シャガ Iris japonica  Thumb.
  里山・林床の植物 アヤメ科 アヤメ属
Fig.1 (西宮市・林縁 2010.4/23)

Fig.2 (兵庫県篠山市・林縁 2013.5/22)

平地〜低山の湿った林下などに比較的普通な多年草。特に里山に多い。
根茎ははい、長い走出枝を出して栄養繁殖し、群生することが多い。
葉は常緑で深緑色、光沢があり、やや肉質で長さ30〜60cm、幅2〜3cm、基部から2列に並んで多数扇状に広がり、1方に傾く。
花茎は高さ30〜70cm、上方で分枝し、多数の花を総状につける。苞葉は葉と同質で、上方に向かってしだいに小さくなる。花は5cm内外でほぼ白色。
外花被片は倒卵形で縁には細歯牙がいちじるしく、中脈に沿って黄橙色の斑紋があり、とさか状の突起となり、その周囲に青紫色の斑点がある。
内花被片はやや小型で長楕円形、先が浅く2裂し、裂片の先は糸状に切れる。
花柱分岐の先も2裂し、裂片は淡紫色を帯び、さらに細かく裂ける。
国内のシャガはふつう3倍体で果実はできない。

【メモ】 シャガは本州以南に普通に見られる草本であるが、生育するのは人家近くが多く、古く中国から渡来した史前帰化植物とされる。
     原産国である中国には2倍体のものがあり、正常に結実が見られるという。
近縁種 : ヒメシャガ

■分布:本州、四国、九州 ・ 中国
■生育環境:低地〜低山、里山の湿った林下など。
■花期:4〜5月

Fig.3 花序。(西宮市・林縁 2010.4/23)
  花序は総状。苞葉をともなって上方で互生分枝する。
  花は分枝した枝先に鞘状苞に包まれてつき、花柄はふつう鞘状苞より長い。

Fig.4 花冠。(西宮市・林縁 2010.4/23)
  花はほぼ白色。他のアヤメ属と同様に外見上は内外花被片と花柱分枝が目立ち、雌蕊や雄蕊は見えない。
  外花被片の黄橙色の斑紋と、青紫色の斑点がアクセントとなって美しい。

Fig.5 花柱分枝の下側にある雄蕊。(西宮市・林縁 2010.4/23)
  雌蕊は花柱分枝の上方裏面にあるが、白色であるため画像でははっきりしない。
  雄蕊は分枝の下側に沿ってつき、葯は白色で線形、外向してつく。

Fig.6 花柱分枝の裏面の柱頭。(西宮市・林縁 2010.4/23)
  花柱分枝を持ち上げて裏返したところ。柱頭は花柱分枝の先が2裂するその基部にある。
  シャガは3倍体であるため、受粉しても果実は形成せず、果実をつけても正常な種子はできない。

生育環境と生態
Fig.7 社寺境内の林下に群生するシャガ。(西宮市・林床 2010.4/23)
寺院内の針葉樹林下に群生しているが、次第にその領域をツルニチニチソウに奪われ、年々生育領域を狭めつつある。

Fig.8 竹林の斜面に生育するシャガ。(西宮市・竹林の林下 2014.4/25)
  日陰の湿った斜面の樹林下に群生することが多い。ここではアオキ、ベニシダ、ヤブソテツなどとともに生育している。


最終更新日:25th.Aug.2014

<<<戻る TOPページ