ヒナウキクサ Lenma minuta  Kunth ウキクサ科 コウキクサ属
浮遊植物 ・ 帰化植物
Fig.1 (神戸市・湧水池 2014.11/21)

湖沼、溜池、水路、ハス田などに見られる小型で常緑性の浮遊植物。
葉状体は卵形〜長楕円形で、ふくらみはなく、葉脈は1本、長さ1.5〜2mm、幅1〜1.2mm、脈上に1〜3個の目立たない突起がある。
根の先端は細くなるが、鈍頭。冬期は常緑で越冬する。
湧水のある河川やクレソン畑にあるものは、葉状体にやや厚味がでるという。

アオウキクサL. aoukikusa)は根が1本だが、根端は鋭頭、根鞘基部に翼がある。1年草で、冬には消える。
アオウキクサの亜種ホクリクアオウキクサ(subsp. hokurikuensis)は日本海側の多雪地に見られ、根の先端部がらせん状に捩れることが多く、冬期は水中に沈む。
ナンゴクアオウキクサL. aequinoctialis)はコウキクサに酷似するが、根端は鋭頭、根鞘基部には翼がある。
コウキクサL. minor)は根端は鈍頭、根鞘基部に翼はなく、葉脈は不明瞭な3脈。冬期は葉状体のまま越冬。西日本では湧水環境に生育。
ムラサキコウキクサL. japonica)はコクキクサに似るが、葉状体全体または根のつけね付近が赤紫色を帯びる。太平洋側に多いという。
キタグニコウキクサL. turionifera)はコクキクサに似るが、中央脈の数個の突起が顕著で、裏面が鮮赤紫色を帯び、冬期は水没する。北海道。
イボウキクサL. gibba)は葉状体裏面に著しい浮嚢が発達し、根端は鈍頭。
チリウキクサL. valdiviana)はヒナウキクサよりも大きく、葉状体はときに湾曲し、長さ2〜4mm、幅1〜2mm。冬期は一部の葉状体が水没する。
近似種 : アオウキクサ、 ホクリクアオウキクサ、 ナンゴクアオウキクサ、 コウキクサ、 ムラサキコウキクサ、 イボウキクサ、 チリウキクサ

■分布:本州に帰化 ・ 南米原産、ヨーロッパと東アジアで帰化。
■生育環境:湖沼、溜池、水路、ハス田、湧水地など。
■西宮市内での分布:市内では確認していない。

Fig.2 全草標本。(神戸市・湧水池 2014.11/21)
  葉状体は卵形〜長楕円形で、ふくらみはなく、長さ1.5〜2mm、幅1〜1.2mm。

Fig.3 葉状体の拡大。(神戸市・湧水池 2014.11/21)
  葉脈はやや不明瞭で1本あり、脈上に1〜3個の目立たない突起がある。

Fig.4 根は1本で、根鞘基部に翼は見られない。(神戸市・湧水池 2014.11/21)

Fig.5 根の先端は細くなるが、鈍頭。(神戸市・湧水池 2014.11/21)

生育環境と生態
Fig.6 湧水池の縁にかたまったヒナウキクサ。(神戸市・湧水池 2014.11/21)
里山の谷戸斜面下にある湧水が豊富に湧出する小さな池の縁に流水に押しやられて、かたまって生育している。
周辺は多少手を加えられており、池の中には温帯スイレン、ホテイアオイ、クレソンが人為的に投入され、クレソンの繁茂がやや著しい。
ヒナウキクサはこれらの植物とともに移入されてきたものだろう。
池に本来あったと思われるものはカワモズク、チャイロカワモズク、ホソバミズゼニゴケ、ヤノネゴケ、コウガイゼキショウ、
タチスゲ、ゴウソ、ホソバヘラオモダカ、タガラシ、キツネノボタンなどで、ホソバヘラオモダカの繁茂が著しい。

【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。)
角野康郎. 1994. ウキクサ科. 『日本水草図鑑』 72〜77. 文一統合出版
角野康郎. 2014. サトイモ科(ウキクサ科)コウキクサ属(アオウキクサ属). 『日本の水草』 58〜66. 文一統合出版
大滝末男. 1980. ウキクサ科. 大滝末男・石戸忠 『日本水生植物図鑑』 128〜139. 北隆館
植村修二ほか. 2010. ヒナウキクサ. 『日本帰化植物写真図鑑 2』 357. 全国農村教育協会
角野康郎. 2003. ウキクサ科. 『日本の帰化植物』 pl.154. p.291〜292. 平凡社
内山寛. 2001. ウキクサ科アオウキクサ属. 神奈川県植物誌調査会(編)『神奈川県植物誌 2001』 387〜388. 神奈川県立生命の星・地球博物館
角野康郎. 2008. ウキクサ科. 兵庫県産維管束植物10. 人と自然19:221. 兵庫県立・人と自然の博物館


最終更新日:18th.Dec.2014

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