コウキクサ | Lemna minor L. | ウキクサ科 コウキクサ属 |
浮遊植物 |
Fig.1 (兵庫県篠山市・水路 2015.2/4) 湖沼、水路、水田などに見られる小型で常緑性の浮遊植物。西日本の産地は湧水環境にほぼ限られる。 葉状体は広楕円形で、やや厚味があり、葉脈は3本で不明瞭、長さ3〜4.5mm、幅2〜3.5mm、表面は明るい黄緑色だが、日陰では緑色が濃くなる。 裏面は淡緑色。根は長さ3〜8cm、根鞘基部に翼はなく、根端は鈍頭。冬期は常緑で越冬する。 アオウキクサ(L. aoukikusa)は根が1本だが、根端は鋭頭、根鞘基部に翼がある。1年草で、冬には消える。 アオウキクサの亜種ホクリクアオウキクサ(subsp. hokurikuensis)は日本海側の多雪地に見られ、根の先端部がらせん状に捩れることが多く、冬期は水中に沈む。 ナンゴクアオウキクサ(L. aequinoctialis)はコウキクサに酷似するが、根端は鋭頭、根鞘基部には翼がある。 ヒナウキクサ(L. minuta)は根端は鈍頭、根鞘基部に翼はなく、葉脈は1脈。長さ1.5〜2mm。冬期は葉状体のまま越冬。 ムラサキコウキクサ(L. japonica)はコクキクサに似るが、葉状体全体または根のつけね付近が赤紫色を帯びる。太平洋側に多いという。 キタグニコウキクサ(L. turionifera)はコクキクサに似るが、中央脈の数個の突起が顕著で、裏面が鮮赤紫色を帯び、冬期は水没する。北海道。 イボウキクサ(L. gibba)は葉状体裏面に著しい浮嚢が発達し、根端は鈍頭。 チリウキクサ(L. valdiviana)はヒナウキクサよりも大きく、葉状体はときに湾曲し、長さ2〜4mm、幅1〜2mm。冬期は一部の葉状体が水没する。 近似種 : アオウキクサ、 ホクリクアオウキクサ、 ナンゴクアオウキクサ、 ヒナウキクサ、 ムラサキコウキクサ、 イボウキクサ、 チリウキクサ ■分布:北海道、本州、四国 ・ 南米をのぞく全大陸。 ■生育環境:湖沼、溜池、水路、水田、湧水地など。 ■西宮市内での分布:市内では確認していない。 |
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↑Fig.2 全草標本。(兵庫県篠山市・水路 2015.2/4) 葉状体は広楕円形で、やや厚味があり、葉脈は3本で不明瞭、長さ3〜4.5mm、幅2〜3.5mm。 |
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↑Fig.3 葉状体の拡大。(兵庫県篠山市・水路 2015.2/4) |
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↑Fig.4 根は1本で、根鞘基部に翼は見られない。(兵庫県篠山市・水路 2015.2/4) |
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↑Fig.5 根の先端は鈍頭。(兵庫県篠山市・水路 2015.2/4) 若い根は根嚢に包まれている。根嚢の長さは約1.5mm(1目盛は25μ)。 |
生育環境と生態 |
Fig.6 水路に生育するコウキクサ。(兵庫県篠山市・水路 2015.2/4) コウキクサは西日本では湧水環境に見られ、この水路も集落内を流れているが、石垣下端から湧水の流入がある。 水路内には同様に湧水環境にみられるチャイロカワモズクが生育し、水中には他にヤナギゴケ、アオハイゴケが見られる。 他にカモジグサsp.、スズメノテッポウ、枯れたヤナギタデ、アカバナなどが見られた。 |
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【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。) 角野康郎. 1994. ウキクサ科. 『日本水草図鑑』 72〜77. 文一統合出版 角野康郎. 2014. サトイモ科(ウキクサ科)コウキクサ属(アオウキクサ属). 『日本の水草』 58〜66. 文一統合出版 大滝末男. 1980. ウキクサ科. 大滝末男・石戸忠 『日本水生植物図鑑』 128〜139. 北隆館 角野康郎. 2003. ウキクサ科. 『日本の帰化植物』 pl.154. p.291〜292. 平凡社 内山寛. 2001. ウキクサ科アオウキクサ属. 神奈川県植物誌調査会(編)『神奈川県植物誌 2001』 387〜388. 神奈川県立生命の星・地球博物館 角野康郎. 2008. ウキクサ科. 兵庫県産維管束植物10. 人と自然19:221. 兵庫県立・人と自然の博物館 最終更新日:13th.Feb.2015 |