アブノメ | Dopatrium junceum (Roxb.) Buch.-Ham. ex Benth. | ゴマノハグサ科 アブノメ属 |
湿生植物 兵庫県RDB Cランク種 |
Fig.1 (京都府福知山市・休耕田 2015.9/28) |
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Fig.2 (西宮市・刈り取り後の水田 2015.10/18) |
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Fig.3 (兵庫県加東市・休耕田 2012.9/13) 水田や管理された休耕田に生える1年草。 除草剤の使用や圃場整備によって減少した水田雑草で、環境良好な水田でないと見られない。 幼苗では2cm前後の根生葉を付けるが、やがて茎下部で分枝して、小さな葉を対生に付けた花茎を直立させ、高さ10〜30cmになる。 茎は柔らかく、茎の下部は太い。花茎に付く葉は下部で1〜2.5cm、上部に向かうにつれて小さくなり、頂上部では痕跡的となる。 花は成長期には葉腋に花柄のない閉鎖花をつけ、充分に生長すると花柄のある淡紅色〜紫色の花を開花させる。 萼は5深裂して、長さ約1.5mm。花冠は長さ4〜5mmの2唇形で、上唇は2浅裂、下唇は4裂し、中央の2裂片が大きい。 上唇には雄蕊2個、下唇には短く退化した仮雄蕊が2個つく。子房は1室。刮ハは球形で長さ2.5〜3mm。 茎には中空の部分が多く、つぶすとパチパチと音がするので、パチパチ草の俗名がある。 近似種 : オオアブノメ ■分布:本州(福島県以南)、四国、九州 ■生育環境:水田とその周辺の湿地、休耕田など。 ■花期:8〜10月 ■西宮市内での分布:市内では稀。中部の3枚の水田、北部の5枚の水田で確認している。 |
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↑Fig.4 全草標本。(岡山県真庭市・水田 2007.9/23) 根際から分枝するものや、花茎を長く直立させるものなど様々だが、花茎の上部で分枝することはない。 花茎を長く直立させるものは抽水状態で生育していることが多い。 花茎に対生して付く葉は上部に向かうにつれて小さくなり、最上部付近の葉は痕跡的になる。 |
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↑Fig.5 根際近くの葉は花茎上部に較べ大きい。(岡山県真庭市・水田 2007.9/23) 葉柄はなく、葉身は多肉質で、基本的に対生に付く。 |
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↑Fig.6 茎の横断面。(岡山県真庭市・水田 2007.9/23) 維管束は中心に集合し、その周囲の空洞を放射状に支柱が伸び、茎の表層部を支える。 |
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↑Fig.7 開花中のアブノメ。(兵庫県三田市・水田の減反地 2008.9/28) 茎下方の成長期の閉鎖花は花柄を持たず、葉腋に直接付くが、開花する花には花柄がある。 |
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↑Fig.8 花。(西宮市・刈り取り後の水田 2015.10/28) 花は淡紅色〜紅紫色。花冠は長さ4〜5mmの2唇形で、上唇は2浅裂、下唇は4裂し、中央の2裂片が大きい。 |
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↑Fig.9 花の核心部。(西宮市・刈り取り後の水田 2015.10/28) 上唇には雄蕊2個、下唇には短く退化した仮雄蕊が2個つくが、外からは見えにくく、雄蕊の葯がかろうじて解る程度である。 花にはちょうどアザミウマの仲間が花粉を漁りに来たところだった。 |
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↑Fig.10 茎の上部で通常に開花したものの果実。(岡山県真庭市・水田 2007.9/23) 果実は茎に直接付かず、はっきりした柄がある。 |
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↑Fig.11 閉鎖花で形成された果実。(岡山県真庭市・水田 2007.9/23) 果実は茎に直接付き、柄を持たない。 |
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↑Fig.12 アブノメの種子。(京都府福知山市・刈り取り後の水田 2015.9/28) 種子は紡錘型で褐色〜黒褐色、長径約0.4mm。表面には蜂の巣状の明瞭な格子模様がある。 |
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↑Fig.13 発育途上のアブノメ。(岡山県真庭市・水田 2007.9/23) 1〜2cm前後の根生葉を数枚重なり合うように付けた後、根元から分枝した花茎を立ち上げる。 この時期のものは直立する花茎の葉腋に花柄のない閉鎖花を付ける。 |
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↑Fig.14 刈取り後の水田で発芽成長するアブノメ。(兵庫県加西市・水田 2011.10/19) アブノメは落水した刈取り後の水田でも、土壌が湿っており、降霜があるまでは発芽して成長する。 |
西宮市内での生育環境と生態 |
Fig.15 水田で群生するアブノメ。(西宮市・水田 2015.9/4) 山麓から続く緩傾斜の水田中に夥しい数のアブノメの群生が見られた。 水田内ではアブノメがもっとも多く生育し、続いてコナギ、ミゾカクシ、アゼナが多く、オモダカ、イヌホタルイ、タマガヤツリ、 ヒデリコ、キカシグサ、トキンソウが見られた。 |
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Fig.16 水田雑草群落中のアブノメ。(西宮市・水田 2015.9/4) 水田の端のイネが植えられていない部分には小型の水田雑草の群落が形成されており、アブノメも混生している。 ここでは同所的にウリカワ、オモダカ、コナギ、ホシクサ、イヌホタルイ、ヒナガヤツリ、セリ、キカシグサ、ヒメミソハギ、ミズマツバ、 サワトウガラシ、ミゾカクシ、トキンソウなどの水田雑草が見られ、特にキカシグサが多い。 |
生育環境と生態 |
Fig.17 二次的自然度の高い水田で生育するアブノメ。(岡山県真庭市・水田 2007.9/23) ここではアブノメが多産するほかに、アゼナ、コナギ、ミゾハコベ、キカシグサ、ホシクサなど多様な水田雑草が画像中に見られる。 |
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Fig.18 水田の減反部分に生育するアブノメ。(兵庫県篠山市・水田減反部 2009.9/2) 水田の減反部分は水田雑草の観察には持ってこいの場所である。 ここではマツバイ、アゼナが密生し、キカシグサ、ミズマツバ、イヌホタルイ、ハリイ、コナギ、ウリカワなどとともに多くのアブノメが見られた。 |
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【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。) 山崎敬, 1981. ゴマノハグサ科アブノメ属. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編) 『日本の野生植物 草本3 合弁花類』 p.102. pl.87. 平凡社 北村四郎・村田源・堀勝, 2004 ゴマノハグサ科アブノメ属. 『原色日本植物図鑑 草本編(1) 合弁花類』 p.149. pl.46. 保育社 牧野富太郎, 1961 アブノメ. 前川文夫・原寛・津山尚(補遺・編) 『牧野 新日本植物図鑑』 558. 北隆館 城川四郎. 2001. アブノメ属. 神奈川県植物誌調査会(編)『神奈川県植物誌 2001』 1260. 神奈川県立生命の星・地球博物館 小林禧樹・黒崎史平・三宅慎也. 1998. アブノメ. 『六甲山地の植物誌』 190. (財)神戸市公園緑化協会 村田源. 2004. アブノメ. 『近畿地方植物誌』 38. 大阪自然史センター 黒崎史平・高野温子 2006. アブノメ. 兵庫県産維管束植物7 ゴマノハグサ科. 人と自然16:103. 兵庫県立・人と自然の博物館 最終更新日:24th.Oct.2015 |