近似種の形態比較 1 −タヌキモとイヌタヌキモの殖芽比較−
昨年の冬、湘南さんからタヌキモ(東北地方産)を分けて頂きました。殖芽の形態的特徴はよく似た種との区別点として、ときに決定的な役割を持つことがあります。
フサモとオグラノフサモ、イトモとツツイトモなどが挙げられますが、タヌキモとイヌタヌキモも殖芽の形態が区別する上で重要となります。
頂いた草体はすでに大きな殖芽を茎頂に形成していたので、イヌタヌキモの殖芽との比較観察をしてみました。
画像は左側がタヌキモのもの、右側がイヌタヌキモのものです。 貴重な草体をお分け頂いた湘南さんにお礼申し上げます。
タヌキモ殖芽
タヌキモの殖芽
イヌタヌキモ殖芽
イヌタヌキモの殖芽
生育環境の差からくるものなのかもしれないが、第一印象としてはタヌキモの殖芽はかなり大きいと感じた。
これまで、沢山のイヌタヌキモの殖芽を眼にしたが、タヌキモの殖芽ほどの大きさのものは見たことがない。
全体の形状は文献どおり、タヌキモは球状に近く、イヌタヌキモは長楕円形である。

タヌキモ殖芽の羽片
タヌキモ殖芽の羽片
イヌタヌキモ殖芽の羽片
イヌタヌキモ殖芽の羽片
タヌキモの羽片には明瞭な中軸が見られるが、イヌタヌキモの羽片では中軸状となる部分がない。
小羽片の先はイヌタヌキモが鋭尖頭となるのに対し、タヌキモは鈍頭となり小刺毛が多い。
タヌキモの最下の2個の小羽片の基部付近には、展開すると捕虫嚢が生じるのではないかと考えられる小さな突起がある。

タヌキモ成葉の羽片上部
タヌキモ成葉の羽片上部
イヌタヌキモ成葉の羽片上部
イヌタヌキモ成葉の羽片上部
それぞれの成葉の小羽片の先端付近を比較してみた。少し画像が見難いが御寛恕の程を。
葉縁の小刺毛はイヌタヌキモが1〜2個に対して、タヌキモは2〜3個生じ、小刺毛が生える間隔はタヌキモのほうが短い。
●浮遊植物 イヌタヌキモ  (タヌキモの単独ページはまだありません。)

【参考文献】
角野康郎, 1994. タヌキモ科タヌキモ属. 『日本水草図鑑』 148〜155. 文一統合出版
沖田貞敏, 2008. 秋田県産大型タヌキモ類3種の花茎断面の観察. 水草研究会会報 90:1〜7.

最終更新日:26th.Mar.2010




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