ヤマシロネコノメ Chrysosplenium pseudopilosum  Wakab. et Hir. Takah.
   var. divaricatistylosum  Wakab. et Hir. Takah.
  山地・渓流の植物 ユキノシタ科 ネコノメソウ属
Fig.1 (京都府・渓流畔 2009.3/5)
トウノウネコノメの変種で、京都府の限られた山地の渓流畔に生育する多年草。1999年に新記載された。
茎は暗赤紫色を帯び、高さ5〜10cm、軟毛が目立ち柔らかい。
根生葉は花期にも見られ、卵形〜円形。茎葉は対生してつき、丸い鋸歯があり、まばらに軟毛が生える。
花序は花茎に頂生、花茎は上部で2岐し、その後2出集散花序となり、各花は接近してつく。
ひとつの花は径約5mm、萼裂片は黄色〜淡黄緑色、外側には軟毛があり、直立、先はほぼ切形。
雄蕊8個で、萼裂片より少し長く、葯は黄色。花盤は淡黄緑色で、花柱は2個で直立し、嘴状にとがる。

この仲間には非常に似たものが多く、主に花の細部を調べることによって区別する。
以下のものはヤマシロネコノメに似て、萼片が黄色のタイプのもの。
トウノウネコノメC. pseudopilosum)…ヤマシロネコノメの母種。雄蕊は萼裂片よりも少し長く、萼裂片は直立し、外側は無毛。分布:岐阜、愛知。
コガネネコノメソウC. pilosum var. sphaerospermum)…雄蕊が萼裂片より短く、萼裂片は円頭、葉の鋸歯は5〜10個。分布:本州(関東以西)四国、九州。
オオコガネネコノメソウC. pilosum var.fulvum)…コガネネコノメソウより大型で、全体に毛が多く、葉の鋸歯は9〜17個。分布:本州、四国、九州。
ツクシネコノメソウC. rhabdospermum)…萼裂片は淡緑色で直立、円頭。雄蕊は萼裂片と同長か長い。分布:四国(高知県)、九州。
キバナハナネコノメC. album var.flavum)…シロバナネコノメソウの変種で萼が黄色のもの。萼裂片は長卵形で鈍頭。分布:岐阜、愛知、静岡、山梨。
近縁種 : トウノウネコノメ、コガネネコノメソウ、オオコガネネコノメソウ、ツクシネコノメ

■分布:京都府
■生育環境:山地の渓流沿い。
■花期:2〜4月

Fig.2 花茎。(京都府・渓流畔 2009.3/5)
  花茎は暗赤紫色を帯び、軟毛が著しい。
  画像の個体は開花途上のもので、まだ萼裂片は緑色に近く、雄蕊は伸びきっていない。

Fig.3 根生葉と茎葉。(京都府・渓流畔 2009.3/5)
  根生葉は卵形〜やや扇状の円形、裏面は赤紫色を帯びるものが多い。開花時にも根生葉が残っている株と、腐りかけている株とがあった。
  茎葉は対生してつき扇状で、軟毛を散生し、丸い鋸歯があり、鋸歯の先はわずかに切れ込む。基部はくさび形。葉柄は比較的長く明瞭。

Fig.4 花序。(京都府・渓流畔 2009.3/5)
  花序は花茎に頂生する。花茎頂部で2岐した後、2出集散花序となる。
  苞葉は外側のものが扇状広倒卵形で鋸歯はおおむね5個、内側のものが倒卵形で鋸歯は3個、どちらもの鋸歯も乱れがちでやや不明瞭となる。

Fig.5 ヤマシロネコノメの花。(京都府・渓流畔 2009.3/5)
  花は互いに接してつき、径約5mm。萼裂片は直立し、方形にちかい釣鐘型で先は切形、黄色〜淡黄緑色、外側に軟毛を散生する。
  雄蕊は8個で萼裂片よりも少し長い。葯は黄色。花柱2個は直立して嘴状にとがる。

生育環境と生態
Fig.6 渓流畔の斜面に点々と集団をつくるヤマシロネコノメ。(京都府・渓流畔 2009.3/5)
日当たりのよい斜面の水際から上部1m程度の範囲内で生育していた。下部ではコチャルメルソウやオオバタネツケバナが混じり、
上部ではセントウソウ、ミヤマカタバミなどが混じる。
右上にわずかに見える叢生した線形の草体はオオキツネノカミソリで、そこから上部にはまばらに群生している。

Fig.7 水際の岩上で群生するヤマシロネコノメ。(京都府・渓流畔 2009.3/5)
このような場所の群落は多数の花茎をあげていた。

Fig.8 岩上で蘚苔類に埋もれて開花した小型の個体。(京都府・渓流畔 2009.3/5)




最終更新日:6th.Mar.2009

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