ツチアケビ | Galeola septentrionalis Reichb. fil. | ||
里山・林床の植物 | ラン科 ツチアケビ属 |
Fig.1 (神戸市・竹林の林縁 2013.6/24) |
||
Fig.2 (兵庫県三田市・落葉広葉樹林下 2013.9/6) 落葉広葉樹林またはササ群落中に生育する腐生植物。 全体に褐色を帯び、根茎は太く横走し、大型の鱗片葉をつける。 地上茎は高さ50〜100cm、まばらに分枝し、複総状花序となり、上部は花柄、子房ともに褐色の短毛がある。 花は黄褐色で半開し、萼片、側花弁は長楕円形で、長さ約15〜20mm。 唇弁は広卵形、肉質、萼片より少し短く、縁は細裂し、内面にとさか状の隆条がある。 蕊柱は長くてやや内曲する。葯は2室。果実はバナナ状で下垂し、長さ6〜10cm、径3cm、秋に赤熟する。 【メモ】 本種は菌従属の腐生ランで、ナラタケ属の菌糸を生きたまま取り込んでラン菌根を形成する。 近縁種 : タカツルラン ■分布:北海道西南部、本州、四国、九州 ■生育環境:暖温帯の林縁や林床。 ■花期:6〜7月 |
||
↑Fig.3 地上茎の鱗片葉。(神戸市・竹林の林縁 2013.6/24) 明瞭な葉は退化して、地上茎には鱗片葉が互生してつく。 |
||
↑Fig.4 花序の基部には苞葉がつく。(神戸市・竹林の林縁 2013.6/18) 地上茎はまばらに総状花序をつけ、その基部下側に大きな鱗片状の苞葉がつき、上側には小さく短い苞葉が見られる。 総状花序の花柄基部にも小型の苞葉がついている。 |
||
↑Fig.5 開花しはじめたツチアケビ。(神戸市・竹林 2013.6/18) それぞれの総状花序の下方から開花していく。 |
||
↑Fig.6 花柄子房の部分が様々によじれるようで、上下逆になった花や横向きになった花も見られる。(神戸市・竹林 2013.6/18) |
||
↑Fig.7 花の拡大。(神戸市・竹林 2013.6/18) 花は黄褐色で半開し、萼片、側花弁は長楕円形で、長さ約15〜20mm。 唇弁は広卵形、肉質、萼片より少し短く、縁は細裂し、内側の辺縁にとさか状の隆条がある。蕊柱は長くてやや内曲する。 蕊柱の先端には花粉塊を入れた黄色の葯があり、その下には透明な粘着体があって、画像ではわずかに粘着体が見えている。 |
||
↑Fig.8 横向きに咲いた花。(神戸市・竹林 2013.6/18) 葯の下に透明な粘着体が見えている。 |
||
↑Fig.9 花後約1ヶ月後の姿。(兵庫県三田市・落葉広葉樹林下 2013.7/15) 花柄子房は長く伸びて、赤く色づき始めていた。 |
||
↑Fig.10 充実した果実。(神戸市・竹林の林縁 2013.9/6) この時期のツチアケビが最もよく目立つ。 |
||
↑Fig.11 果実。(神戸市・竹林の林縁 2013.9/6) 果実はバナナ状で下垂し、赤熟、表面には光沢があり、短毛が生えている。 |
||
↑Fig.12 枯れはじめた地上茎。(兵庫県三田市・落葉広葉樹林下 2013.9/30) |
||
↑Fig.13 開花期にも残っていた前年の枯れた地上茎。(神戸市・竹林 2013.6/18) 果実もそのまま枯れた状態で残っていた。散布者はいないのだろうか? |
||
↑Fig.14 切り開いた前年果。(神戸市・竹林 2013.6/18) 枯れた果実は表面が革質のように硬くなっていて、中には無数の種子が詰まっていた。 |
||
↑Fig.15 種子。(神戸市・竹林 2013.6/18) 種子はレンズ状の卵形、褐色で光沢があり、周囲には翼がついている。 種子本体の長さは0.3〜0.5mmで、ラン科のうちでは異例な大きさである。 |
||
↑Fig.16 シカの食害に遭った個体。(神戸市・落葉広葉樹林下 2013.6/15) 画像に入りきらないものも含めて11本の地上茎が全て選択的に食害に遭っていた。 シカが侵入して間もない地域でまだ食害は目立たないが、シカの好物であるアオキも選択的に食害されている。 ツチアケビにはシカを引き寄せる何かがあるのだろうか? |
生育環境と生態 |
Fig.17 竹林の林縁に出現したツチアケビ。(神戸市・竹林の林縁 2013.9/6) 画像手前側にはコンクリート舗装の林道があり、林道を隔てた側には雑木林があって、ナラタケの菌糸束がそちらから伸びてきたのかもしれない。 竹林の林縁は日当たりよいが、適湿な草地状になっており、チヂミザサ、ツユクサ、ヤブヘビイチゴ、カキドオシ、ミゾシダなどが生育していた。 |
||
Fig.18 竹林内で開花したツチアケビ。(神戸市・竹林 2013.6/18) この竹林の林縁部にはソメイヨシノ、アラカシ、クヌギなどの大木があり、ナラタケの菌糸束はそこから来ているかもしれない。 薄暗い竹林だが、ツチアケビは無葉緑植物なので、生育する場所は日当たりはあまり関係ないのかもしれない。 画像中央には倒伏した前年の地上茎が見える。 |