ヤブサンザシ Ribes fasciculatum  Sieb. et Zucc.
  里山・林縁・林床の植物 ユキノシタ科 スグリ属
Fig.1 (兵庫県篠山市・植林地の林縁 2011.5/6)

Fig.2 (西宮市・林縁 2014.10/19)

古生層基岩地域の里山の林縁、山地の疎林の林床に生育する落葉低木。雌雄異株。
幹は下部から分枝して株立ち状となり、高さ1m前後。若枝は灰白色で、軟毛を密生するが、後に無毛となる。
樹皮は縦方向にはがれ、褐色に変わる。冬芽は披針形、鋭頭、鱗片葉は草質で、先は緑色となる。
葉は互生し、短枝に相接してつく。葉柄は長さ2〜3.5cm、短軟毛と下部には羽状の長毛、ときに腺毛がある。
葉身は広卵形、円頭または鈍頭、基部は切形まれに心形、うすい草質で、長さ2〜6(〜7)cm、幅2.5〜6(〜9)cmになり、
掌状に3〜5浅・中裂し、裂片は長方形または卵形で、欠刻状の鈍い鋸歯があり、両面には短い軟毛が生える。
花は春から初夏、短枝の葉腋に束状ににつく。
雄花は3〜6個、花柄は長さ10〜15mmで、中程に関節があり、関節より下部にはふつう短毛がある。
萼は車形で、径6〜8mmあり、萼裂片は5個、広線形、円頭または切形、黄緑色、長さ2.5mm前後、花期には反り返る。
花弁はへら形でごく小さく、長さ約0.7mmで、萼筒の上端につく。雄蕊は5個で、花糸は葯よりも短く、萼筒の上縁につく。
花柱は2裂し、先は頭状となるが、子房は稔性がない。
雌花は2〜4個、花柄は雄花より短く、長さ3〜10mm程で、その他の特徴は雄花と同じ。萼筒は皿形、無毛、裂片は広線形で、長さ2.5mm前後で、反り返る。
花弁は雄花と同様。稔性のない5個の雄蕊がある。花柱は短く、柱頭は2裂し、先は円頭となる。
液果は球形、径7〜8mm、無毛で、赤く熟す。種子は楕円形、わずかに稜があって、長さ約3.5mmで、赤褐色に熟す。
近縁種 : ザリコミ、ヤシャビシャク

■分布:本州、四国、九州 ・ 朝鮮半島、中国
■生育環境:兵庫県下では古生層基岩地域の里山の林縁、山地の疎林の林床など。
■花期:4〜5月

Fig.3 前年枝。(兵庫県篠山市・雑木林の林縁 2011.4/28)
  灰白色で、軟毛を散生し、縦の皮目がある。枝は経年すると褐色を帯び、皮目は縦に裂けて、樹皮ははがれる。

Fig.4 葉は短枝にかたまってつく。(兵庫県篠山市・雑木林の林縁 2011.4/28)

Fig.5 葉。(兵庫県篠山市・植林地の林縁 2011.5/6)
  掌状に3〜5浅・中裂し、裂片は長方形または卵形で、欠刻状の鈍い鋸歯があり、基部は切形まれに心形。

Fig.6 葉表(左)と葉裏(右)の拡大。(兵庫県篠山市・雑木林の林縁 2011.4/28)
  両面ともに短軟毛がまばらに生えるほか、葉縁と裏面脈上にはやや密に毛が生える。

Fig.7 葉柄基部。(兵庫県篠山市・雑木林の林縁 2011.4/28)
  葉柄基部には短軟毛が生えるほか、羽状の長毛、短い腺毛がある。

Fig.8 雄花。(兵庫県篠山市・植林地の林縁 2011.5/6)
  花弁はへら形でごく小さく、長さ約0.7mmで、萼筒の上端の萼裂片の間につく。
  萼は車形で、萼裂片は5個、広線形、円頭または切形、黄緑色、長さ2.5mm前後、花期には反り返る。
  雄蕊は5個で、花糸は葯よりも短く、萼筒の上縁につく。花柱は2裂し、先は頭状となるが、子房は稔性がない。

Fig.9 雌花。(兵庫県篠山市・雑木林の林縁 2011.4/28)
  雌花の花柄は雄花のものに比べて短く、子房が発達する。
  稔性のない5個の雄蕊があり、花柱は短く、柱頭は2裂し、先は円頭となる。

Fig.10 果実期。(西宮市・林縁 2014.10/19)
  果実は秋に赤熟する。

Fig.11 果実。(西宮市・林縁 2014.10/19)
  果実の先には萼筒が残り、その中心には花柱の一部が残っている。

Fig.12 果実の柄の中ほどには関節がある。(西宮市・林縁 2014.10/19)

Fig.13 栽培されるヤブサンザシ。(兵庫県丹波市・畑地 2011.5/25)
  ヤブサンザシは秋に美しい実をつけるため、切花や盆栽用に栽培される。画像のものは切花用のものだろう。

生育環境と生態
Fig.14 植林地の林縁斜面に生育するヤブサンザシ。(兵庫県篠山市・植林地の林縁 2011.5/6)
ヤブサンザシは兵庫県下では古生層の破砕された堆積岩が堆積する山麓や崖錐などで比較的よく見かける。
ここでは植林地の林縁の破砕された堆積岩が堆積する斜面に、タカノツメ、ウワズミザクラなどとともに生育していた。
こういった土壌条件の場所では春植物も生育しており、ヤブサンザシは春植物探査の指標植物となる。
このヤブサンザシの周囲にはヤマエンゴサク(広義)、ニリンソウが群生し、他にキクザキイチゲ、セツブンソウ、イチリンソウ、
アマナ、キバナノアマナが生育している。


最終更新日:29th.Oct.2014

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