ミスミイ | Eleocharis acutangula (Roxb.) Schult. | カヤツリグサ科 ハリイ属 |
抽水植物 環境省絶滅危惧ⅠB類(EN)・兵庫県RDB Aランク種 |
![]() |
||
Fig.1 (兵庫県播磨地方・溜池 2013.11/4) 溜池、水田、休耕田などで抽水状態で群生する稀な多年草。 泥中にやわらかくて細長い匍匐根茎を横走し、節から有花茎を叢生する。 有花茎はやわらかく、高さ30~80cm、幅2~4mm、鋭い3稜形で、中実。基部の鞘は淡色~赤褐色、やわらかく腐食しやすい。 小穂は円柱形で、長さ1.5~4cm、鋭頭、淡緑色で結実後はわら色。 鱗片は卵形、長さ4~8mm、鈍頭で、縁はわずかにざらつく。 痩果は倒卵形、長さ約2mm、淡褐色、表面には格子模様がある。柱基はやや圧扁された3角形状。 刺針状花披片は6本、痩果よりも長く、まばらに下向きの剛毛をつける。柱頭は3岐する。 クログワイ(E. kuroguwai)は有花茎が円柱形で単菅質。鱗片は狭卵形。柱基は円盤状の付属体となる。柱頭は2岐。 イヌクログワイ(シログワイ)(E. dulcis)は有花茎が円柱形で単菅質。鱗片は広倒卵形で先は切形にちかい円頭。柱基は円盤状の付属体となる。柱頭は2岐。 トクサイ(E. ochrostachys)は有花茎が円柱形で、小穂の長さ1~2.5cm。痩果表面には縦条があり、刺針状花披片は痩果の約2倍。柱頭は3岐。南西諸島に分布。 近似種 : クログワイ、 イヌクログワイ、トクサイ ■分布:本州(栃木・千葉県以西)、四国、九州、沖縄 ・ アジア、オーストラリア、熱帯アメリカ ■生育環境:溜池、水田、休耕田など。 ■果実期:8~11月 ■西宮市内での分布:市内では見られない。全国的に稀な上、溜池の埋め立て・改修で激減し、兵庫県でもわずかに1ヶ所の溜池で残存するのみ。 |
||
![]() |
||
↑Fig.2 全草標本。(兵庫県播磨地方・溜池 2013.11/4) 有花茎はやわらかく、高さ30~80cm、幅2~4mm。根茎の節から叢生する。 抽水状態の泥中にある基部付近は非常に軟弱で、折れ曲がりやすかった。 |
||
![]() |
||
↑Fig.3 根茎。(兵庫県播磨地方・溜池 2013.11/4) 匍匐根茎の節から有花茎を叢生するが、画像では解りにくい。右に突き出ているのは前年の古い匍匐根茎。 |
||
![]() |
||
↑Fig.4 有花茎は3稜形。(兵庫県播磨地方・溜池 2013.11/4) |
||
![]() |
||
↑Fig.5 有花茎の横断面。(兵庫県播磨地方・溜池 2013.11/4) 左は茎中部。右は根茎から10cm上の部分。右のものは泥中にあるためやわらかく、切断する際に押しつぶされた。 茎は中実で、幅は2~4mm。 |
||
![]() |
||
↑Fig.6 小穂。(兵庫県播磨地方・溜池 2013.11/4) 小穂は円柱形で、長さ1.5~4cm、鋭頭、淡緑色で結実後はわら色。 |
||
![]() |
||
↑Fig.7 小穂の拡大。(兵庫県播磨地方・溜池 2013.11/4) 鱗片は卵形、長さ4~8mm、鈍頭。ルーペで観察すると鱗片の縁はわずかにざらついている。 |
||
![]() |
||
↑Fig.8 雌性期から雄性期へ。(兵庫県播磨地方・溜池 2014.10/11) 小穂が水面上に出るとすぐに雌性期に入って3岐した柱頭が伸び、水面から5cmも上に出ると雄性期に入って花粉を放出する。 |
||
![]() |
||
↑Fig.9 葯。(兵庫県播磨地方・溜池 2014.10/11) 葯は線形で長さ3~3.3mm。 |
||
![]() |
||
↑Fig.10 痩果。(兵庫県播磨地方・溜池 2013.11/4) 痩果は倒卵形、淡褐色。柱基はやや圧扁された3角形状。刺針状花披片は痩果よりも長い。 |
||
![]() |
||
↑Fig.11 痩果の拡大。(兵庫県播磨地方・溜池 2013.11/4) 痩果は長さ約2mm、表面には横長の格子模様がある。刺針状花披片にはまばらに下向きの剛毛がある。 |
||
![]() |
||
↑Fig.12 花柱のついた痩果。(兵庫県播磨地方・溜池 2013.11/4) 柱頭は3岐するが、画像のものは2本がかさなっていて、少し解りにくい。 |
生育環境と生態 |
![]() |
||
Fig.13 溜池で群生するミスミイ。(兵庫県播磨地方・溜池 2013.11/4) 山間の自然度の高い溜池の水際で、抽水状態で群生している。 画像では手前(陸地寄り)にカンガレイ、次にミスミイが帯状に群生し、その向こうにはミスミイよりも草丈の高いクログワイが生育している。 カンガレイ、クログワイともに一部でミスミイの生育領域に混生し、これら抽水植物は土堤側には見られない。 溜池畔には一部でオオミズゴケ群落が見られ、チゴザサが群生している。 抽水植物では他にマルバオモダカが生育し、ジュンサイ、ヒツジグサが開放水面に生育し、水中にはヒメタヌキモが多い。 |
||
【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。) 大滝末男. 1980. クログワイ. 大滝末男・石戸忠 『日本水生植物図鑑』 160~161. 北隆館 大井次三郎. 1982. カヤツリグサ科ハリイ属. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編) 『日本の野生植物 草本Ⅰ 単子葉類』 p.171~173. pls.154~155. 平凡社 小山鐡夫. 2004. カヤツリグサ科ハリイ属. 北村四郎・村田源・小山鐡夫 『原色日本植物図鑑 草本編(3) 単子葉類』 p.225~231. pl.57. 保育社 角野康郎. 1994. カヤツリグサ科ハリイ属. 『日本水草図鑑』 89~95. 文一統合出版 谷城勝弘, 2007. ハリイ属. 『カヤツリグサ科入門図鑑』 140~151. 全国農村教育協会 星野卓二・正木智美. 2011. ハリイ属. 星野卓二・正木智美・西本眞理子『日本カヤツリグサ科植物図譜』 610~637. 山陽新聞社 村田源. 2004. ミスミイ. 『近畿地方植物誌』 163. 大阪自然史センター 黒崎史平・松岡成久・高橋晃・高野温子・山本伸子・芳澤俊之 2009. ミスミイ. 兵庫県産維管束植物11 カヤツリグサ科. 人と自然20:168. 兵庫県立・人と自然の博物館. 最終更新日:1st.Nov.2014 |