タンナトリカブト Aconitum japonicum  Thunb.
 subsp. napiforme  (H.Lev. et Vaniot) Kadota
  山地・草原・林縁の植物

  兵庫県RDB Bランク種
キンポウゲ科 トリカブト属
Fig.1 (兵庫県篠山市・林縁 2010.11/1)

Fig.2 (兵庫県篠山市・溜池畔 2014.10/24)

山地の草原、林縁、疎林などに生育する多年草。
茎は直立するか曲がり、長さ45〜1m、分枝せず、下部をのぞいて屈毛がある。
中部の茎葉は円心形で、長さ6.5〜15cm、幅7.5〜18cm、小葉柄のある小葉に3全裂し、側小葉はさらに2中〜深裂する。
裂片は欠刻し、欠刻片は披針形〜長楕円状披針形。両面脈上には曲がった毛があるか、無毛。
花序は散房状で、花柄は長さ2〜3cm、屈毛がある。花は長さ2.7〜3.6cm、外面には屈毛がある。
雄蕊はふつう無毛。雌蕊は3個あって無毛。

サンインヤマトリカブト(var. saninense)は雄蕊に多少曲がった毛が生じるもの。
イブキトリカブトA. japonicum subsp. ibukiense)は小葉柄がなく、葉は厚く、5中〜深裂し、卵形〜卵状長楕円形の欠刻状の鋸歯がある。
キタヤマブシA. japonicum subsp. eizanense)は小葉柄がなく、花の外面に屈毛と、縁に近い内面にも屈毛と開出毛が混生する。
サンヨウブシA. sanyoense)は小葉柄がなく、茎葉が5〜7中裂し、裂片に粗い鋸歯があり、花の外面はほとんど無毛。
カワチブシA. grossedentatum)は茎はおおむね無毛、小葉柄はなく、茎葉は3深裂して、裂片に卵形の粗い鋸歯があり、花の外面はほとんど無毛。
コウライブシ(ミツバトリカブト)A. jaluense)は花柄の長さ3.5〜4.5cmで開出毛があり、花の外面に開出毛と屈毛が混生する。
近縁種 : サンインヤマトリカブト、イブキトリカブト、キタヤマブシ、サンヨウブシ、カワチブシ、コウライブシ

■分布:本州(近畿以西)、四国、九州 ・ 済州島
■生育環境:草原や林縁、疎林内など。
■花期:9〜10月

Fig.3 茎葉。(兵庫県篠山市・溜池畔 2014.10/24)
  中部の茎葉は円心形で、小葉柄のある小葉に3全裂し、側小葉はさらに2中〜深裂する。

Fig.4 斜上する茎と茎葉。(兵庫県篠山市・林縁 2011.7/15)
  小葉の裂片は欠刻し、欠刻片は披針形〜長楕円状披針形。両面脈上には曲がった毛があるか、無毛、鈍い光沢がある。

Fig.5 茎上部には屈毛が生える。(兵庫県篠山市・林縁 2014.10/7)

Fig.6 花序は散房状。(兵庫県篠山市・林縁 2012.10/11)
  花序は茎頂と葉腋につく。

Fig.7 花柄には屈毛がある。(兵庫県篠山市・林縁 2012.10/11)
  花序は茎頂と葉腋につく。

Fig.8 花。(兵庫県篠山市・林縁 2013.11/4)
  花は長さ2.7〜3.6cm、紫色の花弁に見えるものは萼片で、真の花弁は冑状の頂萼片に覆われて見えない。

Fig.9 花には毛が多い。(兵庫県篠山市・林縁 2014.10/7)
  花の外面には短い屈毛が生え、内面にも開出毛と屈毛が混生している。

Fig.10 花の構造。(兵庫県篠山市・林縁 2014.10/7)

Fig.11 花弁。(兵庫県篠山市・林縁 2014.10/7)
  舷部は距に向かってしだいに細くなる。距は蜜を溜める。

Fig.12 花の核心部。(兵庫県篠山市・林縁 2014.10/7)
  雌蕊群は非常に多数の雄蕊群に囲まれる。雄蕊群の最外のものは、ときに葯を持たない紫色の仮雄蕊(矢印)となる。
  タンナトリカブトは花糸にふつう毛はないが、この集団にはまばらに生えているものが混じっていた。

Fig.13 毛がまばらに生えた花糸。(兵庫県篠山市・林縁 2014.10/7)

Fig.14 雌蕊群。(兵庫県篠山市・林縁 2014.10/7)
  雌蕊は3個あり、ふつう無毛だが、1本毛が生えているのが見える。

Fig.15 果実。(兵庫県篠山市・林縁 2014.11/24)
  果実は袋果で、花柱が突起となって宿存する。中には種子が多数形成される。

Fig.16 種子。(兵庫県篠山市・林縁 2014.11/24)
  袋果の中には2〜4個の種子が形成されていた。

Fig.17 種子の拡大。(兵庫県篠山市・林縁 2014.11/24)
  種子は長さ4.2〜4.8mm。黒褐色で、横方向に断続的な翼が並んでいる。

Fig.18 種子表面の拡大。(兵庫県篠山市・林縁 2014.11/24)
  種子表面には光沢があり、細かい縦の隆条がある。

Fig.19 結実中も開花する。(兵庫県篠山市・林縁 2010.11/1)
  結実中でも次々に花が咲き、開花はおよそ1ヶ月の間は続く。

Fig.20 春に茎を上げ始めた集団。(兵庫県篠山市・林縁 2011.4/21)

Fig.21 春に見られる根生葉。(兵庫県篠山市・林縁 2011.4/21)
  小葉柄は見られず3深裂し、裂片の切れ込みは深い。根生葉は開花時には枯れる。

生育環境と生態
Fig.22 林縁の草地で生育するタンナトリカブト。(兵庫県篠山市・林縁 2011.4/21)
林縁で生育するものは往々にして倒伏するものが多く、ここでも他の草にもたれながら1mほどに伸びていた。
この場所のものはシカの通り道にあるのと、2〜3年置きに蛾類の食害にあい、年々個体数が減りつつある。
シカの食害が激しい場所で、周囲にはマツカゼソウ、タケニグサ、イワヒメワラビ、ニシノホンモンジスゲ、チカラシバなど
シカの忌避・不嗜好植物ばかりが目だっている。


最終更新日:21st.Dec.2014

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