ツリガネニンジン (シラゲシャジン含む) |
Adenophora triphylla (Thunb.) A. DC. var. japonica (Regel) Hara |
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里山・草地の植物 | キキョウ科 ツリガネニンジン属 |
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Fig.1 (西宮市・溜池土堤 2009.11/21) |
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Fig.2 (兵庫県小野市・溜池土堤 2010.11/15) 丘陵〜山地の草地、林縁に普通な多年草。変異が多い。 根茎は太く、茎は高さ40〜100cm、ほとんど分枝せず、有毛または無毛、切ると乳液が出る。 根生葉は円心形で長い柄があるが、開花時にはふつう枯れてなくなる。 茎葉は3〜4輪生、稀に対生または互生し、卵状楕円形、長楕円形、ときに披針形となり、長さ4〜8cm、鋭頭、 基部は鈍形、縁に鋸歯があり、柄はごく短い。 花は茎頂に互生または偽輪生する小枝の先に1〜数個つき、全体が円錐状の花序となり、細い花柄の先に下向きに咲く。 萼裂片は線形で長さ3〜5mm、縁に1〜2個の小鋸歯がある。 花冠は鐘形、淡紫色または白色で長さ15〜20mm、先はやや広がり、裂片は三角状で少し反り返る。 花柱は花冠よりやや突き出し、先が浅く3岐する。 基本種のサイヨウシャジン(var. triphylla)(Fig.18参照)は中国地方、九州、沖縄に分布し、花冠の先がやや狭まってつぼ形となり、花柱が長く突出する。 *近年の遺伝子解析の調査によると、福井県以西のものはほとんどサイヨウシャジンであるとする説がある。 近縁種 : ソバナ、ヤチシャジン ■分布:南千島、北海道、本州、四国、九州 ・ 樺太 ■生育環境:丘陵〜山地の草地、林縁など。里山に多い。 ■花期:8〜11月 |
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↑Fig.3 花は花序に互生または輪生状につく。(西宮市・棚田の土手 2009.11/14) |
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↑Fig.4 花序。(西宮市・棚田の土手 2009.11/14) よく発達した個体の花序の下部では、小花序が輪生しているように見える。 しかし、よく見るとその付け根は1ヵ所から出ておらず、実際には互生している。 花柄は細長く、その先に釣鐘型の花が下向きに咲く。苞は線形。萼筒は鐘状、萼裂片は5個で、線形、開花時に平開する。 |
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↑Fig.4 ツリガネニンジンの花。(兵庫県養父市・棚田の土手 2010.10/11) 花冠の先は5裂してやや広がる。雄蕊は5個あり、葯は線形、内曲する。雌蕊は1個で花冠から突き出し、柱頭は3岐する。 |
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↑Fig.5 花の変異。(兵庫県小野市・溜池土堤 2010.11/15) 花にも変異が多い。花筒がほとんどふくらまず、スラリとした花冠を持つもの。 |
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↑Fig.6 花色の変異。(兵庫県小野市・溜池土堤 2010.11/15) 淡紅色の花冠を持つもの。稀に白色の花冠を持つものも見られる。 |
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↑Fig.7 白花品。(西宮市・水田の土手 2015.9/8) シロバナツリガネニンジン(f. leucantha )とされるもの。 |
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↑Fig.8 開出毛の多い個体。(兵庫県篠山市・用水路脇 2010.7/31) ときに茎や葉裏に白い開出毛が顕著なものに出会うことがある。 このようなものは品種シラゲシャジン(f. canescens)とされるようであるが、県内の標本は特に分けられていない。 生育環境は変わらず、この点ではノアザミに対するケショウアザミと同様である。 ケショウアザミの標本はノアザミと分けられているが、シラゲシャジンが分けられていないのは、研究者によって様々な立場があり、 それが反映されているためである。 こういった細部の違いは人によって捉え方が様々であり、特に変種や品種といった細かな分類はいつでも見解が変わる可能性がある。 |
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↑Fig.9,10 熟した刮ハ。(兵庫県姫路市・農道脇土手 2009.12/21) 刮ハは下向きに熟し、広楕円形で下部に2または4個の突起があり、表面には不定の網目模様がある。 |
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↑Fig.11 種子。(兵庫県姫路市・農道脇土手 2009.12/21) 種子は楕円形で長さ約1.5mm、一方の縁が翼状となることが多い。 |
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↑Fig.12 種子の拡大。(兵庫県加東市・農道脇土手 2014.11/27) 表面には断続する隆条が縦に並んでいる。 |
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↑Fig.13 茎葉。(西宮市・棚田の土手 2009.11/14) 茎には柄のない葉が3〜4輪生、まれに対生または互生し、葉の付き方には変異幅がある。 |
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↑Fig.14 越冬する偽ロゼット。(兵庫県姫路市・農道脇土手 2009.12/21) 越冬する根生葉には長い柄があり、葉身は心円形または腎円形で、不揃いの粗い鋸歯をもつものが多い。 |
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↑Fig.15 野焼き後に出芽した個体。(西宮市・棚田の土手 2011.3/15) 野焼き後に表土が浅く崩落し、裸地状となった斜面から太い新芽が出芽していた。 ツリガネニンジンの根茎は地中に太く伸びるため、野焼きや多少の表土の崩落に遭っても春先に出芽してくる。 |
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↑Fig.16 初夏の伸び始めた個体。(西宮市・棚田の土手 2007.5/8) ツリガネニンジンはソバナとともに俗名「ととき」とされる山菜としても有名である。ちょうどこれくらいのものが美味しい。 画像の草体は毛が多く、シラゲシャジンとされるものである。海岸付近では無毛で葉面の光沢の強いものが見られる。 |
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↑Fig.17 葉の変異。(西宮市・棚田の土手 2010.6/6) 葉の変異幅は広く、ときに披針形〜広線形の葉を3〜4輪生する個体が見られる。 |
生育環境と生態 |
Fig.18 溜池の土堤上に生育するツリガネニンジン。(兵庫県加西市・溜池土堤 2008.9/8) 手入れの行き届いた土堤や棚田などでは多数のツリガネニンジンを見かける。 こういった場所では草地を好むオミナエシ、カワラナデシコ、ワレモコウなどとともに見られることが多い。 |
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Fig.19 刈り込まれた棚田土手に根生葉を広げたツリガネニンジン。(西宮市・棚田土手 2010.11/14) 10月の終り頃に花をつけた個体が多数見られた場所が、最近になって刈り込まれたようで、花茎は見られず、根生葉を土手に広げていた。 地表はハイゴケとウマスギゴケに覆われ、矮小化したネザサ、チガヤ、スズメノヤリ、シバスゲ、アオスゲ、ゲンノショウコ、カタバミ、キツネノマゴ、 コナスビ、ヒメヤブラン、コアカソ、ノコンギク、ミミナグサなどが生育する。 |
参考画像----------サイヨウシャジン---------- |
Fig.20 サイヨウシャジン Adenophora triphylla (Thunb.) A. DC. (長崎県北松浦郡・溜池土堤 2009.10/4) 中国地方、九州、沖縄に分布し、ツリガネニンジンと同様な生育環境に生える。 花筒の先はややすぼまりつぼ型となり花柱は長く突出するが、兵庫県内でもややつぼ型となる花冠を持ったツリガネニンジンを見ることがある。 |