツルリンドウ、ツルアリドオシ、モトマチハナワラビ、オオハナワラビ、ベニシダ、シシガシラ、 ホソバナライシダ、ホソバトウゲシバ、ナンテンやチャノキ、ヒサカキ、イヌツゲなどの幼木などが見られた。 |
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Fig.15 クリ園と植林地の境界に生育するセリバオウレン。(兵庫県篠山市・クリ園 2011.2/26) ここでは日当たりよいクリ園の林床から植林地内まで無数のセリバオウレンが開花していた。 北向きの山裾に段々状に造られたクリ園の地表はトヤマシノブゴケやサナダゴケ類に覆われており、湿度が高いと考えられる。 セリバオウレンは明るい園内では花茎が低いが、競合種が表れる境界付近では花茎が高くなっている。 ネザサがまばらに生える境界付近ではセリバオウレン群落中に、ミヤマフユイチゴ、ショウジョウバカマ、トウゴクシダ、オオベニシダ、 マルバベニシダ、ホソバトウゲシバ、オオハナワラビなどが見られた。 |
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Fig.16 社寺内の植林地に群生するセリバオウレン。(兵庫県篠山市・社寺林 2012.3/3) 半日陰の刈り込まれたネザサが生える、植林されたスギの林床に足の踏み場もないほど群生している。 他にはツルアリドオシ、ツルリンドウ、ミヤマフユイチゴ、ホソバナライシダ、ヤワラシダ、コバノイシカグマ、トウゴクシダなどが まばらに生育する程度で、セリバオウレンの個体数は非常に多い。 |