ヤブレガサモドキ | Syneilesis tagawae (Kitam.) Kitam. | ||
里山・草地の植物 環境省絶滅危惧TB類(EN)・兵庫県RDB Aランク種 |
キク科 ヤブレガサ属 |
Fig.1 (兵庫県阪神地方・棚田の土手 2014.7/27) |
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Fig.2 (兵庫県阪神地方・棚田の土手 2014.4/26) 日当たり良い草地に生育する多年草。 地下茎は長く這い、茎は高さ1〜1.2m。茎下部の葉は楯状につき、円形で、径24〜30cm、掌状に深裂し、裂片は6〜8個、 しばしば2裂し、終裂片は披針形鋭尖頭、縁にわずかに鋸歯があるか、やや全縁で、幅10〜25mm。 花は散房状花序につき、花序の幅は10〜20cm。頭花は径7〜10mm、花柄は6〜10mm、苞は長さ8〜10mm、総苞片は5個。 小花は9〜11個あり、花冠は淡紅紫色〜白色で、長さ9〜9.5mm。痩果は円柱形、無毛。冠毛は長さ7〜8mm、汚白色。 【メモ】 本種は花茎の葉腋にむムカゴつけることで知られるが、兵庫県のものはほとんどムカゴをつけない。 また、四国のもに較べて葉質が厚く、裂片の幅は狭い。 自生地の棚田は耕作放棄されたため、現在は有志による保全活動により集団が維持されている。 ヤブレガサ(S. palmata)は花が円錐花序につき、終裂片の幅は2〜4cm。本州〜九州。 タンバヤブレガサ(S. aconitifolia var. longilepis)は花茎の葉腋にムカゴはつかず、終裂片の幅は4〜8mm。京都府(絶滅)。 近縁種 : ヤブレガサ ■分布:兵庫、高知、愛媛の各県 ■生育環境:日当たり良い草地など。 ■花期:7〜8月 |
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↑Fig.3 下方につく葉。(兵庫県阪神地方・棚田の土手 2013.7/28) 茎下部の葉は楯状につき、円形で、掌状に深裂し、裂片は6〜8個、しばしば2裂する。 |
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↑Fig.4 裂片。(兵庫県阪神地方・棚田の土手 2013.7/28) 葉質はヤブレガサより厚い。終裂片は披針形鋭尖頭、縁にわずかに鋸歯があるか、やや全縁。 |
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↑Fig.5 茎中部の葉。(兵庫県阪神地方・溜池土堤 2011.9/25) 茎には葉がほとんどつかず、上部では特に少ない。 葉は茎上方に向かうほど裂片が少なくなっていく。 |
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↑Fig.6 花序。(兵庫県阪神地方・棚田の土手 2014.7/27) 花は散房状花序につき、花序の幅は10〜20cm。 |
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↑Fig.7 花序の一部拡大。(兵庫県阪神地方・棚田の土手 2013.7/28) 頭花は径7〜10mm、花柄は6〜10mm、苞は長さ8〜10mm、総苞片は5個。 花は淡紅紫色のものと白色のものがあり、画像は淡紅紫色のもの。 |
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↑Fig.8 頭花。(兵庫県阪神地方・棚田の土手 2013.7/28) 小花は9〜11個あり、花冠は長さ9〜9.5mm。花の間からは束になった冠毛の先が見えている。 |
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↑Fig.9 訪花したハキリバチの仲間。(兵庫県阪神地方・棚田の土手 2014.7/27) 訪れる昆虫類は多いが、この個体は結実しない個体。結実する個体としない個体がはっきりと分かれている。 結実しないものは倍数体か何かなのだろうか? |
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↑Fig.10 結実した花序。(兵庫県阪神地方・棚田の土手 2013.11/16) 花茎は冬期にも倒伏しながら残っており、結実した種子も冠毛をつけたまま残っている。 結実率はあまりよくない。冠毛は長さ7〜8mmで汚白色。 |
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↑Fig.11 幼植物。(兵庫県阪神地方・棚田の土手 2014.4/26) 発芽当年は径1.5cm程度の1個の腎円形の単葉を出す。画像では2本の幼植物が出芽している。 |
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↑Fig.12 若い個体。(兵庫県阪神地方・棚田の土手 2013.11/16) 発芽翌年からは葉に切れ込みが入るようになる。 |
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↑Fig.13 春先の出芽。(兵庫県阪神地方 2014.4/26) 展葉当初は葉は軟毛に覆われるが、生長するにつれて脱毛する。 |
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↑Fig.14 ヤブレガサ(右)との葉の比較。(兵庫県阪神地方 2013.7/28 9/6) ヤブレガサと較べると裂片の幅は狭い。 |
生育環境と生態 |
Fig.15 棚田の土手に生育するヤブレガサモドキ。(兵庫県阪神地方・棚田の土手 2014.7/27) 所有者の高齢化により耕作放棄された棚田の土手に、多数のヤブレガサモドキが点在している。 かつては周辺の数ヶ所でも見られたようだが、耕作放棄によりその多くが消滅。ここでは有志による草刈り、クズの除去が行われて集団が維持されている。 ネザサとススキが主体の草地だが、ヤブレガサモドキはススキなどに寄りかかるように花茎を上げるため、ススキは刈り残してある。 この土手では画像中に見えるヤマノイモ、ツルマメ、ナツフジ、クサイチゴ、ナワシロイチゴ、ウツギ低木、ヘクソカズラ、ツルニンジン、アカネ、 アキノタムラソウ、ヨシノアザミ、ヨモギ、セイタカアワダチソウ、シケシダのほか、カモジグサ、ナルコビエ、ミツバツチグリ、オヘビイチゴ、 ノイバラ、ワレモコウ、ノブドウ、オトギリソウ、コシオガマ、キツネノマゴ、クルマバナ、ヤマハッカ、ヒキオコシ、ツリガネニンジン、ノアザミ、 ヒヨドリバナ、サワヒヨドリ、ワラビ、ゼンマイなどが生育している。 |
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Fig.16 溜池土堤に生育するヤブレガサモドキ。(兵庫県阪神地方・溜池土堤 2011.9/25) この場所も耕作放棄された場所で、有志により管理されている。多数の花茎が上がっているが、ここのものは不稔である。 ここでは周辺にモロコシガヤやヒメヨモギなどの稀少種が生育し、同様に残されている。 |