タニギキョウ | Peracarpa carnosa (Wall.) Hook. fil. et Thomson var. circaeoides (Fr. Schm.) Makino |
||
山地・林床・渓流畔の植物 | キキョウ科 タニギキョウ属 |
Fig.1 (兵庫県丹波市・林道脇 2011.5/7) 低山〜山地の林床、林縁、渓流畔などに生育する多年草。 地下に分枝する細い白色の根茎がある。茎は下部がはい、上部は立ち上がり高さ5〜15cm。 葉は互生し、卵円形で長さ10〜20mm、鈍頭、基部は円く、縁に粗い鋸歯が数個あり、表面は緑色で単毛が散生し、 裏面はふつう白緑色ときに淡紫色を帯び、長さ5〜15mmの葉柄がある。 花は茎頂または上部の葉腋に上向きに1個つく。花柄は細長く、果時には下垂する。 萼の筒部は子房と合着し倒円錐形、先は5深裂し、裂片は3角形。 花冠は漏斗形、白色またはわずかに淡紫色を帯び、長さ5〜8mm、5深裂し、裂片は広披針形。 雄蕊は5個、花糸の基部は広がって白毛があり、花冠に合着しない。 葯は白く線形。刮ハは下を向き、果皮は薄く、ほとんど裂開しない。種子は紡錘形で長さ1.5mm、褐色で光沢がある。 ■分布:南千島、北海道、本州、四国、九州 ・ 朝鮮半島、中国、樺太、カムチャッカ ■生育環境:低山〜山地の林床、林縁、渓流畔など。 ■花期:5〜7月 |
||
↑Fig.2 葉。(西宮市・渓流畔 2010.6/11) 葉は互生し、卵円形で長さ10〜20mm、鈍頭、基部は円く、縁に粗い鋸歯が数個ある。 |
||
↑Fig.3 葉表。(兵庫県篠山市・林縁 2011.5/6) 単毛が散生し、特に葉先に目立つ。 |
||
↑Fig.4 萼と花柄。(兵庫県篠山市・林縁 2011.5/6) 萼の筒部は子房と合着し倒円錐形、先は5深裂し、裂片は3角形、開花時には平開する。 花柄はほとんど無毛で、花が開くにつれて直立し、花はほぼ上向きに開花する。 |
||
↑Fig.5 花冠。(兵庫県篠山市・林縁 2011.5/6) 花冠は漏斗形、白色またはわずかに淡紫色を帯び、長さ5〜8mm、5深裂し、裂片は広披針形。 雄蕊は5個、花糸の基部は広がって白毛があり、花冠に合着しない。葯は白く線形。 花柱は雄蕊の約2倍長、基部にむかってしだいに膨らみ、柱頭は3岐し、外曲する。 雄蕊は花柱を囲んで直立するが、ときに斜開しているものもあり、キキョウのように雄性期と雌性期があるのかもしれない。 |
||
↑Fig.6 花後の刮ハ。(兵庫県丹波市・渓流畔 2013.5/31) 花後、花柄は伸びて曲がり、刮ハは下垂して熟す。刮ハは熟してもほとんど裂開せず、枯れて破れて散布される。 花時にあれほど咲き乱れていたのに、花後に一見するとまったく果実が見られないのは、葉の下に隠れてしまうため。 |
生育環境と生態 |
Fig.7 植林地の湿った林縁で群生するタニギキョウ。(兵庫県南あわじ市・植林地の林縁 2010.4/10) 里山の植林地の湿った窪地に群生していた。兵庫県の最南部である南あわじ市の里山では開花期が早く、4月上旬に早くも開花が始まっていた。 周囲にはドクダミ、フユイチゴ、クサイチゴ、ナガバノタチツボスミレ、コスミレなどが生育していた。 |
||
Fig.8 林道脇で生育するタニギキョウ。(兵庫県丹波市・林道脇 2011.5/7) 山間の谷筋につけられた林道脇に小群生するタニギキョウが点在していた。 シカの食害の激しい地域で、イワヒメワラビ、マツカゼソウ、クラマゴケ、サワギクなどのシカの不嗜好植物や、ネコノメソウ、ニシノヤマクワガタ、 キクムグラ、ヤマムグラ、ニシノヤマクワガタ、ウシハコベなどの小型で地表を匍匐する草本などとともに生育している。 |