ユキノシタ | Saxifraga stolonifera Meerb. | ||
山地・林床・岩上の植物 | ユキノシタ科 ユキノシタ属 |
Fig.1 (西宮市・林縁 2010.6/11) |
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Fig.2 (兵庫県朝来市・社寺林下 2011.6/19) 丘陵〜山地の湿った岩上に生育する多年草。 紫色で糸状の走出枝を多数出して、先端に新芽を生じ栄養繁殖する。 茎や葉には赤褐色の粗い毛を生じる。根茎は短く、葉を束生する。 根生葉は長さ3〜10cmの柄があり、葉身は腎円形で基部は心形、表面は暗褐色〜緑色で、脈に沿って白斑があり、裏面は暗紫色を帯びる。 花茎は高さ20〜50cm。花序は円錐形の集散花序で、多数の花をややまばらにつき、花序の枝には紅紫色の腺毛を生じる。 苞は卵形〜披針形。萼裂片は卵状長楕円形、長さ3〜4mm、花時に反曲する。 花弁は花時に開出し、白色、上側の3花弁は卵形、長さ約3mm、鋭頭、基部は浅心形となり、短い爪があり、上半部はふつう淡紅色を帯び、 ふつう2対の濃紅色と1個の濃黄色の斑点がある。下側の2花弁は披針形で、長さ1〜2cm、大きさはやや不同。 雄蕊は10個で、長さ約5mm。花糸は先端部がやや広がる。裂開直前の葯は紅色。子房の上部は濃黄色の花盤に囲まれる。 刮ハは卵円形で長さ約4mm。種子は長円状、長さ約0.5mm、微細な瘤状突起がある。 【メモ】 ユキノシタは薬用・食用として、かつては庭先の湿った場所などに盛んに植栽されていた。 そのため、植栽の逸出であるか、もとから自生していたものか判断しにくい集団も多い。 市内の人家や社寺周辺に見られるものなどは、栽培逸出だろうと考えている。 近縁種 : ハルユキノシタ ■分布:本州、四国、九州 ・ 中国 ■生育環境:丘陵〜山地の湿った岩上など。 ■花期:5〜6月 |
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↑Fig.3 葉。(西宮市・砂防ダム堰堤 2010.6/17) 根生葉は長さ3〜10cmの柄があり、葉身は腎円形で基部は心形、表面は暗褐色〜緑色で、脈に沿って白斑があり、粗い毛が生える。 |
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↑Fig.4 花序。(西宮市・林縁 2010.6/11) 花序は円錐形の集散花序で、多数の花をややまばらにつき、花序の枝には紅紫色の腺毛を生じる。 花序枝は中軸から互生分枝し、その基部には苞がつく。苞は卵形〜披針形。 |
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↑Fig.5 花序の上部拡大。(西宮市・林縁 2010.6/11) 満開の花序。花序枝には腺毛が多い。 |
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↑Fig.6 花序枝の腺毛と萼。(西宮市・林縁 2010.6/11) 萼裂片は卵状長楕円形、腺毛と粗い毛が生え、花時に反曲する。 |
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↑Fig.7 ユキノシタの花。(西宮市・林縁 2010.6/11) 花弁は花時に開出し、白色で、上側の3花弁は短く、下の2花弁は長くやや不同長。 上側の3花弁は基部は浅心形となり、上半部はふつう淡紅色を帯び、ふつう2対の濃紅色と1個の濃黄色の斑点がある。 |
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↑Fig.8 春先に展開する新葉。(西宮市・社寺の石段 2011.3/27) ユキノシタは冬期には小さな葉を赤紫色に染めて常緑越冬する。 画像の右下に見える2枚の紫色を帯びた葉は越冬したもの。緑色の鋸歯の目立つ葉は新葉。 |
生育環境と生態 |
Fig.9 河川の石垣に生育するユキノシタ。(西宮市・河川石垣 2010.6/11) 河川脇の小道の湿った石垣のあちこちにユキノシタが生育し開花していた。 石垣には他にヤブソテツ、コアカソ、マメヅタ、コバノヒノキシダ、ヌカボシソウ、ボタンヅル、ドクダミなどが見られた。 |
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Fig.10 社寺林の小川の斜面に群生するユキノシタ。(兵庫県朝来市・社寺林下 2011.6/19) 比較的多湿な社寺林林縁の小さな沢沿いの斜面で、群生したユキノシタがちょうど開花全盛を迎えていた。 斜面にはユキノシタとともにコウモリカズラが群生し、ヤブマオ、ウワバミソウ、ハグロソウ、ヤブハギ、ミヤマフユイチゴ、ウバユリ、 シオデ、ヤマアジサイ、サイゴクイノデ、イヌワラビ、ミゾシダなどが生育していた。 時期的にコウモリカズラも開花期のはずであるが、日照が足りないのか、全く花序が見られなかった。 |