ツルボ | Scilla scilloides (Lindl.) Druce | ||
里山・草地の植物 | ユリ科 ツルボ属 |
Fig.1 (長崎県・農道脇草地 2009.10/3) 里山の日当たり良い草地に多い多年草。 鱗茎は卵球形で長さ2〜3mm、黒い外皮に包まれる。 葉は線形、長さ10〜25cm、幅4〜6mm、表面は浅くくぼみ、厚く柔らかい。 夏から秋にかけて、高さ20〜40cmの花茎を直立し、花が密についた総状花序をつける。 花被片は6個、淡紅色で平開し、長楕円状倒披針形で長さ3〜4mmで、花後も宿存する。 雄蕊は6個で、花被片とほぼ同長、花糸は下部がやや広がり、縁に短毛がある。 子房は上位で、縦に3列に並ぶ短毛がある。刮ハは倒卵形で、長さ4〜5mm。種子は広披針形で長さ4mm前後。 白花品はシロバナツルボ(f. albiflora)とされ、群生するツルボに稀に混じる。 【メモ】 ツルボは2倍体から5倍体、さらに異数体が確認されている。林床には複4倍体が多く、種子稔性が高いという。 ヒトによる撹乱の多い農地周辺では分球による栄養繁殖を行う3〜5倍体が多く、ムカゴをつくるものもあるという。 近縁種 : オニツルボ ■分布:北海道西南部、本州、四国、九州、沖縄 ・ 朝鮮半島、台湾、中国、ウスリー ■生育環境:暖温帯の林縁や里山。 ■花期:8〜9月 |
||
↑Fig.2 開花中の花序。(長崎県・水田の土手 2009.10/3) 花序は総状花序。下のほうから咲き上がり、密に花をつける。 |
||
↑Fig.3 花序の一部拡大。(兵庫県篠山市・棚田の土手 2009.9/19) 花は最初、下側の3個の花被片が開き、次に上3個の花被片が開く。画像右上方の花は下側の花被片が先立って開いている。 花には柄があり、花柄基部には線形の小さな苞がある。雄蕊は6個で花被片とほぼ同長、新鮮な葯は淡黄橙色。花柱は1個。 |
||
↑Fig.4 果実形成期の花序。(兵庫県姫路市・海崖 2012.12/6) 農地周辺のものは結実しない3〜5倍体のものが多い。 ここのものはいずれの個体も結実が見られるので、2倍体もしくは複4倍体だろうか。 |
||
↑Fig.5 種子分散期の花序。(兵庫県姫路市・はげ山の草地 2011.11/28) 枯れた刮ハの果皮は漂白されて膜質となり、裂開した朔室内に黒褐色の種子が見える。 |
||
|
||
↑Fig.6,7 種子。(兵庫県姫路市・はげ山の草地 2011.11/28) 種子は広披針形で長さ4mm前後、黒褐色で光沢があり、表面には縦の溝条が多い。 |
||
↑Fig.8 春に展葉するツルボ。(西宮市・棚田の土手 2009.4/9) 春に一度、束生する赤味を帯びた線形の葉を展開するが、これは光合成を行って鱗茎に養分を蓄えるため。 これらの葉は夏には枯れてしまう。開花期には再び、1〜2枚の根生葉を生じるが、根生葉のない花茎のみの個体もある。 |
生育環境と生態 |
Fig.9 刈り込まれた草地に生育するツルボ。(長崎県・水田の土手 2009.10/3) このような草地に生育するツルボは分球によって、ときに大きな群落をつくる。 ツルボは朝鮮半島や中国などにも分布するが、海外のものは分球によって殖えることはないという。 |
||
Fig.10 棚田の草地斜面に群生するツルボ。(兵庫県神崎郡・棚田の土手 2010.10/2) 分球によって大きな群落となったものだろう。草刈り管理が行き届いており、ちょうどヒガンバナの開花期と一致し、棚田の畦を飾っていた。 |
||
Fig.11 農耕地の草地でアマナの隣で出芽したツルボ。(兵庫県篠山市・農耕地の草地 2011.4/1) 右手前の新芽をほとんど直立して出しているほうがツルボ。アマナとツルボはともによく似た草地環境を好む。 生育個体数はアマナのほうが限られるが、アマナの出る場所ではほぼ必ずといってよいほど夏の終り頃からツルボが開花する。 |